• 日本国及希臘国間修好通商航海条約
    • 第1条
    • 第2条
    • 第3条
    • 第4条
    • 第5条
    • 第6条
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日本国及希臘国間修好通商航海条約

明治32年10月12日 制定
第1条
日本帝国と希臘王国との間並に両国臣民の間に永久堅固の和親あるへし
第2条
日本国皇帝陛下は適宜に其の外交官を希臘国に駐留せしむることを得希臘国皇帝陛下も亦適宜に其の外交官を日本国に駐留せしむることを得へし又両締盟国の一方は他の一方の領土及所属地に於て最恵国領事官の駐在を許したる各港、各地に総領事、領事、副領事若は代弁領事を駐在せしむるの権利を有すへし但し総領事、領事、副領事若は代弁領事は其の職務を執行するに先ち常式に従ひ其の任国政府の認可を経へし両締盟国の一方の外交官及領事官は本条約の規定に従ひ他の一方の領土及所属地に於て最恵国の同格の外交官及領事官に現に許与し或は許与せらるへき一切の権利、特典、特権及免除を享有すへし
第3条
両締盟国の領土及所属地の間には相互に通商及航海の自由あるへし両締盟国の一方の臣民は他の一方の領土及所属地内の各地、諸港及諸河にして最恵国臣民或は人民の到来を許す場所へは其の舶船及貨物を以て自由に且安全に到来するの権利を有すへし又該臣民は最恵国臣民或は人民の在留、居住を許す各地、諸港に在留、居住し且其の地に於て家屋、倉庫を借受け、使用し、総て正業に属する各種の生産物、製造品及商品の卸売若は小売営業に従事することを得へし諸種の財産を得有、使用及譲与することに関し両締盟国の一方の臣民は他の一方の領土及所属地に於て最恵国臣民或は人民と同一の取扱を享くへし
第4条
両締盟国は其の一方の通商及航海を他の一方に於て総て最恵国の基礎に置くの主意を有するに因り、旅行、居住、通商及航海に関するー切の事項に関し其の一方より別国の政府、船舶、臣民或は人民に現に許与し或は将来許与すへき一切の特典、殊遇若は免除は他の一方の政府、船舶、臣民或は人民にも即時に且条件を附せすして之を許与すへきことを両締盟国に於て約定す
第5条
希臘国の生産或は製造に係る物品を日本国に輸入し又日本国の生産或は製造に係る物品を希臘国に輸入するにも総て別国の生産或は製造に係る同種の物品にして同様の目的を以て輸入するものに対し課する処の税に異なるか或は之より多額の税を課せらるることなかるへし両締盟国の一方の領土若は所属地より他の一方の領土若は所属地へ輸出するー切の物品へは別国へ輸出する同種物品に対し賦課し若は賦課すへき所に異なるか或は之より多額の税金又は雑費を賦課することなかるへし又両締盟国の一方の領土若は所属地へ別国の生産或は製造に係る同種の物品の輸入を禁止するに非されは他の一方の領土若は所属地の生産若は製造に係る物品を輸入することを禁止することなかるへし又両締盟国の一方の領土若は所属地に於て総て別国に向ひ同種の物品の輸出を禁止するに非されは他の一方の領土若は所属地へ物品を輸出することをも禁止せさるへし
第6条
内地通過、倉入、奨励金、便益及税金払戻に関するー切の事項に就ては両締盟国の一方の臣民は他の一方の領土及所属地に在りて総て最恵国の取扱を享くへし
第7条
政府、官吏、公吏、一私人、会社若は何等施設の名義を以てするか又は其の利益の為に課せらるる所のとん税、灯台税、港税、水先案内料、検疫費、難船救助料其の他之と同種の税金及雑費は其の性質又は名義の如何に拘はらす希臘国の船舶は日本国諸港に於て又日本国の船舶は希臘国諸港に於て同様の場合に同一の港に於て最恵国船舶に賦課し若は将来賦課すへきものに異なるか或は之より多額のものを課せらるることなかるへし
第8条
両締盟国の沿海貿易は本条約に於て規定するの限に在らす各其の法律、勅令及規則を以て之を規定すへきものとす
第9条
本条約に於ては日本国の国法に従ひ日本国船舶と看做さる可き一切の船舶は之を日本国船舶と見認め又希臘国の国法に従ひ希臘国船舶と看做さるへき一切の船舶は之を希臘国船舶と見認むへし
第10条
両締盟国の一方の軍艦或は商船にして暴風又は其の他の危難に遭遇し避難の為め已むを得す他の一方の海港に進入するものは内国船舶の払ふへき税金の外何等の税金を払ふことなく其の港に於て更に艤装を為し一切の需要品を求め再ひ航行するを得へし但し商船の船長にして其の費用を支弁する為め其の積荷の一部を売却するを要する場合には該船長は其の寄港地の規則及税目を遵守すへきものとす両締盟国の一方の軍艦或は商船にして他の一方の沿岸に於て浅瀬に乗上け或は難破したるときは右難破若は乗上けたる船舶並に其の器具及其の他一切の附属品及該船舶より救上けたる貨物並に商品及右等の諸物件にして海中に投棄せられたるもの又は之を売却したるときは其の収得金並に該遭難船内に発見せられたる一切の書類は右船舶の持主或は其の代理人より要求するときは之に引渡すへし右持主或は代理人の現場に在らさるときは内国法律に定めたる期限内に当該総領事、領事、副領事或は代弁領事より請求あれは之を引渡すへし而して右領事官、持主或は代理人は内国船舶難破の場合に於て払ふへき所の物品保存費並に難破救助費及其の他の費用のみを払ふへきものとす難破船より救上けたる貨物及商品は消費の為に通関手続を為すものに非されは一切の関税を免除すへし但し消費の為に之を売捌く場合には普通の関税を納むへきものとす両締盟国の一方の臣民に属する船舶にして他の一方の版図内に於て浅瀬に乗上け或は難破したるとき其の持主、船長若は持主代理人不在の場合には当該総領事、領事、副領事若は代弁領事は其の自国臣民に必要の補助を与ふる為め職権上の助力を為すを許さるへきものとす此の規定は持主、船長若は他の代理人現に其の場に在るときと雖も右様の輔助を与ふるを請求する場合には亦適用すへきものとす
第11条
日本国若は其の領海に到来する希臘国臣民及船舶は其の日本国若は其の領海に在る間は日本国法律及日本国の裁判管轄権に服従すへし又之と均しく希臘国若は其の領海に到来する日本国臣民及船舶は希臘国法律及其の裁判管轄権に服従すへし
第12条
両締盟国の一方の臣民は相互に他の一方の領土及所属地に於て其の身体及財産に対し完全なる保護を享受し、其の権利を執行し及防護せむか為め自由に裁判所に訴出ることを得へく又該裁判所に於て内国臣民と同様に弁護人及代理人を使用するの自由を有すへし該臣民は良心に関し完全なる自由及現行法律、勅令及規則に従て公私の礼拝を行ふの権利並に其の宗教上の慣習に従ひ埋葬の為め設置保存せらるる所の適当便宜の地に自国人を埋葬するの権利を享有すへし
第13条
兵員宿泊の義務、陸海軍の強迫兵役、軍事上の賦歛若は強募公債に関しては両締盟国の一方の臣民は他の一方の領土及所属地に於て最恵国の臣民或は人民と同様の特典、免除及特権を享有すへし
第14条
両締盟国の一方の臣民か他の一方の領土及所属地に於て住居若は商業の為に供する家宅、倉庫、店舗及之に属する総ての附属構造物は侵すへからす右家宅等へは内国臣民に対し法律、勅令及規則を以て規定せる条件及方式に拠るの外一切之に侵入捜索し又は帳簿、書類或は簿記帳を検査点閲することなかるへし
第15条
本条約は批准交換後直ちに実施せらるへし而して其の実施の日より十二箇年間効力を有するものとす両締盟国の一方は本条約実施の日より十一箇年を経過したる後は何時たりとも本条約を終了せむと欲する旨を他の一方へ通知するの権利を有すへし而して此の通知を為したる後十二箇月を経過したるときは本条約は全く消滅に帰すへきものとす
第16条
本条約は日本文、希臘文及英吉利文各二通に調印すへし而して若し日本文と希臘文と齟齬する所ありたる場合には英吉利文に依て之を決し両国政府に於て之に遵依すへきものとす
第17条
本条約は両締盟国に於て之を批准し其の批准は可成速に羅馬に於て交換すへし右証拠として双方の全権委員は之に記名調印するものなり明治三十二年六月一日即千八百九十九年五月二十日雅典に於て六通を作る牧野伸顯 印あ、ろーまのす 印

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