犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律
平成23年6月24日 改正
第1条
【目的】
この法律は、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(以下「組織的犯罪処罰法」という。)第13条第2項各号に掲げる罪の犯罪行為(以下「対象犯罪行為」という。)により財産的被害を受けた者に対して、没収された犯罪被害財産、追徴されたその価額に相当する財産及び外国譲与財産により被害回復給付金を支給することによって、その財産的被害の回復を図ることを目的とする。
第2条
【定義】
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
③
給付資金組織的犯罪処罰法第13条第3項の規定により没収された犯罪被害財産の換価若しくは取立てにより得られた金銭(当該犯罪被害財産が金銭であるときは、その金銭)、組織的犯罪処罰法第16条第2項の規定により追徴された犯罪被害財産の価額に相当する金銭又は第36条第1項の規定による外国譲与財産の換価若しくは取立てにより得られた金銭(当該外国譲与財産が金銭であるときは、その金銭)であって、検察官が保管するものをいう。
⑤
外国犯罪被害財産等 外国の法令による裁判又は命令その他の処分により没収された財産又は追徴された価額に相当する金銭(日本国の裁判所が言い渡した組織的犯罪処罰法第13条第3項の規定による犯罪被害財産の没収の確定裁判の執行として没収された財産及び組織的犯罪処罰法第16条第2項の規定による犯罪被害財産の価額の追徴の確定裁判の執行として追徴された価額に相当する金銭を除く。)であって、日本国の法令によれば対象犯罪行為によりその被害を受けた者から得た財産若しくは当該財産の保有若しくは処分に基づき得た財産又はそれらの価額に相当する金銭に当たるものをいう。
第3条
【被害回復給付金の支給】
1
国は、この法律の定めるところにより、支給対象犯罪行為により害を被った者(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。)であってこれにより財産を失ったものに対し、被害回復給付金を支給する。
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参照条文
第5条
【支給対象犯罪行為の範囲を定める処分等】
第6条
【犯罪被害財産支給手続の開始】
1
検察官は、前条第1項に規定する裁判で示された犯罪被害財産又はその価額について、これを給付資金として保管するに至ったときは、遅滞なく、当該給付資金から被害回復給付金を支給するための手続(以下「犯罪被害財産支給手続」という。)を開始する旨の決定をするものとする。ただし、その時点における給付資金をもっては犯罪被害財産支給手続に要する費用等を支弁するのに不足すると認めるとき、その他その時点においては犯罪被害財産支給手続を開始することが相当でないと認めるときは、この限りでない。
第7条
【公告等】
3
検察官は、対象被害者又はその一般承継人であって知れているものに対し、第1項の規定により公告すべき事項を通知しなければならない。ただし、被害回復給付金の支給を受けることができない者であることが明らかである者については、この限りでない。
第9条
【支給の申請】
1
第10条
【裁定】
2
検察官は、被害回復給付金の支給を受けることができる者に該当する旨の裁定(以下「資格裁定」という。)をするに当たっては、その犯罪被害額(支給対象犯罪行為により失われた財産の価額から控除対象額を控除して検察官が定める額をいう。以下同じ。)を定めなければならない。この場合において、資格裁定を受ける者で次の各号に掲げる者に該当するものが二人以上ある場合におけるその者に係る犯罪被害額は、当該各号に定める額とする。
第11条
1
検察官は、被害回復給付金の支給の申請が支給申請期間(第9条第2項の規定による申請にあっては、一般承継があった日から六十日)が経過した後にされたものであるとき、その他不適法であって補正することができないものであるときは、その申請を却下する旨の裁定をしなければならない。
第15条
【裁定等確定前の支給】
1
検察官は、前条第1項に規定する裁定、報酬の決定又は費用の額の一部が確定していない場合であっても、資格裁定を受けた者(当該資格裁定が確定している者に限る。)に対し、被害回復給付金の支給を受けることができると見込まれる者の利益を害しないことが明らかであると認められる額の範囲内において相当と認める額の被害回復給付金の支給をすることができる。
第16条
【追加支給】
1
検察官は、犯罪被害財産支給手続において、第14条第1項に規定する裁定、報酬の決定及び費用の額が確定し、かつ、資格裁定を受けたすべての者について被害回復給付金の支給等(同項、前条第1項若しくは第2項若しくはこの項の規定による被害回復給付金の支給又は第14条第4項前段(前条第3項及びこの条第3項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定による被害回復給付金に相当する金銭の保管をいう。第18条及び第21条第1項第1号から第3号までにおいて同じ。)をした後に、当該犯罪被害財産支給手続に係る給付資金を新たに保管するに至った場合(当該犯罪被害財産支給手続の終了後にこれを保管するに至った場合を含む。)において、既に支給した被害回復給付金(第14条第4項前段の規定により被害回復給付金に相当する金銭が保管された場合においては、当該金銭を含む。次項において「既支給被害回復給付金」という。)の額が犯罪被害額に満たないときは、当該資格裁定を受けた者に対し、当該新たに保管するに至った給付資金から被害回復給付金の支給をしなければならない。ただし、その時点における給付資金をもってはその支給に要する費用等を支弁するのに不足すると認めるとき、その他その時点においては被害回復給付金の支給をすることが相当でないと認めるときは、この限りでない。
第17条
【資格裁定確定後の一般承継人に対する被害回復給付金の支給】
1
検察官は、資格裁定が確定した者について一般承継があった場合において、その者に支給すべき被害回復給付金でまだ支給していないものがあるときは、その者の一般承継人であって当該一般承継があった日から六十日以内に届出をしたものに対し、未支給の被害回復給付金の支給をしなければならない。この場合において、当該一般承継人は、法務省令で定めるところにより、届出書を検察官に提出しなければならない。
2
前項の規定により届出をした一般承継人が二人以上ある場合における当該一般承継人に支給する被害回復給付金の額は、同項に規定する未支給の被害回復給付金の額を当該一般承継人の数で除して得た額(その額に一円未満の端数があるときは、これを切り捨てた額)とする。ただし、当該一般承継人のうちに各人が支給を受けるべき被害回復給付金の額の割合について合意をした者があるときは、当該合意をした者に支給する被害回復給付金の額は、この項本文の規定により算出された額のうちこれらの者に係るものを合算した額に当該合意において定められた各人が支給を受けるべき被害回復給付金の額の割合を乗じて得た額(その額に一円未満の端数があるときは、これを切り捨てた額)とする。
第18条
【特別支給手続】
検察官は、前三款の規定による手続において、次の各号のいずれかに該当するときは、遅滞なく、当該手続における支給申請期間(第9条第2項の規定による申請にあっては、一般承継があった日から六十日)内に被害回復給付金の支給の申請をしなかった者又は前条第1項に規定する一般承継人で同項の届出をしなかったものに対して残余給付資金(被害回復給付金の支給等に係る手続が終了した後の残余の給付資金をいう。以下同じ。)から被害回復給付金を支給するための手続(以下「特別支給手続」という。)を開始する旨の決定をするものとする。ただし、その時点において見込まれる残余給付資金をもっては特別支給手続に要する費用等を支弁するのに不足すると認めるとき、その他その時点においては特別支給手続を開始することが相当でないと認めるときは、この限りでない。
第21条
1
検察官は、次の各号のいずれかに該当するときは、犯罪被害財産支給手続を終了する旨の決定をするものとする。
③
被害回復給付金の支給等をして残余給付資金が生じた場合において、当該残余給付資金をもっては特別支給手続に要する費用等を支弁するのに不足すると認めるとき、その他特別支給手続を開始することが相当でないと認めるとき。
⑤
特別支給手続において、すべての申請に対する前条において準用する第10条又は第11条の規定による裁定、当該手続に係る第26条第1項の規定による被害回復事務管理人の報酬の決定及び当該手続に要する費用の額が確定した場合において、次のイからハまでのいずれかに該当するとき。イ 前条において準用する第10条の規定による資格裁定を受けた者がないとき。ロ 前条において準用する第10条の規定による資格裁定を受けたすべての者について、被害回復給付金の特別支給等(前条において準用する第14条第1項、第15条第1項若しくは第2項若しくは第16条第1項の規定による被害回復給付金の支給又は前条において準用する第14条第4項前段(第15条第3項及び第16条第3項において準用する場合を含む。)の規定による被害回復給付金に相当する金銭の保管をいう。以下この号において同じ。)をしたとき(当該被害回復給付金の特別支給等に係る額が犯罪被害額に達した場合に限る。)。ハ ロに掲げる場合を除き、前条において準用する第10条の規定による資格裁定を受けたすべての者について被害回復給付金の特別支給等をした場合において、新たに給付資金を保管することとなる見込みがないとき。
第22条
【被害回復事務管理人の選任等】
2
検察官は、被害回復事務管理人を選任したときは、法務省令で定めるところにより、その氏名又は名称、被害回復事務(前項の規定により被害回復事務管理人に行わせることとした事務をいう。以下同じ。)の範囲その他法務省令で定める事項を公告しなければならない。
第23条
【被害回復事務管理人の義務等】
第24条
【訴訟記録の使用等】
2
検察官は、被害回復事務を行うため必要があると認める場合であって、相当と認めるときは、被害回復事務管理人に対し、支給対象犯罪行為に係る訴訟に関する記録(前項の訴訟記録を除く。)を使用させることができる。
第25条
【事務の結果の報告】
第22条第1項第2号に掲げる事務を行う被害回復事務管理人は、当該事務を終えたときは、遅滞なく、検察官に対し、書面により、その結果を報告しなければならない。
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参照条文
第27条
【被害回復事務管理人の秘密保持義務等】
1
被害回復事務管理人(弁護士法人である場合には、その社員又は使用人である弁護士であって被害回復事務を行うもの。以下この条において同じ。)又は被害回復事務管理人であった者は、被害回復事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
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参照条文
第28条
【調査】
1
検察官は、犯罪被害財産支給手続における事務を行うため必要があると認めるときは、申請人その他の関係人に対して、報告、文書その他の物件の提出若しくは出頭を命じ、又は公務所若しくは公私の団体に照会して、必要な事項の報告を求めることができる。
第30条
【不正利得の徴収等】
第33条
【戸籍事項の無料証明】
市町村長(特別区の区長を含むものとし、地方自治法第252条の19第1項の指定都市にあっては、区長とする。)は、検察官若しくは被害回復事務管理人又は被害回復給付金の支給を受けようとする者に対して、当該市(特別区を含む。)町村の条例で定めるところにより、対象被害者若しくはその一般承継人又は資格裁定が確定した者の一般承継人の戸籍に関し、無料で証明を行うことができる。
第35条
【支給対象犯罪行為の範囲を定める処分等】
3
検察官は、前二項の規定により支給対象犯罪行為の範囲を二以上に区分して定めたときは、その範囲ごとに、第1項の外国譲与財産(一の外国譲与財産が異なる支給対象犯罪行為の範囲に属する対象犯罪行為によりその被害を受けた者から得た財産又は当該財産の保有若しくは処分に基づき得た財産から形成されたものであって額又は数量により区分することができないものである場合においては、当該外国譲与財産の換価又は取立てにより得られる金銭の価額)を区分するものとする。
第37条
【外国譲与財産支給手続の開始】
2
検察官は、外国から外国犯罪被害財産等又はその換価若しくは取立てにより得られた金銭の譲与を受けるため特に必要があると認めるときは、前項本文の規定にかかわらず、これを給付資金として保管する前に、外国譲与財産支給手続を開始する旨の決定をすることができる。
第39条
【準用】
前節(第5条、第6条及び第8条を除く。)の規定は、外国譲与財産支給手続について準用する。この場合において、第7条第1項中「前条第2項」とあるのは「第37条第2項」と、第10条第1項及び第20条中「第5条第1項」とあるのは「第35条第1項」と、第14条第1項及び第21条第1項第1号ロ中「第6条第2項」とあるのは「第37条第2項」と、第14条第1項中「犯罪被害財産又はその価額」とあるのは「外国譲与財産」と、第21条第1項第1号イ中「第6条第1項」とあるのは「第37条第1項」と、第24条第2項中「除く。)」とあるのは「除く。)及び外国譲与財産に係る外国の法令による裁判又は命令その他の処分に関する記録」と、第34条第1項中「第8条第1項」とあるのは「第38条第1項」と読み替えるものとする。
第40条
【検察庁の長に対する審査の申立て】
1
次の各号に掲げる処分、決定又は裁定(以下「処分等」という。)に不服がある者は、それぞれ当該各号に定める日から起算して三十日以内に、当該処分等をした検察官が所属する検察庁の長に対し、書面により、審査の申立てをすることができる。
第41条
【他の申請人への通知等】
検察庁の長は、前条第1項第3号に掲げる裁定についての審査の申立てが他の申請人に対する裁定についてされたものであるときは、当該他の申請人に対し、その旨を通知し、かつ、意見を記載した書面を提出する機会を与えなければならない。
第44条
【行政不服審査法の準用】
行政不服審査法第10条から第13条まで、第14条第4項、第15条第1項、第2項及び第4項、第17条、第18条第1項及び第4項、第19条、第21条、第24条、第25条第1項本文、第26条から第31条まで、第33条、第34条第1項、第2項及び第4項から第7項まで、第35条、第36条、第37条第1項から第5項まで、第38条、第39条、第42条第4項、第43条第1項から第3項まで並びに第44条の規定は、第40条第1項の規定による審査の申立てについて準用する。この場合において、次の表の上欄に掲げる同法の規定中同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表の下欄に掲げる字句に読み替えるものとする。
読み替えられる行政不服審査法の規定 | 読み替えられる字句 | 読み替える字句 | |
第11条第2項及び第13条第2項 | 審査庁(異議申立てにあつては処分庁又は不作為庁、再審査請求にあつては再審査庁) | 審査庁 | |
第17条第1項 | 提出し、又は処分庁に対し第15条第1項から第3項までに規定する事項を陳述する | 提出する | |
第17条第2項 | 正本又は審査請求録取書(前条後段の規定により陳述の内容を録取した書面をいう。以下同じ。) | 正本 | |
第17条第3項 | 提出し、又は処分庁に対し当該事項を陳述した | 提出した | |
第18条第1項 | 処分(異議申立てをすることもできる処分を除く。) | 処分 | |
正本及び副本を処分庁又は | 正本を | ||
第18条第4項 | 正本又は異議申立書若しくは異議申立録取書 | 正本 | |
第31条 | 職員に、第25条第1項ただし書の規定による審査請求人若しくは参加人の意見の陳述を聞かせ | 職員に | |
第34条第2項 | 処分庁の上級行政庁である審査庁 | 審査庁 | |
第38条 | 又は審査請求録取書及び | 及び | |
第42条第4項 | 参加人及び処分庁 | 参加人 | |
第43条第3項 | 法令の規定により公示された処分 | 犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律第40条第1項第1号に掲げる処分又は同項第2号に掲げる決定 | |
当該処分が取り消され、又は変更された旨を公示し | 法務省令で定めるところにより、当該処分又は決定が取り消され、又は変更された旨を公告し |
第47条
【訴訟の特例】
4
国は、第1項に規定する訴えが、他の申請人に対する第40条第1項第3号に掲げる裁定又は当該裁定に係る第42条第1項各号に定める裁決の取消しを求めるものであるときは、遅滞なく、当該他の申請人に対し、訴訟告知をしなければならない。
第48条
【取消裁決等があった場合の申請等の効力】
第5条第1項若しくは第35条第1項の規定による支給対象犯罪行為の範囲を定める処分(以下この条において「旧処分」という。)を取り消す裁決若しくは旧処分を取り消す判決が確定した場合において改めて支給対象犯罪行為の範囲を定める処分(以下この条において「新処分」という。)がされたとき、又は旧処分を変更する裁決(以下この条において「変更裁決」という。)が確定したときは、旧処分に基づいて申請人が行った申請その他の行為(以下この条において「申請等」という。)又は申請人に対して行われた調査その他の行為(以下この条において「調査等」という。)は、新処分又は変更裁決に基づいて申請人が行った申請等又は申請人に対して行われた調査等とみなす。
第51条
3
法人でない団体について前項の規定の適用がある場合には、その代表者又は管理人が、その訴訟行為につき法人でない団体を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。
附則
第1条
(施行期日)
第3条
(経過措置)
1
検察官は、外国から外国犯罪被害財産等又はその換価若しくは取立てにより得られた金銭の譲与を受けるため特に必要があると認めるときは、この法律の施行の日前においても、第三十五条の規定並びに第三十九条において準用する第二十二条第一項、第二十三条第二項から第四項まで、第二十四条及び第二十八条の規定の例により、支給対象犯罪行為の範囲を定めること、被害回復事務管理人を選任し、被害回復事務を行わせることその他の外国譲与財産支給手続を開始するために必要な行為をすることができる。
2
第三十九条において準用する第二十三条第一項及び第二十七条の規定は前項の規定により選任された被害回復事務管理人について、第三十九条において準用する第二十七条第一項の規定は前項の規定により選任された被害回復事務管理人であった者について、それぞれ準用する。