民事訴訟法中改正法律施行法

本法に於て新法と称するは大正十五年民事訴訟法中改正法律に依る改正規定を謂ひ旧法と称するは従前の規定を謂ふ

新法は新法施行前に生したる事項にも之を適用す但し旧法に依りて生したる効力を妨けす

新法施行前より繋属する事件に付新法に依り管轄権ある裁判所は旧法に依れは管轄権なき場合に於ても管轄権を有す

前項の事件に付旧法に依り管轄権ある裁判所は新法に依れは管轄権なき場合に於ても管轄権を有す

新法に依り新に期間を定めたる訴訟行為にして新法施行の際為すへきものに付ては其の期間は新法施行の日より之を起算す

新法第85条の規定は新法施行前同条に掲くる事由を生したる訴訟代理にして新法施行前委任消滅の通知を為ささりしものにも之を適用す

新法施行前より繋属する訴訟に付ては旧法に依り訴訟費用の保証を立つる義務なき者は新法に依り担保を供することを要せす

新法施行前より進行を始めたる法定期間及其の計算は旧法に依る

新法施行前言渡したる判決に対する上訴の期間か新法施行後進行を始めたる場合亦前項に同し

新法施行前裁判所書記か判決原本の交付を受けたるときは其の判決の送達は申立あるに非されは之を為すことを要せす

新法施行前より繋属する訴訟に付ては特に裁判所の命したる場合に限り新法に依り準備手続を為す

新法施行前旧法に依りて罰金又は過料に処すへき行為を為したる者にして新法施行の際未た其の裁判を受けさるものは新法に於て過料に処すへき場合に限り新法に依り処罰す但し過料の額は旧法の罰金又は過料の額を超ゆることを得す

新法施行前第一審裁判所又は控訴裁判所か管轄違として訴を却下したる場合に於て上訴裁判所か第一審裁判所に其の管轄権なしとするときは判決を以て事件を第一審の管轄裁判所に移送することを要す

前項の場合に於て上訴裁判所か第一審裁判所に管轄権ありとするときは事件を其の裁判所に差戻すことを要す但し第一審裁判所か管轄権ありと為したる事件に付控訴裁判所か管轄違として訴を却下したる場合に於ては上告裁判所は事件を控訴裁判所に差戻すことを得

新法施行前抗告裁判所の為したる決定に対しては仍旧法に依り更に抗告を為すことを得

闕席判決に対しては仍旧法に依り故障を申立つることを得

執行命令に対しては旧法に依る故障期間内に異議を申立つることを得

新法施行前妨訴抗弁を棄却し又は請求の原因を正当なりとしたる中間判決に対しては仍旧法に依り上訴を為すことを得

新法施行前より繋属する証書訴訟及為替訴訟は仍旧法に依り之を完結す但し訴訟か新法施行の際第一審に繋属するときは新法施行の日より通常の手続に於て繋属するものと看做す

故障を許ささる闕席判決に対しては仍旧法に依り上訴を為すことを得

新法施行前請求の抛棄又は認諾に基き判決を求むる申立ありたるときは仍旧法に依り裁判す新法施行前闕席判決の申立ありたるとき亦同し

新法施行前言渡したる判決にして旧法第422条に掲くるものに対し控訴の提起ありたる場合に於ては仍同条の規定に依る