特定タンカーに係る特定賠償義務履行担保契約等に関する特別措置法
平成24年6月27日 制定
第1条
【趣旨】
この法律は、欧州連合により講じられるイラン・イスラム共和国(次条第5号及び附則第2条において「イラン」という。)を原産地とする原油(以下「イラン産原油」という。)を輸送するタンカーに係る保険契約についての再保険の引受けを禁止する措置により、特定タンカーについて船舶油濁損害賠償保障法(以下「油賠法」という。)第13条第1項に規定する保障契約の締結等が困難となることに対応して、特定タンカー所有者との間で特定賠償義務履行担保契約を締結する者に対し、当該特定賠償義務履行担保契約の義務の履行として支払われる金銭の額に相当する金額の交付金を政府が交付する制度を設ける等の特別の措置について定めるものとする。
第2条
【定義】
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
④
特定タンカー所有者 特定タンカーのタンカー所有者(特定タンカーの船舶賃借人その他の国土交通省令で定める者であって、特定タンカーのタンカー所有者と共同で特定損害保険契約の被保険者となっているものを含む。)をいう。
⑤
特定運航 特定タンカーがイラン産原油を積み込むためにイランに向けて運航を開始する時から当該特定タンカーに積み込んだイラン産原油を含む原油の取卸しを完了する時までの間における特定タンカーの運航をいう。
⑩
特定損害保険契約 特定タンカーごとに締結される、特定タンカー所有者が特定損害の賠償の責めに任ずる場合又は特定タンカー所有者が特定費用を支払うべき場合においてその賠償の義務の履行又は費用の支払により当該特定タンカー所有者に生ずる損害(以下「特定タンカー所有者損害」という。)をてん補する保険契約であって、次に掲げる要件を満たすものをいう。
⑪
特定賠償義務履行担保契約 特定損害保険契約の保険者(以下「特定保険者」という。)がその被保険者である特定タンカー所有者との間で特定タンカーごとに締結する契約であって、特定タンカー所有者が特定損害の賠償の責めに任ずる場合又は特定タンカー所有者が特定費用を支払うべき場合において特定損害等(当該特定損害保険契約によりてん補される特定タンカー所有者損害に係るものを除く。)についてその賠償の義務の履行及び費用の支払を担保するもの(次に掲げる要件を満たすものに限る。)をいう。
イ
賠償の義務の履行及び費用の支払が担保されている特定損害等の種類が、当該特定損害保険契約においててん補することができることとされている特定タンカー所有者損害に係る特定損害等の種類と同一のものであること。
第3条
【特定保険者交付金交付契約】
1
政府は、特定タンカー所有者で特定賠償義務履行担保契約を締結しているものを相手方として、特定タンカーごとに、特定保険者が当該特定賠償義務履行担保契約に基づく義務の履行としての金銭の支払をする場合に、政府が当該特定保険者に対し当該特定保険者が支払う金銭(以下「交付対象金銭」という。)の額に相当する金額の交付金(以下「特定保険者交付金」という。)を交付することを約し、特定タンカー所有者が納付金を納付することを約する契約(以下「特定保険者交付金交付契約」という。)を締結することができる。
2
政府が特定保険者交付金交付契約により同一の事故から生じた特定損害のうち次の各号に掲げるものに該当するものに係る交付対象金銭についての特定保険者交付金を交付する場合において、当該交付対象金銭の額が当該各号に定める金額を超えるときは、当該各号に定める金額を当該交付対象金銭の額として、前項の規定を適用する。
②
特定油濁損害であって、総トン数五千トンを超える特定タンカーの特定運航に伴って生じたもの油賠法第6条第2号の規定により算出した金額から特定損害保険契約により当該特定油濁損害に係る特定タンカー所有者損害のてん補として支払われる金額に相当する金額を控除した金額
③
非油濁損害のうちこれに基づく債権について船舶の所有者等の責任の制限に関する法律(以下この項において「責任制限法」という。)又はこれに相当する外国の法令の規定により特定タンカー所有者がその責任を制限することができるもの(以下この項において「特定非油濁損害」という。)であって、総トン数二千トン以下の特定タンカーの特定運航に伴って生じたもの(責任制限法第7条第1項第1号に規定する場合におけるものに限る。)同号イの金額から特定損害保険契約により当該特定非油濁損害に係る特定タンカー所有者損害のてん補として支払われる金額に相当する金額を控除した金額
④
特定非油濁損害であって、総トン数二千トン以下の特定タンカーの特定運航に伴って生じたもの(前号に掲げるものを除く。)責任制限法第7条第1項第2号イの金額から特定損害保険契約により当該特定非油濁損害に係る特定タンカー所有者損害のてん補として支払われる金額に相当する金額を控除した金額
⑤
特定非油濁損害であって、総トン数二千トンを超える特定タンカーの特定運航に伴って生じたもの(責任制限法第7条第1項第1号に規定する場合におけるものに限る。)同号ロの規定により算出した金額から特定損害保険契約により当該特定非油濁損害に係る特定タンカー所有者損害のてん補として支払われる金額に相当する金額を控除した金額
⑥
特定非油濁損害であって、総トン数二千トンを超える特定タンカーの特定運航に伴って生じたもの(前号に掲げるものを除く。)責任制限法第7条第1項第2号ロの規定により算出した金額から特定損害保険契約により当該特定非油濁損害に係る特定タンカー所有者損害のてん補として支払われる金額に相当する金額を控除した金額
第11条
【代位等】
1
政府は、特定保険者交付金交付契約により特定保険者交付金を交付した場合において、当該特定保険者交付金の交付を受けた特定保険者が第三者(当該特定保険者交付金交付契約の相手方である特定タンカー所有者を含む。次項において同じ。)に対して求償権を有するときは、次に掲げる金額のうちいずれか少ない金額を限度として当該求償権を取得する。
第12条
【特定保険者交付金交付契約の解除】
2
前項の規定による特定保険者交付金交付契約の解除は、当該特定保険者交付金交付契約の相手方である特定タンカー所有者が解除の通知を受けた日から起算して三月を経過した日から将来に向かってその効力を生ずる。
第14条
【船主相互保険組合法の特例】
船主相互保険組合法第2条第3項に規定する船主責任相互保険組合は、同法第4条第5項の規定にかかわらず、特定賠償義務履行担保契約に関する業務に係る事業を行うことができる。