• 更生保護施設における処遇の基準等に関する規則

更生保護施設における処遇の基準等に関する規則

平成20年4月23日 改正
第1章
総則
第1条
【趣旨】
更生保護事業法(以下「法」という。)第46条第1項第2号の更生保護施設の規模及び構造の基準、同項第3号の幹部職員の資格又は経験並びに第49条の2第4号の更生保護施設における処遇の基準は、この省令の定めるところによる。
第2条
【定義】
この規則において「継続保護事業」とは、法第2条第2項に規定する継続保護事業をいう。
この規則において「更生保護施設」とは、法第2条第7項に規定する更生保護施設をいう。
この規則において「被保護者」とは、法第2条第5項に規定する被保護者をいう。
第2章
処遇の基準
第3条
【処遇規程及び保護の実施】
更生保護施設においては、その施設で行う処遇の方法を明らかにする規程(以下「処遇規程」という。)を定めなければならない。
保護観察所の長から法令の規定に基づく保護の委託を受けたときは、委託の趣旨に従い、かつ、法第49条の2及び処遇規程の定めるところにより、速やかにその保護を行わなければならない。
被保護者から保護の申出を受けた場合において、当該被保護者が現に改善更生のための保護を必要としていると認めたときは、法第49条の2及び処遇規程の定めるところにより、その改善更生のため最も適切と認められる保護を行うものとする。
参照条文
第4条
【処遇の一般原則】
被保護者に対しては、常に懇切で誠意ある態度で接するほか、次に掲げる事項に留意して個別的又は集団的に処遇しなければならない。
法第49条の2第2号に規定する処遇の計画(以下「処遇計画」という。)に従って、被保護者に最もふさわしい方法を用いて生活指導等を行うことにより、自律及び協調の精神を会得させ、その他健全な社会生活に適応するために必要な態度、習慣及び能力を養わせること。
読書の指導、教養講座の開催その他の方法で、被保護者の教養を高めることに努めること。
就労の意欲を喚起し、その習慣を身に付けさせるように指導するとともに、被保護者の希望、適性、心身の状況等に十分配慮し、公共職業安定所等の協力を得るなどの方法により、当該被保護者に適した職業が得られるように努めること。
浪費を慎み、その所有する金品は、改善更生に役立てるため適切に使用し、又は貯蓄するように指導すること。
努めて親族との融和を図るなどして、生活環境の改善又は調整を図ること。
被保護者のうち保護観察に付されているものに対し遵守すべき事項を守るように補導するに当たっては、保護観察所の長の処遇の方針に従わなければならない。
第5条
【秘密の保持】
更生保護施設において保護の業務に従事する者は、業務上知り得た被保護者及びその関係者の秘密を保持し、その名誉の尊重に努めなければならない。
第6条
【関係機関等との連携】
更生保護施設においては、処遇の適正を図るため、保護を委託した保護観察所の長と常時密接な連携を保ち、その保護の内容が適当でないか又は十分でないと認めるに至ったときは、速やかに当該保護観察所の長に連絡しなければならない。
被保護者に対しては、その改善更生のために、親族からの援助又は公共の衛生福祉に関する機関その他の機関からの保護を受けさせることが適当であると認める場合には、その援助又は保護が受けられるように、あっせんをしなければならない。
第7条
【保護の開始】
保護を始めるに当たっては、速やかに被保護者と面接し、保護の内容を懇切に説明するとともに、自立に向けた更生計画を立てるように指導するものとする。
処遇計画は、前項による更生計画のほか、被保護者の身上関係、犯罪及び非行関係、家族関係等を総合的に判断して、保護の開始後速やかに定めるものとする。
保護観察所の長の委託に基づいて保護を開始する場合には、処遇計画を定めるに当たり、その意見を聞かなければならない。
前各項のほか、被保護者に対し、更生保護施設において守らなければならない事項を説示し、誓約その他の方法によりこれを守らせるように努めるものとする。
第8条
【居室の指定】
被保護者に宿泊場所を供与するときは、健康で規律ある共同生活を維持するため、当該被保護者の性別、年齢、性格、心身の状況、前歴、行状及び処遇の方針に留意して居室(専ら被保護者の宿泊の用に供する部屋をいう。以下同じ。)を指定しなければならない。
第9条
【食事】
被保護者に給与する食事は、衛生的に調理され、健康の維持に必要な熱量と成分を含み、味覚を豊かにしたものでなければならない。
食事は、更生保護施設内で調理して給与するものとする。ただし、被保護者が十分な理由に基づいて外食を希望し、又はやむを得ない事情のため施設内で調理し若しくは給与することができない場合は、この限りでない。
更生保護施設内で給与する食事は、一週間ごとにその献立の予定を立て、予定表を食堂その他の適当な場所に掲示しなければならない。
第10条
【清潔の保持】
被保護者の身体及び生活環境を清潔に保持するため、次に掲げる事項を実施しなければならない。
被保護者を、一週間に三回以上入浴させること。
衣類、寝具及び携帯品につき、必要な日光消毒、洗濯、乾燥及び整頓を怠りなく行わせること。
食器は、使用の都度よく洗い消毒すること。
調理室又は調理場、食堂及び便所には、必要に応じて殺虫剤又は消毒剤を散布すること。
前各号に掲げるもののほか、施設の内外にわたり必要な清掃並びに塵芥及び汚物の処理を励行し、施設の衛生の管理に努めること。
第11条
【健康の管理】
常に被保護者の健康に留意し、これを維持増進させるように努めなければならない。
通常の家庭常備薬及び包帯その他の応急手当の材料を備え付けておき、かつ、被保護者が病気になり、又は負傷した場合に速やかに医療機関から診察、治療、入院等の必要な措置を受けられるようにあらかじめ医療機関と協議をするなどの準備を整えておかなければならない。
第12条
【レクリエーション】
被保護者には、努めて健全なレクリエーションの機会を与えなければならない。
第13条
【作業及び作業賃金】
更生保護施設において職業訓練その他の作業に従事させた被保護者に支払う賃金については、労働基準法の規定に従わなければならない。
第14条
【金品の保管】
被保護者からその所有する金品の保管の依頼を受ける場合には、当該被保護者に立ち会わせてその種類及び数量を明らかにし、当該被保護者に保管証を交付しなければならない。
被保護者から現金又は有価証券の保管の依頼を受け、これを預金し、又は信託するときは、当該被保護者の名義で行い、その通帳等を保管するものとする。
前二項の規定により保管した金品は、被保護者の申出があったときは、理由を確かめて当該被保護者に返還するものとする。
第15条
【金品の給与及び貸与】
保護観察所の長の委託に基づかないで被保護者に金品を給与し、又は貸与するときは、その改善更生を保護する立場から、その使途及び弁済の見込み並びに処遇の公平及び当該被保護者の自助の精神に対する影響を考慮しなければならない。
保護観察所の長の委託に基づき、又は基づかないで被保護者に金品を給与し、又は貸与するときは、当該被保護者から受領証又は借用証を受け取るものとする。
貸与した金品の返還を受けたときは、それを証する書面を交付しなければならない。
第16条
【感染症発生時の処置】
更生保護施設内に感染症その他感染性の疾病が発生し、又は発生するおそれがあるときは、直ちに医師又は保健所に連絡してその指示を受け、病者に治療を受けさせ、そのまん延を防止し、又は予防を厳にするなど、応急適切な処置を講じなければならない。
第17条
【災害予防の訓練】
火事、地震その他の非常災害に備えるため、災害予防及び危難防止について具体的計画を立て、職員及び被保護者にこれを周知徹底させるほか、これに基づき定期的に避難その他の必要な訓練を行わなければならない。
第18条
【費用の徴収の制限】
被保護者の保護に要した費用のうち、保護観察所の長の委託に基づく保護に要した費用については、これを被保護者から徴収してはならない。
前項の規定は、第3条第3項の保護を行った場合において、被保護者からその費用の償還を受けることを妨げるものではない。
第3章
規模及び構造の基準
第19条
【施設の合目的性】
更生保護施設の規模及び構造は、その事業の内容に応じて、その目的が円滑に達成されるため適当なものでなければならない。
第20条
【事務室及び相談室】
更生保護施設には、被保護者の保護に関する事務に専用する事務室及び被保護者を着席させてその相談に応ずることのできる専用の相談室を設けなければならない。
参照条文
第21条
【居室、食堂等】
更生保護施設には、前条に規定するもののほか、居室、食堂、調理室又は調理場、洗面所、洗濯室又は洗濯場、浴室及び便所を設けなければならない。
男子と女子の双方を収容する場合は、男子の居住区画と女子の居住区画とを分けて設けなければならない。
居室は、成人の用に供するものと少年の用に供するものとを各別に設けなければならない。
各居室の定員は四人以下とし、かつ、各居室の居住面積は一人当たり三・三平方メートル以上でなければならない。
居室及び食堂は、採光及び換気がよく、保健衛生に適するものでなければならない。
調理室又は調理場において火気を使用する部分は、不燃材料を用いなければならない。
各居室の定員の合計(以下「収容定員」という。)に相応する食器及び寝具を整えておかなければならない。
洗面所及び便所は、それぞれ、収容定員の五分の一に相当する者が同時に使用できるように設備されていなければならない。
第22条
【静養室】
収容定員が五十人を超える更生保護施設には、病気になり、又は負傷した被保護者を一時静養させるための専用の静養室を設けなければならない。
第23条
【集会室及びレクリエーションの設備】
更生保護施設には、被保護者の処遇のための専用の集会室を設け、かつ、レクリエーションの設備を整えなければならない。
前項に定める集会室は、被保護者と地域住民との交流のために使用することができる。
第24条
【宿直室及び職員宿舎の設置】
更生保護施設には、通常の勤務時間外における被保護者の保護等の業務に従事する職員のための宿直室を設けなければならない。
更生保護施設には、緊急の場合に前項の業務に従事するためにその施設内に居住しなければならない職員の宿舎を設けなければならない。
第25条
【施設の安全】
更生保護施設は、被保護者が日常その施設内で安全に起居及び通行することができ、かつ、非常災害の場合には安全にその施設から退避することができるものでなければならない。
更生保護施設には、消火用具を備え、いつでも使用できるように配置しておかなければならない。
第26条
【作業の設備】
被保護者に職業訓練その他の作業を行わせる更生保護施設には、居室とは別に、作業所又は作業室を設けなければならない。
前項の規定は、被保護者に、一時その居室で軽易な作業を行わせることを妨げるものではない。
更生保護施設内において作業の用に供する機械、器具その他の設備は、労働安全衛生法及びこれに基づく命令の規定に適合するものでなければならない。
第4章
幹部職員
第27条
【幹部職員の配置】
更生保護施設には、実務に当たる幹部職員として、その実務の執行を総括する責任者(以下「施設長」という。)及び被保護者の生活指導を行いその相談に応ずる責任者(以下「補導主任」という。)を置かなければならない。
施設長は、第30条の資格を有し、かつ、被保護者の処遇上支障がないと法務大臣が認めたときは、当該更生保護施設の補導主任を兼ねることができる。
第28条
【幹部職員の一般的要件】
実務に当たる幹部職員は、人格高潔で思慮円熟し、指導力を持ち、被保護者に対する処遇に関する熱意及び能力を有する者でなければならない。
参照条文
第29条
【施設長の資格又は経験】
施設長は、前条に掲げる要件を備えるほか、次の各号の一に該当する者でなければならない。
実務の執行を総括するために必要な能力を有する者であって、犯罪をした者及び非行のある少年の更生保護に関する事業に二年以上従事したもの
前号に準ずる者であって、法務大臣が施設長として適当な者と認めたもの
第30条
【補導主任の資格又は経験】
補導主任は、第28条に掲げる要件を備えるほか、次の各号の一に該当する者でなければならない。
教育学、心理学又は更生保護に関係のあるその他の学科について相当な教養を有する者であって、犯罪をした者及び非行のある少年の更生保護の実務に二年以上従事したもの
前号に準ずる者であって、法務大臣が補導主任として適当な者と認めたもの
参照条文
附則
この省令は、更生保護事業法等の一部を改正する法律施行の日(平成十四年六月十日)から施行する。
更生保護事業における処遇及び設備の基準並びに幹部職員の資格又は経験に関する規則(平成八年三月十九日法務省令第十八号)は、廃止する。
この省令の施行の際現に事業の用に供されている更生保護施設(以下「既存施設」という。)については、第二十条の規定にかかわらず、事務室に十分そのゆとりがある場合には、当分の間、専用の相談室を設けないことができる。
既存施設については、第二十一条第一項の規定にかかわらず、付近に適当な入浴施設がある場合には、浴室を設けないことができる。
既存施設については、第二十一条第四項の規定にかかわらず、当分の間、各居室の定員は五人以下とする。
既存施設については、第二十三条の規定にかかわらず、主として二十歳以上の者を収容し、その収容定員が三十人以内のものであって、法務大臣の承認を得ている場合には、専用の集会室を設けないことができる。
既存施設については、第二十四条の規定にかかわらず、当分の間、宿直室又は職員宿舎を設けないことができる。
法第四十五条の認可を受けて継続保護事業を営む者で、第三項から前項までに規定する経過措置の適用を受けた施設をその事業の用に供するものは、できるだけ早期に当該施設が本則に定める基準に適合するよう、その改善に努めなければならない。
附則
平成20年4月23日
この省令は、更生保護法の施行の日(平成二十年六月一日)から施行する。

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