第1条
【目的】
この法律は、科学技術の発展、国際化の進展その他の国民の食生活を取り巻く環境の変化に適確に対応することの緊要性にかんがみ、食品の安全性の確保に関し、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体及び食品関連事業者の責務並びに消費者の役割を明らかにするとともに、施策の策定に係る基本的な方針を定めることにより、食品の安全性の確保に関する施策を総合的に推進することを目的とする。
第2条
【定義】
この法律において「食品」とは、すべての飲食物(
薬事法に規定する医薬品及び医薬部外品を除く。)をいう。
第3条
【食品の安全性の確保のための措置を講ずるに当たっての基本的認識】
食品の安全性の確保は、このために必要な措置が国民の健康の保護が最も重要であるという基本的認識の下に講じられることにより、行われなければならない。
第4条
【食品供給行程の各段階における適切な措置】
農林水産物の生産から食品の販売に至る一連の国の内外における食品供給の行程(以下「食品供給行程」という。)におけるあらゆる要素が食品の安全性に影響を及ぼすおそれがあることにかんがみ、食品の安全性の確保は、このために必要な措置が食品供給行程の各段階において適切に講じられることにより、行われなければならない。
第5条
【国民の健康への悪影響の未然防止】
食品の安全性の確保は、このために必要な措置が食品の安全性の確保に関する国際的動向及び国民の意見に十分配慮しつつ科学的知見に基づいて講じられることによって、食品を摂取することによる国民の健康への悪影響が未然に防止されるようにすることを旨として、行われなければならない。
第6条
【国の責務】
国は、前三条に定める食品の安全性の確保についての基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、食品の安全性の確保に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
第7条
【地方公共団体の責務】
地方公共団体は、基本理念にのっとり、食品の安全性の確保に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。
第8条
【食品関連事業者の責務】
1
肥料、農薬、飼料、飼料添加物、動物用の医薬品その他食品の安全性に影響を及ぼすおそれがある農林漁業の生産資材、食品(その原料又は材料として使用される農林水産物を含む。)若しくは添加物(
食品衛生法第4条第2項に規定する添加物をいう。)又は器具(
同条第4項に規定する器具をいう。)若しくは容器包装(
同条第5項に規定する容器包装をいう。)の生産、輸入又は販売その他の事業活動を行う事業者(以下「食品関連事業者」という。)は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たって、自らが食品の安全性の確保について第一義的責任を有していることを認識して、食品の安全性を確保するために必要な措置を食品供給行程の各段階において適切に講ずる責務を有する。
2
前項に定めるもののほか、食品関連事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たっては、その事業活動に係る食品その他の物に関する正確かつ適切な情報の提供に努めなければならない。
3
前二項に定めるもののほか、食品関連事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動に関し、国又は地方公共団体が実施する食品の安全性の確保に関する施策に協力する責務を有する。
第9条
【消費者の役割】
消費者は、食品の安全性の確保に関する知識と理解を深めるとともに、食品の安全性の確保に関する施策について意見を表明するように努めることによって、食品の安全性の確保に積極的な役割を果たすものとする。
第10条
【法制上の措置等】
政府は、食品の安全性の確保に関する施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。
第11条
【食品健康影響評価の実施】
1
食品の安全性の確保に関する施策の策定に当たっては、人の健康に悪影響を及ぼすおそれがある生物学的、化学的若しくは物理的な要因又は状態であって、食品に含まれ、又は食品が置かれるおそれがあるものが当該食品が摂取されることにより人の健康に及ぼす影響についての評価(以下「食品健康影響評価」という。)が施策ごとに行われなければならない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。
①
当該施策の内容からみて食品健康影響評価を行うことが明らかに必要でないとき。
②
人の健康に及ぼす悪影響の内容及び程度が明らかであるとき。
③
人の健康に悪影響が及ぶことを防止し、又は抑制するため緊急を要する場合で、あらかじめ食品健康影響評価を行ういとまがないとき。
2
前項第3号に掲げる場合においては、事後において、遅滞なく、食品健康影響評価が行われなければならない。
3
前二項の食品健康影響評価は、その時点において到達されている水準の科学的知見に基づいて、客観的かつ中立公正に行われなければならない。
第12条
【国民の食生活の状況等を考慮し、食品健康影響評価の結果に基づいた施策の策定】
食品の安全性の確保に関する施策の策定に当たっては、食品を摂取することにより人の健康に悪影響が及ぶことを防止し、及び抑制するため、国民の食生活の状況その他の事情を考慮するとともに、
前条第1項又は
第2項の規定により食品健康影響評価が行われたときは、その結果に基づいて、これが行われなければならない。
第13条
【情報及び意見の交換の促進】
食品の安全性の確保に関する施策の策定に当たっては、当該施策の策定に国民の意見を反映し、並びにその過程の公正性及び透明性を確保するため、当該施策に関する情報の提供、当該施策について意見を述べる機会の付与その他の関係者相互間の情報及び意見の交換の促進を図るために必要な措置が講じられなければならない。
第14条
【緊急の事態への対処等に関する体制の整備等】
食品の安全性の確保に関する施策の策定に当たっては、食品を摂取することにより人の健康に係る重大な被害が生ずることを防止するため、当該被害が生じ、又は生じるおそれがある緊急の事態への対処及び当該事態の発生の防止に関する体制の整備その他の必要な措置が講じられなければならない。
第15条
【関係行政機関の相互の密接な連携】
食品の安全性の確保に関する施策の策定に当たっては、食品の安全性の確保のために必要な措置が食品供給行程の各段階において適切に講じられるようにするため、関係行政機関の相互の密接な連携の下に、これが行われなければならない。
第16条
【試験研究の体制の整備等】
食品の安全性の確保に関する施策の策定に当たっては、科学的知見の充実に努めることが食品の安全性の確保上重要であることにかんがみ、試験研究の体制の整備、研究開発の推進及びその成果の普及、研究者の養成その他の必要な措置が講じられなければならない。
第17条
【国の内外の情報の収集、整理及び活用等】
食品の安全性の確保に関する施策の策定に当たっては、国民の食生活を取り巻く環境の変化に即応して食品の安全性の確保のために必要な措置の適切かつ有効な実施を図るため、食品の安全性の確保に関する国の内外の情報の収集、整理及び活用その他の必要な措置が講じられなければならない。
第18条
【表示制度の適切な運用の確保等】
食品の安全性の確保に関する施策の策定に当たっては、食品の表示が食品の安全性の確保に関し重要な役割を果たしていることにかんがみ、食品の表示の制度の適切な運用の確保その他食品に関する情報を正確に伝達するために必要な措置が講じられなければならない。
第19条
【食品の安全性の確保に関する教育、学習等】
食品の安全性の確保に関する施策の策定に当たっては、食品の安全性の確保に関する教育及び学習の振興並びに食品の安全性の確保に関する広報活動の充実により国民が食品の安全性の確保に関する知識と理解を深めるために必要な措置が講じられなければならない。
第20条
【環境に及ぼす影響の配慮】
食品の安全性の確保に関する施策の策定に当たっては、当該施策が環境に及ぼす影響について配慮して、これが行われなければならない。
第21条
【措置の実施に関する基本的事項の決定及び公表】
1
政府は、
第11条から
前条までの規定により講じられる措置につき、それらの実施に関する基本的事項(以下「基本的事項」という。)を定めなければならない。
2
内閣総理大臣は、食品安全委員会及び消費者委員会の意見を聴いて、基本的事項の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
3
内閣総理大臣は、
前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、基本的事項を公表しなければならない。
4
前二項の規定は、基本的事項の変更について準用する。
第22条
【設置】
内閣府に、食品安全委員会(以下「委員会」という。)を置く。
第23条
【所掌事務】
1
委員会は、次に掲げる事務をつかさどる。
②
次条の規定により、又は自ら食品健康影響評価を行うこと。
③
前号の規定により行った食品健康影響評価の結果に基づき、食品の安全性の確保のため講ずべき施策について内閣総理大臣を通じて関係各大臣に勧告すること。
④
第2号の規定により行った食品健康影響評価の結果に基づき講じられる施策の実施状況を監視し、必要があると認めるときは、内閣総理大臣を通じて関係各大臣に勧告すること。
⑤
食品の安全性の確保のため講ずべき施策に関する重要事項を調査審議し、必要があると認めるときは、関係行政機関の長に意見を述べること。
⑥
第2号から
前号までに掲げる事務を行うために必要な科学的調査及び研究を行うこと。
⑦
第2号から
前号までに掲げる事務に係る関係者相互間の情報及び意見の交換を企画し、及び実施すること。
2
委員会は、
前項第2号の規定に基づき食品健康影響評価を行ったときは、遅滞なく、関係各大臣に対して、その食品健康影響評価の結果を通知しなければならない。
3
委員会は、
前項の規定による通知を行ったとき、又は
第1項第3号若しくは
第4号の規定による勧告をしたときは、遅滞なく、その通知に係る事項又はその勧告の内容を公表しなければならない。
4
関係各大臣は、
第1項第3号又は
第4号の規定による勧告に基づき講じた施策について委員会に報告しなければならない。
第24条
【委員会の意見の聴取】
1
関係各大臣は、次に掲げる場合には、委員会の意見を聴かなければならない。ただし、委員会が
第11条第1項第1号に該当すると認める場合又は関係各大臣が
同項第3号に該当すると認める場合は、この限りでない。
⑨
農用地の土壌の汚染防止等に関する法律第2条第3項の政令(農用地の土壌に含まれることに起因して人の健康を損なうおそれがある農畜産物が生産されるおそれがある物質を定めるものに限る。)又は
同法第3条第1項の政令(農用地の利用に起因して人の健康を損なうおそれがある農畜産物が生産されると認められ、又はそのおそれが著しいと認められる地域の要件を定めるものに限る。)の制定又は改廃の立案をしようとするとき。
2
関係各大臣は、
前項ただし書の場合(関係各大臣が
第11条第1項第3号に該当すると認めた場合に限る。)においては、当該食品の安全性の確保に関する施策の策定の後相当の期間内に、その旨を委員会に報告し、委員会の意見を聴かなければならない。
3
第1項に定めるもののほか、関係各大臣は、食品の安全性の確保に関する施策を策定するため必要があると認めるときは、委員会の意見を聴くことができる。
第25条
【資料の提出等の要求】
委員会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、資料の提出、意見の表明、説明その他必要な協力を求めることができる。
第26条
【調査の委託】
委員会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、独立行政法人、一般社団法人若しくは一般財団法人、事業者その他の民間の団体、都道府県の試験研究機関又は学識経験を有する者に対し、必要な調査を委託することができる。
第27条
【緊急時の要請等】
1
委員会は、食品の安全性の確保に関し重大な被害が生じ、又は生じるおそれがある緊急の事態に対処するため必要があると認めるときは、国の関係行政機関の試験研究機関に対し、食品健康影響評価に必要な調査、分析又は検査を実施すべきことを要請することができる。
2
国の関係行政機関の試験研究機関は、
前項の規定による委員会の要請があったときは、速やかにその要請された調査、分析又は検査を実施しなければならない。
第29条
【委員の任命】
1
委員は、食品の安全性の確保に関して優れた識見を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。
2
委員の任期が満了し、又は欠員が生じた場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、内閣総理大臣は、
前項の規定にかかわらず、
同項に定める資格を有する者のうちから、委員を任命することができる。
3
前項の場合においては、任命後最初の国会で両議院の事後の承認を得なければならない。この場合において、両議院の事後の承認を得られないときは、内閣総理大臣は、直ちにその委員を罷免しなければならない。
第30条
【委員の任期】
1
委員の任期は、三年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
3
委員の任期が満了したときは、当該委員は、後任者が任命されるまで引き続きその職務を行うものとする。
第31条
【委員の罷免】
内閣総理大臣は、委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認める場合又は委員に職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認める場合においては、両議院の同意を得て、これを罷免することができる。
第32条
【委員の服務】
1
委員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。
2
委員は、在任中、政党その他の政治的団体の役員となり、又は積極的に政治運動をしてはならない。
3
常勤の委員は、在任中、内閣総理大臣の許可のある場合を除くほか、報酬を得て他の職務に従事し、又は営利事業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行ってはならない。
第34条
【委員長】
1
委員会に委員長を置き、委員の互選によって常勤の委員のうちからこれを定める。
3
委員長に事故があるときは、あらかじめその指名する常勤の委員が、その職務を代理する。
第35条
【会議】
2
委員会は、委員長及び三人以上の委員の出席がなければ、会議を開き、議決をすることができない。
3
委員会の議事は、出席者の過半数でこれを決し、可否同数のときは、委員長の決するところによる。
4
委員長に事故がある場合の
第2項の規定の適用については、
前条第3項に規定する委員は、委員長とみなす。
第36条
【専門委員】
1
委員会に、専門の事項を調査審議させるため、専門委員を置くことができる。
2
専門委員は、学識経験のある者のうちから、内閣総理大臣が任命する。
3
専門委員は、当該専門の事項に関する調査審議が終了したときは、解任されるものとする。
第37条
【事務局】
1
委員会の事務を処理させるため、委員会に事務局を置く。
3
事務局長は、委員長の命を受けて、局務を掌理する。
第38条
【政令への委任】
この章に規定するもののほか、委員会に関し必要な事項は、政令で定める。
附則
第1条
(施行期日)
この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第二十九条第一項中両議院の同意を得ることに関する部分は、公布の日から施行する。
第2条
(最初の委員の任命)
この法律の施行後最初に任命される委員会の委員の任命について、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、第二十九条第二項及び第三項の規定を準用する。
第8条
(検討)
政府は、食品の安全性の確保を図るための諸施策に関する国際的動向その他の社会経済情勢の変化を勘案しつつ、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
附則
平成14年7月31日
第1条
(施行期日)
この法律は、公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
附則
平成15年5月30日
第1条
(施行期日)
この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
附則
平成15年6月11日
第1条
(施行期日)
この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第二条の規定並びに附則第六条中地方自治法別表第一薬事法の項の改正規定、附則第七条、第九条及び第十条の規定並びに附則第十一条中食品安全基本法第二十四条第一項第八号の改正規定及び同法附則第四条の改正規定は薬事法及び採血及び供血あつせん業取締法の一部を改正する法律附則第一条第一号に定める日又はこの法律の施行の日のいずれか遅い日から、第四条の規定は公布の日から起算して一年を経過した日から施行する。
附則
平成15年6月11日
第1条
(施行期日)
この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
附則
平成18年6月2日
この法律は、一般社団・財団法人法の施行の日から施行する。
附則
平成21年6月5日
第1条
(施行期日)
この法律は、消費者庁及び消費者委員会設置法の施行の日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
第8条
(罰則の適用に関する経過措置)
この法律の施行前にした行為及びこの法律の附則においてなお従前の例によることとされる場合におけるこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
第9条
(政令への委任)
附則第二条から前条までに定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)は、政令で定める。
附則
平成23年6月24日
第1条
(施行期日)
この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。