犯罪捜査のための通信傍受に関する法律
平成23年6月24日 改正
第1条
【目的】
この法律は、組織的な犯罪が平穏かつ健全な社会生活を著しく害していることにかんがみ、数人の共謀によって実行される組織的な殺人、薬物及び銃器の不正取引に係る犯罪等の重大犯罪において、犯人間の相互連絡等に用いられる電話その他の電気通信の傍受を行わなければ事案の真相を解明することが著しく困難な場合が増加する状況にあることを踏まえ、これに適切に対処するため必要な刑事訴訟法に規定する電気通信の傍受を行う強制の処分に関し、通信の秘密を不当に侵害することなく事案の真相の的確な解明に資するよう、その要件、手続その他必要な事項を定めることを目的とする。
第2条
【定義】
第3条
【傍受令状】
1
検察官又は司法警察員は、次の各号のいずれかに該当する場合において、当該各号に規定する犯罪(第2号及び第3号にあっては、その一連の犯罪をいう。)の実行、準備又は証拠隠滅等の事後措置に関する謀議、指示その他の相互連絡その他当該犯罪の実行に関連する事項を内容とする通信(以下この項において「犯罪関連通信」という。)が行われると疑うに足りる状況があり、かつ、他の方法によっては、犯人を特定し、又は犯行の状況若しくは内容を明らかにすることが著しく困難であるときは、裁判官の発する傍受令状により、電話番号その他発信元又は発信先を識別するための番号又は符号(以下「電話番号等」という。)によって特定された通信の手段(以下「通信手段」という。)であって、被疑者が通信事業者等との間の契約に基づいて使用しているもの(犯人による犯罪関連通信に用いられる疑いがないと認められるものを除く。)又は犯人による犯罪関連通信に用いられると疑うに足りるものについて、これを用いて行われた犯罪関連通信の傍受をすることができる。
3
前二項の規定による傍受は、通信事業者等の看守する場所で行う場合を除き、人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内においては、これをすることができない。ただし、住居主若しくは看守者又はこれらの者に代わるべき者の承諾がある場合は、この限りでない。
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参照条文
第4条
【令状請求の手続】
2
検察官又は司法警察員は、前項の請求をする場合において、当該請求に係る被疑事実の全部又は一部と同一の被疑事実について、前に同一の通信手段を対象とする傍受令状の請求又はその発付があったときは、その旨を裁判官に通知しなければならない。
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参照条文
第6条
【傍受令状の記載事項】
傍受令状には、被疑者の氏名、被疑事実の要旨、罪名、罰条、傍受すべき通信、傍受の実施の対象とすべき通信手段、傍受の実施の方法及び場所、傍受ができる期間、傍受の実施に関する条件、有効期間及びその期間経過後は傍受の処分に着手することができず傍受令状はこれを返還しなければならない旨並びに発付の年月日その他最高裁判所規則で定める事項を記載し、裁判官が、これに記名押印しなければならない。ただし、被疑者の氏名については、これが明らかでないときは、その旨を記載すれば足りる。
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参照条文
第7条
【傍受ができる期間の延長】
1
地方裁判所の裁判官は、必要があると認めるときは、検察官又は司法警察員の請求により、十日以内の期間を定めて、傍受ができる期間を延長することができる。ただし、傍受ができる期間は、通じて三十日を超えることができない。
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参照条文
第9条
【傍受令状の提示】
第12条
【立会い】
1
傍受の実施をするときは、通信手段の傍受の実施をする部分を管理する者又はこれに代わるべき者を立ち会わせなければならない。これらの者を立ち会わせることができないときは、地方公共団体の職員を立ち会わせなければならない。
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参照条文
第13条
【該当性判断のための傍受】
1
検察官又は司法警察員は、傍受の実施をしている間に行われた通信であって、傍受令状に記載された傍受すべき通信(以下単に「傍受すべき通信」という。)に該当するかどうか明らかでないものについては、傍受すべき通信に該当するかどうかを判断するため、これに必要な最小限度の範囲に限り、当該通信の傍受をすることができる。
2
外国語による通信又は暗号その他その内容を即時に復元することができない方法を用いた通信であって、傍受の時にその内容を知ることが困難なため、傍受すべき通信に該当するかどうかを判断することができないものについては、その全部の傍受をすることができる。この場合においては、速やかに、傍受すべき通信に該当するかどうかの判断を行わなければならない。
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参照条文
第14条
【他の犯罪の実行を内容とする通信の傍受】
検察官又は司法警察員は、傍受の実施をしている間に、傍受令状に被疑事実として記載されている犯罪以外の犯罪であって、別表に掲げるもの又は死刑若しくは無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たるものを実行したこと、実行していること又は実行することを内容とするものと明らかに認められる通信が行われたときは、当該通信の傍受をすることができる。
第19条
【傍受をした通信の記録】
1
傍受をした通信については、すべて、録音その他通信の性質に応じた適切な方法により記録媒体に記録しなければならない。この場合においては、第22条第2項の手続の用に供するため、同時に、同一の方法により他の記録媒体に記録することができる。
第20条
【記録媒体の封印等】
1
前条第1項前段の規定により記録をした記録媒体については、傍受の実施を中断し又は終了したときは、速やかに、立会人にその封印を求めなければならない。傍受の実施をしている間に記録媒体の交換をしたときその他記録媒体に対する記録が終了したときも、同様とする。
第21条
【傍受の実施の状況を記載した書面の提出等】
1
第22条
【傍受記録の作成】
1
検察官又は司法警察員は、傍受の実施を中断し又は終了したときは、その都度、速やかに、傍受をした通信の内容を刑事手続において使用するための記録(以下「傍受記録」という。)一通を作成しなければならない。傍受の実施をしている間に記録媒体の交換をしたときその他記録媒体に対する記録が終了したときも、同様とする。
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参照条文
第23条
【通信の当事者に対する通知】
2
前項の通知は、通信の当事者が特定できない場合又はその所在が明らかでない場合を除き、傍受の実施が終了した後三十日以内にこれを発しなければならない。ただし、地方裁判所の裁判官は、捜査が妨げられるおそれがあると認めるときは、検察官又は司法警察員の請求により、六十日以内の期間を定めて、この項の規定により通知を発しなければならない期間を延長することができる。
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参照条文
第25条
【傍受の原記録の聴取及び閲覧等】
1
傍受の原記録を保管する裁判官(以下「原記録保管裁判官」という。)は、傍受記録に記録されている通信の当事者が、前条の規定により、傍受記録のうち当該通信に係る部分を聴取し、若しくは閲覧し、又はその複製を作成した場合において、傍受記録の正確性の確認のために必要があると認めるときその他正当な理由があると認めるときは、当該通信の当事者の請求により、傍受の原記録のうち当該通信に相当する部分を聴取し、若しくは閲覧し、又はその複製を作成することを許可しなければならない。
2
原記録保管裁判官は、傍受をされた通信の内容の確認のために必要があると認めるときその他正当な理由があると認めるときは、傍受記録に記録されている通信以外の通信の当事者の請求により、傍受の原記録のうち当該通信に係る部分を聴取し、若しくは閲覧し、又はその複製を作成することを許可しなければならない。
3
原記録保管裁判官は、傍受が行われた事件に関し、犯罪事実の存否の証明又は傍受記録の正確性の確認のために必要があると認めるときその他正当な理由があると認めるときは、検察官又は司法警察員の請求により、傍受の原記録のうち必要と認める部分を聴取し、若しくは閲覧し、又はその複製を作成することを許可することができる。ただし、複製の作成については、次に掲げる通信(傍受記録に記録されているものを除く。)に係る部分に限る。
4
次条第3項(第21条第2項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定により記録の消去を命じた裁判がある場合においては、前項の規定による複製を作成することの許可の請求は、同項の規定にかかわらず、当該裁判により消去を命じられた記録に係る通信が新たに同項第1号又は第2号に掲げる通信であって他にこれに代わるべき適当な証明方法がないものであることが判明するに至った場合に限り、傍受の原記録のうち当該通信及びこれと同一の通話の機会に行われた通信に係る部分について、することができる。ただし、当該裁判が次条第3項第2号に該当するとしてこれらの通信の記録の消去を命じたものであるときは、この請求をすることができない。
5
原記録保管裁判官は、検察官により傍受記録又はその複製等の取調べの請求があった被告事件に関し、被告人の防御又は傍受記録の正確性の確認のために必要があると認めるときその他正当な理由があると認めるときは、被告人又はその弁護人の請求により、傍受の原記録のうち必要と認める部分を聴取し、若しくは閲覧し、又はその複製を作成することを許可することができる。ただし、被告人が当事者でない通信に係る部分の複製の作成については、当該通信の当事者のいずれかの同意がある場合に限る。
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参照条文
第26条
【不服申立て】
2
検察官又は検察事務官がした通信の傍受に関する処分に不服がある者はその検察官又は検察事務官が所属する検察庁の所在地を管轄する地方裁判所に、司法警察職員がした通信の傍受に関する処分に不服がある者はその職務執行地を管轄する地方裁判所に、その処分の取消し又は変更(傍受の実施の終了を含む。)を請求することができる。
3
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参照条文
第27条
【傍受の原記録の保管期間】
1
傍受の原記録は、第20条第3項の規定による提出の日から五年を経過する日又は傍受記録若しくはその複製等が証拠として取り調べられた被告事件若しくは傍受に関する刑事の事件の終結の日から六月を経過する日のうち最も遅い日まで保管するものとする。
第29条
【国会への報告等】
政府は、毎年、傍受令状の請求及び発付の件数、その請求及び発付に係る罪名、傍受の対象とした通信手段の種類、傍受の実施をした期間、傍受の実施をしている間における通話の回数、このうち第22条第2項第1号又は第3号に掲げる通信が行われたものの数並びに傍受が行われた事件に関して逮捕した人員数を国会に報告するとともに、公表するものとする。ただし、罪名については、捜査に支障を生ずるおそれがあるときは、その支障がなくなった後においてこれらの措置を執るものとする。
第32条
【最高裁判所規則】
この法律に定めるもののほか、傍受令状の発付、傍受ができる期間の延長、記録媒体の封印及び提出、傍受の原記録の保管その他の取扱い、傍受の実施の状況を記載した書面の提出、第14条に規定する通信に該当するかどうかの審査、通信の当事者に対する通知を発しなければならない期間の延長、裁判所が保管する傍受記録の聴取及び閲覧並びにその複製の作成並びに不服申立てに関する手続について必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
別表
【第三条、第十四条関係】
一 大麻取締法第二十四条(栽培、輸入等)又は第二十四条の二(所持、譲渡し等)の罪
二 覚せい剤取締法第四十一条(輸入等)若しくは第四十一条の二(所持、譲渡し等)の罪、同法第四十一条の三第一項第三号(覚せい剤原料の輸入等)若しくは第四号(覚せい剤原料の製造)の罪若しくはこれらの罪に係る同条第二項(営利目的の覚せい剤原料の輸入等)の罪若しくはこれらの罪の未遂罪又は同法第四十一条の四第一項第三号(覚せい剤原料の所持)若しくは第四号(覚せい剤原料の譲渡し等)の罪若しくはこれらの罪に係る同条第二項(営利目的の覚せい剤原料の所持、譲渡し等)の罪若しくはこれらの罪の未遂罪
三 出入国管理及び難民認定法第七十四条(集団密航者を不法入国させる行為等)、第七十四条の二(集団密航者の輸送)又は第七十四条の四(集団密航者の収受等)の罪
四 麻薬及び向精神薬取締法第六十四条(ジアセチルモルヒネ等の輸入等)、第六十四条の二(ジアセチルモルヒネ等の譲渡し、所持等)、第六十五条(ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の輸入等)、第六十六条(ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の譲渡し、所持等)、第六十六条の三(向精神薬の輸入等)又は第六十六条の四(向精神薬の譲渡し等)の罪
五 武器等製造法第三十一条(銃砲の無許可製造)、第三十一条の二(銃砲弾の無許可製造)又は第三十一条の三第一号(銃砲及び銃砲弾以外の武器の無許可製造)の罪
六 あへん法第五十一条(けしの栽培、あへんの輸入等)又は第五十二条(あへん等の譲渡し、所持等)の罪
七 銃砲刀剣類所持等取締法第三十一条から第三十一条の四まで(けん銃等の発射、輸入、所持、譲渡し等)、第三十一条の七から第三十一条の九まで(けん銃実包の輸入、所持、譲渡し等)、第三十一条の十一第一項第二号(けん銃部品の輸入)若しくは第二項(未遂罪)又は第三十一条の十六第一項第二号(けん銃部品の所持)若しくは第三号(けん銃部品の譲渡し等)若しくは第二項(未遂罪)の罪
八 国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律第五条(業として行う不法輸入等)の罪
九 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律第三条第一項第七号に掲げる罪に係る同条(組織的な殺人)の罪又はその未遂罪
二 覚せい剤取締法第四十一条(輸入等)若しくは第四十一条の二(所持、譲渡し等)の罪、同法第四十一条の三第一項第三号(覚せい剤原料の輸入等)若しくは第四号(覚せい剤原料の製造)の罪若しくはこれらの罪に係る同条第二項(営利目的の覚せい剤原料の輸入等)の罪若しくはこれらの罪の未遂罪又は同法第四十一条の四第一項第三号(覚せい剤原料の所持)若しくは第四号(覚せい剤原料の譲渡し等)の罪若しくはこれらの罪に係る同条第二項(営利目的の覚せい剤原料の所持、譲渡し等)の罪若しくはこれらの罪の未遂罪
三 出入国管理及び難民認定法第七十四条(集団密航者を不法入国させる行為等)、第七十四条の二(集団密航者の輸送)又は第七十四条の四(集団密航者の収受等)の罪
四 麻薬及び向精神薬取締法第六十四条(ジアセチルモルヒネ等の輸入等)、第六十四条の二(ジアセチルモルヒネ等の譲渡し、所持等)、第六十五条(ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の輸入等)、第六十六条(ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の譲渡し、所持等)、第六十六条の三(向精神薬の輸入等)又は第六十六条の四(向精神薬の譲渡し等)の罪
五 武器等製造法第三十一条(銃砲の無許可製造)、第三十一条の二(銃砲弾の無許可製造)又は第三十一条の三第一号(銃砲及び銃砲弾以外の武器の無許可製造)の罪
六 あへん法第五十一条(けしの栽培、あへんの輸入等)又は第五十二条(あへん等の譲渡し、所持等)の罪
七 銃砲刀剣類所持等取締法第三十一条から第三十一条の四まで(けん銃等の発射、輸入、所持、譲渡し等)、第三十一条の七から第三十一条の九まで(けん銃実包の輸入、所持、譲渡し等)、第三十一条の十一第一項第二号(けん銃部品の輸入)若しくは第二項(未遂罪)又は第三十一条の十六第一項第二号(けん銃部品の所持)若しくは第三号(けん銃部品の譲渡し等)若しくは第二項(未遂罪)の罪
八 国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律第五条(業として行う不法輸入等)の罪
九 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律第三条第一項第七号に掲げる罪に係る同条(組織的な殺人)の罪又はその未遂罪