裁判員の参加する刑事裁判に関する法律
平成21年6月3日 改正
第1条
【趣旨】
この法律は、国民の中から選任された裁判員が裁判官と共に刑事訴訟手続に関与することが司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上に資することにかんがみ、裁判員の参加する刑事裁判に関し、
裁判所法及び
刑事訴訟法の特則その他の必要な事項を定めるものとする。
第2条
【対象事件及び合議体の構成】
1
地方裁判所は、次に掲げる事件については、
次条の決定があった場合を除き、この法律の定めるところにより裁判員の参加する合議体が構成された後は、
裁判所法第26条の規定にかかわらず、裁判員の参加する合議体でこれを取り扱う。
①
死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件
2
前項の合議体の裁判官の員数は三人、裁判員の員数は六人とし、裁判官のうち一人を裁判長とする。ただし、
次項の決定があったときは、裁判官の員数は一人、裁判員の員数は四人とし、裁判官を裁判長とする。
3
第1項の規定により
同項の合議体で取り扱うべき事件(以下「対象事件」という。)のうち、公判前整理手続による争点及び証拠の整理において公訴事実について争いがないと認められ、事件の内容その他の事情を考慮して適当と認められるものについては、裁判所は、裁判官一人及び裁判員四人から成る合議体を構成して審理及び裁判をする旨の決定をすることができる。
4
裁判所は、
前項の決定をするには、公判前整理手続において、検察官、被告人及び弁護人に異議のないことを確認しなければならない。
6
地方裁判所は、
第3項の決定があったときは、
裁判所法第26条第2項の規定にかかわらず、当該決定の時から
第3項に規定する合議体が構成されるまでの間、一人の裁判官で事件を取り扱う。
7
裁判所は、被告人の主張、審理の状況その他の事情を考慮して、事件を
第3項に規定する合議体で取り扱うことが適当でないと認めたときは、決定で、
同項の決定を取り消すことができる。
第3条
【対象事件からの除外】
1
地方裁判所は、
前条第1項各号に掲げる事件について、被告人の言動、被告人がその構成員である団体の主張若しくは当該団体の他の構成員の言動又は現に裁判員候補者若しくは裁判員に対する加害若しくはその告知が行われたことその他の事情により、裁判員候補者、裁判員若しくは裁判員であった者若しくはその親族若しくはこれに準ずる者の生命、身体若しくは財産に危害が加えられるおそれ又はこれらの者の生活の平穏が著しく侵害されるおそれがあり、そのため裁判員候補者又は裁判員が畏怖し、裁判員候補者の出頭を確保することが困難な状況にあり又は裁判員の職務の遂行ができずこれに代わる裁判員の選任も困難であると認めるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、これを裁判官の合議体で取り扱う決定をしなければならない。
2
前項の決定又は
同項の請求を却下する決定は、合議体でしなければならない。ただし、当該
前条第1項各号に掲げる事件の審判に関与している裁判官は、その決定に関与することはできない。
3
第1項の決定又は
同項の請求を却下する決定をするには、最高裁判所規則で定めるところにより、あらかじめ、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。
4
前条第1項の合議体が構成された後は、職権で
第1項の決定をするには、あらかじめ、当該合議体の裁判長の意見を聴かなければならない。
6
第1項の決定又は
同項の請求を却下する決定に対しては、即時抗告をすることができる。この場合においては、即時抗告に関する
刑事訴訟法の規定を準用する。
第4条
【弁論を併合する事件の取扱い】
1
裁判所は、対象事件以外の事件であって、その弁論を対象事件の弁論と併合することが適当と認められるものについては、決定で、これを
第2条第1項の合議体で取り扱うことができる。
2
裁判所は、
前項の決定をした場合には、
刑事訴訟法の規定により、
同項の決定に係る事件の弁論と対象事件の弁論とを併合しなければならない。
第5条
【罰条変更後の取扱い】
裁判所は、
第2条第1項の合議体で取り扱っている事件の全部又は一部について
刑事訴訟法第312条の規定により罰条が撤回又は変更されたため対象事件に該当しなくなったときであっても、当該合議体で当該事件を取り扱うものとする。ただし、審理の状況その他の事情を考慮して適当と認めるときは、決定で、
裁判所法第26条の定めるところにより、当該事件を一人の裁判官又は裁判官の合議体で取り扱うことができる。
第6条
【裁判官及び裁判員の権限】
2
前項に規定する場合において、次に掲げる裁判所の判断は、構成裁判官の合議による。
3
裁判員の関与する判断をするための審理は構成裁判官及び裁判員で行い、それ以外の審理は構成裁判官のみで行う。
第7条
第2条第3項の決定があった場合においては、構成裁判官の合議によるべき判断は、構成裁判官が行う。
第9条
【裁判員の義務】
1
裁判員は、法令に従い公平誠実にその職務を行わなければならない。
2
裁判員は、
第70条第1項に規定する評議の秘密その他の職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。
3
裁判員は、裁判の公正さに対する信頼を損なうおそれのある行為をしてはならない。
4
裁判員は、その品位を害するような行為をしてはならない。
第10条
【補充裁判員】
1
裁判所は、審判の期間その他の事情を考慮して必要があると認めるときは、補充裁判員を置くことができる。ただし、補充裁判員の員数は、合議体を構成する裁判員の員数を超えることはできない。
2
補充裁判員は、裁判員の関与する判断をするための審理に立ち会い、
第2条第1項の合議体を構成する裁判員の員数に不足が生じた場合に、あらかじめ定める順序に従い、これに代わって、裁判員に選任される。
3
補充裁判員は、訴訟に関する書類及び証拠物を閲覧することができる。
第11条
【旅費、日当及び宿泊料】
裁判員及び補充裁判員には、最高裁判所規則で定めるところにより、旅費、日当及び宿泊料を支給する。
第12条
【公務所等に対する照会】
2
地方裁判所は、裁判員候補者について、裁判所の
前項の判断に資するため必要があると認めるときは、公務所に照会して必要な事項の報告を求めることができる。
第13条
【裁判員の選任資格】
裁判員は、衆議院議員の選挙権を有する者の中から、この節の定めるところにより、選任するものとする。
第14条
【欠格事由】
国家公務員法第38条の規定に該当する場合のほか、次の各号のいずれかに該当する者は、裁判員となることができない。
①
学校教育法に定める義務教育を終了しない者。ただし、義務教育を終了した者と同等以上の学識を有する者は、この限りでない。
③
心身の故障のため裁判員の職務の遂行に著しい支障がある者
第15条
【就職禁止事由】
1
次の各号のいずれかに該当する者は、裁判員の職務に就くことができない。
⑥
弁護士(外国法事務弁護士を含む。以下この項において同じ。)及び弁護士であった者
⑬
国家公安委員会委員及び都道府県公安委員会委員並びに警察職員(非常勤の者を除く。)
⑭
判事、判事補、検事又は弁護士となる資格を有する者
⑮
学校教育法に定める大学の学部、専攻科又は大学院の法律学の教授又は准教授
⑰
都道府県知事及び市町村(特別区を含む。以下同じ。)の長
2
次のいずれかに該当する者も、
前項と同様とする。
①
禁錮以上の刑に当たる罪につき起訴され、その被告事件の終結に至らない者
第16条
【辞退事由】
次の各号のいずれかに該当する者は、裁判員となることについて辞退の申立てをすることができる。
④
過去五年以内に裁判員又は補充裁判員の職にあった者
⑦
過去五年以内に
検察審査会法の規定による検察審査員又は補充員の職にあった者
⑧
次に掲げる事由その他政令で定めるやむを得ない事由があり、裁判員の職務を行うこと又は裁判員候補者として
第27条第1項に規定する裁判員等選任手続の期日に出頭することが困難な者
イ
重い疾病又は傷害により裁判所に出頭することが困難であること。
ロ
介護又は養育が行われなければ日常生活を営むのに支障がある同居の親族の介護又は養育を行う必要があること。
ハ
その従事する事業における重要な用務であって自らがこれを処理しなければ当該事業に著しい損害が生じるおそれがあるものがあること。
ニ
父母の葬式への出席その他の社会生活上の重要な用務であって他の期日に行うことができないものがあること。
第17条
【事件に関連する不適格事由】
次の各号のいずれかに該当する者は、当該事件について裁判員となることができない。
③
被告人又は被害者の法定代理人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人
⑦
事件について被告人の代理人、弁護人又は補佐人になった者
⑧
事件について検察官又は司法警察職員として職務を行った者
⑨
事件について検察審査員又は審査補助員として職務を行い、又は補充員として検察審査会議を傍聴した者
第18条
【その他の不適格事由】
前条のほか、裁判所がこの法律の定めるところにより不公平な裁判をするおそれがあると認めた者は、当該事件について裁判員となることができない。
第19条
【準用】
第13条から
前条までの規定(裁判員の選任資格、欠格事由、就職禁止事由、辞退事由、事件に関連する不適格事由及びその他の不適格事由)は、補充裁判員に準用する。
第20条
【裁判員候補者の員数の割当て及び通知】
1
地方裁判所は、最高裁判所規則で定めるところにより、毎年九月一日までに、次年に必要な裁判員候補者の員数をその管轄区域内の市町村に割り当て、これを市町村の選挙管理委員会に通知しなければならない。
2
前項の裁判員候補者の員数は、最高裁判所規則で定めるところにより、地方裁判所が対象事件の取扱状況その他の事項を勘案して算定した数とする。
第21条
【裁判員候補者予定者名簿の調製】
2
市町村の選挙管理委員会は、
前項の規定により選定した者について、選挙人名簿に記載(
公職選挙法第19条第3項の規定により磁気ディスクをもって調製する選挙人名簿にあっては、記録)をされている氏名、住所及び生年月日の記載(
次項の規定により磁気ディスクをもって調製する裁判員候補者予定者名簿にあっては、記録)をした裁判員候補者予定者名簿を調製しなければならない。
3
裁判員候補者予定者名簿は、磁気ディスク(これに準ずる方法により一定の事項を確実に記録しておくことができる物を含む。以下同じ。)をもって調製することができる。
第22条
【裁判員候補者予定者名簿の送付】
市町村の選挙管理委員会は、
第20条第1項の通知を受けた年の十月十五日までに裁判員候補者予定者名簿を当該通知をした地方裁判所に送付しなければならない。
第23条
【裁判員候補者名簿の調製】
1
地方裁判所は、
前条の規定により裁判員候補者予定者名簿の送付を受けたときは、これに基づき、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判員候補者の氏名、住所及び生年月日の記載(
次項の規定により磁気ディスクをもって調製する裁判員候補者名簿にあっては、記録。
第25条及び
第26条第3項において同じ。)をした裁判員候補者名簿を調製しなければならない。
2
裁判員候補者名簿は、磁気ディスクをもって調製することができる。
3
地方裁判所は、裁判員候補者について、死亡したことを知ったとき、
第13条に規定する者に該当しないと認めたとき、
第14条の規定により裁判員となることができない者であると認めたとき又は
第15条第1項各号に掲げる者に該当すると認めたときは、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判員候補者名簿から消除しなければならない。
4
市町村の選挙管理委員会は、
第21条第1項の規定により選定した裁判員候補者の予定者について、死亡したこと又は衆議院議員の選挙権を有しなくなったことを知ったときは、
前条の規定により裁判員候補者予定者名簿を送付した地方裁判所にその旨を通知しなければならない。ただし、当該裁判員候補者予定者名簿を送付した年の次年が経過したときは、この限りでない。
第24条
【裁判員候補者の補充の場合の措置】
1
地方裁判所は、
第20条第1項の規定により通知をした年の次年において、その年に必要な裁判員候補者を補充する必要があると認めたときは、最高裁判所規則で定めるところにより、速やかに、その補充する裁判員候補者の員数をその管轄区域内の市町村に割り当て、これを市町村の選挙管理委員会に通知しなければならない。
2
前三条の規定は、
前項の場合に準用する。この場合において、
第22条中「
第20条第1項の通知を受けた年の十月十五日までに」とあるのは「速やかに」と、
前条第1項中「した裁判員候補者名簿」とあるのは「追加した裁判員候補者名簿」と、
同条第4項ただし書中「送付した年の次年」とあるのは「送付した年」と読み替えるものとする。
第25条
【裁判員候補者への通知】
地方裁判所は、
第23条第1項(
前条第2項において読み替えて準用する場合を含む。)の規定による裁判員候補者名簿の調製をしたときは、当該裁判員候補者名簿に記載をされた者にその旨を通知しなければならない。
第26条
【呼び出すべき裁判員候補者の選定】
1
対象事件につき第一回の公判期日が定まったときは、裁判所は、必要な員数の補充裁判員を置く決定又は補充裁判員を置かない決定をしなければならない。
2
裁判所は、
前項の決定をしたときは、審判に要すると見込まれる期間その他の事情を考慮して、呼び出すべき裁判員候補者の員数を定めなければならない。
3
地方裁判所は、裁判員候補者名簿に記載をされた裁判員候補者の中から
前項の規定により定められた員数の呼び出すべき裁判員候補者をくじで選定しなければならない。ただし、裁判所の呼出しに応じて
次条第1項に規定する裁判員等選任手続の期日に出頭した裁判員候補者(
第34条第7項の規定による不選任の決定があった者を除く。)については、その年において再度選定することはできない。
4
地方裁判所は、検察官及び弁護人に対し
前項のくじに立ち会う機会を与えなければならない。
第27条
【裁判員候補者の呼出し】
1
裁判所は、裁判員及び補充裁判員の選任のための手続(以下「裁判員等選任手続」という。)を行う期日を定めて、
前条第3項の規定により選定された裁判員候補者を呼び出さなければならない。ただし、裁判員等選任手続を行う期日から裁判員の職務が終了すると見込まれる日までの間(以下「職務従事予定期間」という。)において次の各号に掲げるいずれかの事由があると認められる裁判員候補者については、この限りでない。
②
第14条の規定により裁判員となることができない者であること。
④
第16条の規定により裁判員となることについて辞退の申立てがあった裁判員候補者について
同条各号に掲げる者に該当すること。
3
呼出状には、出頭すべき日時、場所、呼出しに応じないときは過料に処せられることがある旨その他最高裁判所規則で定める事項を記載しなければならない。
4
裁判員等選任手続の期日と裁判員候補者に対する呼出状の送達との間には、最高裁判所規則で定める猶予期間を置かなければならない。
5
裁判所は、
第1項の規定による呼出し後その出頭すべき日時までの間に、職務従事予定期間において
同項各号に掲げるいずれかの事由があると認められるに至った裁判員候補者については、直ちにその呼出しを取り消さなければならない。
6
裁判所は、
前項の規定により呼出しを取り消したときは、速やかに当該裁判員候補者にその旨を通知しなければならない。
第28条
【裁判員候補者の追加呼出し】
1
裁判所は、裁判員等選任手続において裁判員及び必要な員数の補充裁判員を選任するために必要があると認めるときは、追加して必要な員数の裁判員候補者を呼び出すことができる。
第29条
【裁判員候補者の出頭義務、旅費等】
1
呼出しを受けた裁判員候補者は、裁判員等選任手続の期日に出頭しなければならない。
2
裁判所の呼出しに応じて裁判員等選任手続の期日に出頭した裁判員候補者には、最高裁判所規則で定めるところにより、旅費、日当及び宿泊料を支給する。
3
地方裁判所は、裁判所の呼出しに応じて裁判員等選任手続の期日に出頭した裁判員候補者については、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判員候補者名簿から消除しなければならない。ただし、
第34条第7項の規定による不選任の決定があった裁判員候補者については、この限りでない。
第30条
【質問票】
1
裁判所は、裁判員等選任手続に先立ち、
第26条第3項(
第28条第2項において準用する場合を含む。)の規定により選定された裁判員候補者が、職務従事予定期間において、
第13条に規定する者に該当するかどうか、
第14条の規定により裁判員となることができない者でないかどうか、
第15条第1項各号若しくは
第2項各号又は
第17条各号に掲げる者に該当しないかどうか及び
第16条各号に掲げる者に該当するかどうか並びに不公平な裁判をするおそれがないかどうかの判断に必要な質問をするため、質問票を用いることができる。
2
裁判員候補者は、裁判員等選任手続の期日の日前に質問票の送付を受けたときは、裁判所の指定に従い、当該質問票を返送し又は持参しなければならない。
3
裁判員候補者は、質問票に虚偽の記載をしてはならない。
4
前三項及び
次条第2項に定めるもののほか、質問票の記載事項その他の質問票に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
第31条
【裁判員候補者に関する情報の開示】
1
裁判長(
第2条第3項の決定があった場合は、裁判官。
第39条を除き、以下この節において同じ。)は、裁判員等選任手続の期日の二日前までに、呼び出した裁判員候補者の氏名を記載した名簿を検察官及び弁護人に送付しなければならない。
2
裁判長は、裁判員等選任手続の期日の日に、裁判員等選任手続に先立ち、裁判員候補者が提出した質問票の写しを検察官及び弁護人に閲覧させなければならない。
第32条
【裁判員等選任手続の列席者等】
1
裁判員等選任手続は、裁判官及び裁判所書記官が列席し、かつ、検察官及び弁護人が出席して行うものとする。
2
裁判所は、必要と認めるときは、裁判員等選任手続に被告人を出席させることができる。
第33条
【裁判員等選任手続の方式】
3
裁判員等選任手続は、
次条第4項及び
第36条第1項の規定による不選任の決定の請求が裁判員候補者の面前において行われないようにすることその他裁判員候補者の心情に十分配慮して、これを行わなければならない。
4
裁判所は、裁判員等選任手続の続行のため、新たな期日を定めることができる。この場合において、裁判員等選任手続の期日に出頭した裁判員候補者に対し当該新たな期日を通知したときは、呼出状の送達があった場合と同一の効力を有する。
第34条
【裁判員候補者に対する質問等】
1
裁判員等選任手続において、裁判長は、裁判員候補者が、職務従事予定期間において、
第13条に規定する者に該当するかどうか、
第14条の規定により裁判員となることができない者でないかどうか、
第15条第1項各号若しくは
第2項各号若しくは
第17条各号に掲げる者に該当しないかどうか若しくは
第16条の規定により裁判員となることについて辞退の申立てがある場合において
同条各号に掲げる者に該当するかどうか又は不公平な裁判をするおそれがないかどうかの判断をするため、必要な質問をすることができる。
2
陪席の裁判官、検察官、被告人又は弁護人は、裁判長に対し、
前項の判断をするために必要と思料する質問を裁判長が裁判員候補者に対してすることを求めることができる。この場合において、裁判長は、相当と認めるときは、裁判員候補者に対して、当該求めに係る質問をするものとする。
3
裁判員候補者は、前二項の質問に対して正当な理由なく陳述を拒み、又は虚偽の陳述をしてはならない。
4
裁判所は、裁判員候補者が、職務従事予定期間において、
第13条に規定する者に該当しないと認めたとき、
第14条の規定により裁判員となることができない者であると認めたとき又は
第15条第1項各号若しくは
第2項各号若しくは
第17条各号に掲げる者に該当すると認めたときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、当該裁判員候補者について不選任の決定をしなければならない。裁判員候補者が不公平な裁判をするおそれがあると認めたときも、同様とする。
5
弁護人は、
前項後段の場合において
同項の請求をするに当たっては、被告人の明示した意思に反することはできない。
6
第4項の請求を却下する決定には、理由を付さなければならない。
7
裁判所は、
第16条の規定により裁判員となることについて辞退の申立てがあった裁判員候補者について、職務従事予定期間において
同条各号に掲げる者に該当すると認めたときは、当該裁判員候補者について不選任の決定をしなければならない。
第35条
【異議の申立て】
1
前条第4項の請求を却下する決定に対しては、対象事件が係属する地方裁判所に異議の申立てをすることができる。
2
前項の異議の申立ては、当該裁判員候補者について
第37条第1項又は
第2項の規定により裁判員又は補充裁判員に選任する決定がされるまでに、原裁判所に対し、申立書を差し出し、又は裁判員等選任手続において口頭で申立ての趣旨及び理由を明らかにすることによりしなければならない。
3
第1項の異議の申立てを受けた地方裁判所は、合議体で決定をしなければならない。
4
第1項の異議の申立てに関しては、即時抗告に関する
刑事訴訟法の規定を準用する。この場合において、
同法第423条第2項中「受け取つた日から三日」とあるのは、「受け取り又は口頭による申立てがあつた時から二十四時間」と読み替えるものとする。
第36条
【理由を示さない不選任の請求】
1
検察官及び被告人は、裁判員候補者について、それぞれ、四人(
第2条第3項の決定があった場合は、三人)を限度として理由を示さずに不選任の決定の請求(以下「理由を示さない不選任の請求」という。)をすることができる。
2
前項の規定にかかわらず、補充裁判員を置くときは、検察官及び被告人が理由を示さない不選任の請求をすることができる員数は、それぞれ、
同項の員数にその選任すべき補充裁判員の員数が一人又は二人のときは一人、三人又は四人のときは二人、五人又は六人のときは三人を加えた員数とする。
3
理由を示さない不選任の請求があったときは、裁判所は、当該理由を示さない不選任の請求に係る裁判員候補者について不選任の決定をする。
第37条
【選任決定】
1
裁判所は、くじその他の作為が加わらない方法として最高裁判所規則で定める方法に従い、裁判員等選任手続の期日に出頭した裁判員候補者で不選任の決定がされなかったものから、
第2条第2項に規定する員数(当該裁判員候補者の員数がこれに満たないときは、その員数)の裁判員を選任する決定をしなければならない。
2
裁判所は、補充裁判員を置くときは、
前項の規定により裁判員を選任する決定をした後、
同項に規定する方法に従い、その余の不選任の決定がされなかった裁判員候補者から、
第26条第1項の規定により決定した員数(当該裁判員候補者の員数がこれに満たないときは、その員数)の補充裁判員を裁判員に選任されるべき順序を定めて選任する決定をしなければならない。
3
裁判所は、前二項の規定により裁判員又は補充裁判員に選任された者以外の不選任の決定がされなかった裁判員候補者については、不選任の決定をするものとする。
第38条
【裁判員が不足する場合の措置】
1
裁判所は、
前条第1項の規定により選任された裁判員の員数が選任すべき裁判員の員数に満たないときは、不足する員数の裁判員を選任しなければならない。この場合において、裁判所は、併せて必要と認める員数の補充裁判員を選任することができる。
2
第26条(
第1項を除く。)から
前条までの規定は、
前項の規定による裁判員及び補充裁判員の選任について準用する。この場合において、
第36条第1項中「四人(
第2条第3項の決定があった場合は、三人)」とあるのは「選任すべき裁判員の員数が一人又は二人のときは一人、三人又は四人のときは二人、五人又は六人のときは三人」と、
前条第1項中「
第2条第2項に規定する員数」とあるのは「選任すべき裁判員の員数」と読み替えるものとする。
第39条
【宣誓等】
1
裁判長は、裁判員及び補充裁判員に対し、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判員及び補充裁判員の権限、義務その他必要な事項を説明するものとする。
2
裁判員及び補充裁判員は、最高裁判所規則で定めるところにより、法令に従い公平誠実にその職務を行うことを誓う旨の宣誓をしなければならない。
第40条
【最高裁判所規則への委任】
第32条から
前条までに定めるもののほか、裁判員等選任手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
第41条
【請求による裁判員等の解任】
1
検察官、被告人又は弁護人は、裁判所に対し、次の各号のいずれかに該当することを理由として裁判員又は補充裁判員の解任を請求することができる。ただし、
第7号に該当することを理由とする請求は、当該裁判員又は補充裁判員についてその選任の決定がされた後に知り、又は生じた原因を理由とするものに限る。
③
補充裁判員が、
第52条に定める出頭義務に違反し、引き続きその職務を行わせることが適当でないとき。
⑥
裁判員又は補充裁判員が、
第13条(
第19条において準用する場合を含む。)に規定する者に該当しないとき、
第14条(
第19条において準用する場合を含む。)の規定により裁判員若しくは補充裁判員となることができない者であるとき又は
第15条第1項各号若しくは
第2項各号若しくは
第17条各号(これらの規定を
第19条において準用する場合を含む。)に掲げる者に該当するとき。
⑦
裁判員又は補充裁判員が、不公平な裁判をするおそれがあるとき。
⑧
裁判員又は補充裁判員が、裁判員候補者であったときに、質問票に虚偽の記載をし、又は裁判員等選任手続における質問に対して正当な理由なく陳述を拒み、若しくは虚偽の陳述をしていたことが明らかとなり、引き続きその職務を行わせることが適当でないとき。
⑨
裁判員又は補充裁判員が、公判廷において、裁判長が命じた事項に従わず又は暴言その他の不穏当な言動をすることによって公判手続の進行を妨げたとき。
2
裁判所は、
前項の請求を受けたときは、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に規定する決定をし、その余の場合には、構成裁判官の所属する地方裁判所に当該請求に係る事件を送付しなければならない。
①
請求に理由がないことが明らかなとき又は請求が
前項ただし書の規定に違反してされたものであるとき 当該請求を却下する決定
3
前項の規定により事件の送付を受けた地方裁判所は、
第1項各号のいずれかに該当すると認めるときは、当該裁判員又は補充裁判員を解任する決定をする。
4
前項の地方裁判所による
第1項の請求についての決定は、合議体でしなければならない。ただし、
同項の請求を受けた裁判所の構成裁判官は、その決定に関与することはできない。
5
第1項の請求についての決定をするには、最高裁判所規則で定めるところにより、あらかじめ、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。
6
第2項第2号又は
第3項の規定により裁判員又は補充裁判員を解任する決定をするには、当該裁判員又は補充裁判員に陳述の機会を与えなければならない。ただし、
第1項第1号から
第3号まで又は
第9号に該当することを理由として解任する決定をするときは、この限りでない。
7
第1項の請求を却下する決定には、理由を付さなければならない。
第42条
【異議の申立て】
1
前条第1項の請求を却下する決定に対しては、当該決定に関与した裁判官の所属する地方裁判所に異議の申立てをすることができる。
2
前項の異議の申立てを受けた地方裁判所は、合議体で決定をしなければならない。ただし、
前条第1項の請求を受けた裁判所の構成裁判官は、当該異議の申立てがあった決定に関与していない場合であっても、その決定に関与することはできない。
第43条
【職権による裁判員等の解任】
2
裁判所が、
第41条第1項第4号、
第5号、
第7号又は
第8号に該当すると疑うに足りる相当な理由があると思料するときは、裁判長は、その所属する地方裁判所に対し、理由を付してその旨を通知するものとする。
4
前項の決定は合議体でしなければならない。ただし、
第2項の裁判所の構成裁判官は、その決定に関与することはできない。
第44条
【裁判員等の申立てによる解任】
1
裁判員又は補充裁判員は、裁判所に対し、その選任の決定がされた後に生じた
第16条第8号に規定する事由により裁判員又は補充裁判員の職務を行うことが困難であることを理由として辞任の申立てをすることができる。
2
裁判所は、
前項の申立てを受けた場合において、その理由があると認めるときは、当該裁判員又は補充裁判員を解任する決定をしなければならない。
第45条
【補充裁判員の解任】
裁判所は、補充裁判員に引き続きその職務を行わせる必要がないと認めるときは、当該補充裁判員を解任する決定をすることができる。
第46条
【裁判員の追加選任】
1
裁判所は、
第2条第1項の合議体を構成する裁判員の員数に不足が生じた場合において、補充裁判員があるときは、その補充裁判員の選任の決定において定められた順序に従い、補充裁判員を裁判員に選任する決定をするものとする。
2
前項の場合において、裁判員に選任すべき補充裁判員がないときは、裁判所は、不足する員数の裁判員を選任しなければならない。この場合においては、
第38条の規定を準用する。
第47条
【補充裁判員の追加選任】
1
裁判所は、補充裁判員を新たに置き、又は追加する必要があると認めるときは、必要と認める員数の補充裁判員を選任することができる。
第48条
【裁判員等の任務の終了】
裁判員及び補充裁判員の任務は、次のいずれかに該当するときに終了する。
②
第3条第1項又は
第5条ただし書の決定により、
第2条第1項の合議体が取り扱っている事件のすべてを一人の裁判官又は裁判官の合議体で取り扱うこととなったとき。
第49条
【公判前整理手続】
裁判所は、対象事件については、第一回の公判期日前に、これを公判前整理手続に付さなければならない。
第50条
【第一回の公判期日前の鑑定】
1
裁判所は、
第2条第1項の合議体で取り扱うべき事件につき、公判前整理手続において鑑定を行うことを決定した場合において、当該鑑定の結果の報告がなされるまでに相当の期間を要すると認めるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、公判前整理手続において鑑定の手続(鑑定の経過及び結果の報告を除く。)を行う旨の決定(以下この条において「鑑定手続実施決定」という。)をすることができる。
2
鑑定手続実施決定をし、又は
前項の請求を却下する決定をするには、最高裁判所規則で定めるところにより、あらかじめ、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。
3
鑑定手続実施決定があった場合には、公判前整理手続において、鑑定の手続のうち、鑑定の経過及び結果の報告以外のものを行うことができる。
第51条
【裁判員の負担に対する配慮】
裁判官、検察官及び弁護人は、裁判員の負担が過重なものとならないようにしつつ、裁判員がその職責を十分に果たすことができるよう、審理を迅速で分かりやすいものとすることに努めなければならない。
第52条
【出頭義務】
裁判員及び補充裁判員は、裁判員の関与する判断をするための審理をすべき公判期日並びに公判準備において裁判所がする証人その他の者の尋問及び検証の日時及び場所に出頭しなければならない。
第53条
【公判期日等の通知】
前条の規定により裁判員及び補充裁判員が出頭しなければならない公判期日並びに公判準備において裁判所がする証人その他の者の尋問及び検証の日時及び場所は、あらかじめ、裁判員及び補充裁判員に通知しなければならない。
第54条
【開廷の要件】
1
裁判員の関与する判断をするための審理をすべき公判期日においては、公判廷は、裁判官、裁判員及び裁判所書記官が列席し、かつ、検察官が出席して開く。
2
前項の場合を除き、公判廷は、裁判官及び裁判所書記官が列席し、かつ、検察官が出席して開く。
第55条
【冒頭陳述に当たっての義務】
検察官が
刑事訴訟法第296条の規定により証拠により証明すべき事実を明らかにするに当たっては、公判前整理手続における争点及び証拠の整理の結果に基づき、証拠との関係を具体的に明示しなければならない。被告人又は弁護人が
同法第316条の30の規定により証拠により証明すべき事実を明らかにする場合も、同様とする。
第56条
【証人等に対する尋問】
裁判所が証人その他の者を尋問する場合には、裁判員は、裁判長に告げて、裁判員の関与する判断に必要な事項について尋問することができる。
第57条
【裁判所外での証人尋問等】
1
裁判員の関与する判断に必要な事項について裁判所外で証人その他の者を尋問すべき場合において、構成裁判官にこれをさせるときは、裁判員及び補充裁判員はこれに立ち会うことができる。この尋問に立ち会った裁判員は、構成裁判官に告げて、証人その他の者を尋問することができる。
2
裁判員の関与する判断に必要な事項について公判廷外において検証をすべき場合において、構成裁判官にこれをさせるときも、
前項前段と同様とする。
第58条
【被害者等に対する質問】
刑事訴訟法第292条の2第1項の規定により被害者等(被害者又は被害者が死亡した場合若しくはその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹をいう。)又は当該被害者の法定代理人が意見を陳述したときは、裁判員は、その陳述の後に、その趣旨を明確にするため、これらの者に質問することができる。
第59条
【被告人に対する質問】
刑事訴訟法第311条の規定により被告人が任意に供述をする場合には、裁判員は、裁判長に告げて、いつでも、裁判員の関与する判断に必要な事項について被告人の供述を求めることができる。
第60条
【裁判員等の審理立会い】
裁判所は、裁判員の関与する判断をするための審理以外の審理についても、裁判員及び補充裁判員の立会いを許すことができる。
第61条
【公判手続の更新】
1
公判手続が開始された後新たに
第2条第1項の合議体に加わった裁判員があるときは、公判手続を更新しなければならない。
2
前項の更新の手続は、新たに加わった裁判員が、争点及び取り調べた証拠を理解することができ、かつ、その負担が過重にならないようなものとしなければならない。
第62条
【自由心証主義】
裁判員の関与する判断に関しては、証拠の証明力は、それぞれの裁判官及び裁判員の自由な判断にゆだねる。
第63条
【判決の宣告等】
1
刑事訴訟法第333条の規定による刑の言渡しの判決、
同法第334条の規定による刑の免除の判決及び
同法第336条の規定による無罪の判決並びに
少年法第55条の規定による家庭裁判所への移送の決定の宣告をする場合には、裁判員は公判期日に出頭しなければならない。ただし、裁判員が出頭しないことは、当該判決又は決定の宣告を妨げるものではない。
2
前項に規定する場合には、あらかじめ、裁判員に公判期日を通知しなければならない。
第64条
【刑事訴訟法等の適用に関する特例】
1
第2条第1項の合議体で事件が取り扱われる場合における
刑事訴訟法の規定の適用については、次の表の上欄に掲げる同法の規定中同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表の下欄に掲げる字句とする。
第65条
【訴訟関係人の尋問及び供述等の記録媒体への記録】
1
裁判所は、対象事件(
第5条本文の規定により
第2条第1項の合議体で取り扱うものとされた事件を含む。)及び
第4条第1項の決定に係る事件の審理における裁判官、裁判員又は訴訟関係人の尋問及び証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人の供述、
刑事訴訟法第292条の2第1項の規定による意見の陳述並びに裁判官、裁判員又は訴訟関係人による被告人の供述を求める行為及び被告人の供述並びにこれらの状況(以下「訴訟関係人の尋問及び供述等」という。)について、審理又は評議における裁判員の職務の的確な遂行を確保するため必要があると認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、これを記録媒体(映像及び音声を同時に記録することができる物をいう。以下同じ。)に記録することができる。ただし、事案の内容、審理の状況、供述又は陳述をする者に与える心理的な負担その他の事情を考慮し、記録媒体に記録することが相当でないと認めるときは、この限りでない。
2
前項の規定による訴訟関係人の尋問及び供述等の記録は、
刑事訴訟法第157条の4第1項に規定する方法により証人を尋問する場合においては、その証人の同意がなければ、これをすることができない。
3
前項の場合において、その訴訟関係人の尋問及び供述等を記録した記録媒体は、訴訟記録に添付して調書の一部とするものとする。ただし、その証人が後の刑事手続において同一の事実につき再び証人として供述を求められることがないと明らかに認められるときは、この限りでない。
第66条
【評議】
1
第2条第1項の合議体における裁判員の関与する判断のための評議は、構成裁判官及び裁判員が行う。
2
裁判員は、
前項の評議に出席し、意見を述べなければならない。
3
裁判長は、必要と認めるときは、
第1項の評議において、裁判員に対し、構成裁判官の合議による法令の解釈に係る判断及び訴訟手続に関する判断を示さなければならない。
4
裁判員は、
前項の判断が示された場合には、これに従ってその職務を行わなければならない。
5
裁判長は、
第1項の評議において、裁判員に対して必要な法令に関する説明を丁寧に行うとともに、評議を裁判員に分かりやすいものとなるように整理し、裁判員が発言する機会を十分に設けるなど、裁判員がその職責を十分に果たすことができるように配慮しなければならない。
第67条
【評決】
1
前条第1項の評議における裁判員の関与する判断は、
裁判所法第77条の規定にかかわらず、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見による。
2
刑の量定について意見が分かれ、その説が各々、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見にならないときは、その合議体の判断は、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見になるまで、被告人に最も不利な意見の数を順次利益な意見の数に加え、その中で最も利益な意見による。
第68条
【構成裁判官による評議】
1
構成裁判官の合議によるべき判断のための評議は、構成裁判官のみが行う。
3
構成裁判官は、その合議により、裁判員に
第1項の評議の傍聴を許し、
第6条第2項各号に掲げる判断について裁判員の意見を聴くことができる。
第69条
【補充裁判員の傍聴等】
1
補充裁判員は、構成裁判官及び裁判員が行う評議並びに構成裁判官のみが行う評議であって裁判員の傍聴が許されたものを傍聴することができる。
2
構成裁判官は、その合議により、補充裁判員の意見を聴くことができる。
第70条
【評議の秘密】
1
構成裁判官及び裁判員が行う評議並びに構成裁判官のみが行う評議であって裁判員の傍聴が許されたものの経過並びにそれぞれの裁判官及び裁判員の意見並びにその多少の数(以下「評議の秘密」という。)については、これを漏らしてはならない。
第5章
区分審理決定がされた場合の審理及び裁判の特例等
第71条
【区分審理決定】
1
裁判所は、被告人を同じくする数個の対象事件の弁論を併合した場合又は
第4条第1項の決定に係る事件と対象事件の弁論を併合した場合において、併合した事件(以下「併合事件」という。)を一括して審判することにより要すると見込まれる審判の期間その他の裁判員の負担に関する事情を考慮し、その円滑な選任又は職務の遂行を確保するため特に必要があると認められるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、併合事件の一部を一又は二以上の被告事件ごとに区分し、この区分した一又は二以上の被告事件ごとに、順次、審理する旨の決定(以下「区分審理決定」という。)をすることができる。ただし、犯罪の証明に支障を生ずるおそれがあるとき、被告人の防御に不利益を生ずるおそれがあるときその他相当でないと認められるときは、この限りでない。
2
区分審理決定又は
前項の請求を却下する決定をするには、最高裁判所規則で定めるところにより、あらかじめ、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。
3
区分審理決定又は
第1項の請求を却下する決定に対しては、即時抗告をすることができる。
第72条
【区分審理決定の取消し及び変更】
1
裁判所は、被告人の主張、審理の状況その他の事情を考慮して、区分事件(区分審理決定により区分して審理することとされた一又は二以上の被告事件をいう。以下同じ。)ごとに審理することが適当でないと認めるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、区分審理決定を取り消す決定をすることができる。ただし、区分事件につき部分判決がされた後は、この限りでない。
2
裁判所は、被告人の主張、審理の状況その他の事情を考慮して、適当と認めるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、区分審理決定を変更する決定をすることができる。この場合においては、
前条第1項ただし書の規定を準用する。
3
前二項の決定又はこれらの項の請求を却下する決定をするには、最高裁判所規則で定めるところにより、あらかじめ、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。
第73条
【審理の順序に関する決定】
1
裁判所は、二以上の区分事件があるときは、決定で、区分事件を審理する順序を定めなければならない。
2
裁判所は、被告人の主張、審理の状況その他の事情を考慮して、適当と認めるときは、決定で、
前項の決定を変更することができる。
3
前二項の決定をするには、最高裁判所規則で定めるところにより、あらかじめ、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。
第74条
【構成裁判官のみで構成する合議体による区分事件の審理及び裁判】
裁判所は、区分事件に含まれる被告事件の全部が、対象事件に該当しないとき又は
刑事訴訟法第312条の規定により罰条が撤回若しくは変更されたため対象事件に該当しなくなったときは、構成裁判官のみで構成する合議体でその区分事件の審理及び裁判を行う旨の決定をすることができる。
第76条
【区分審理決定をした場合の補充裁判員に関する決定】
裁判所は、区分審理決定をした場合において、
第26条第1項に規定する必要な員数の補充裁判員を置く決定又は補充裁判員を置かない決定をするときは、各区分事件の審理及び裁判(以下「区分事件審判」という。)並びに
第86条第1項に規定する併合事件審判について、それぞれ、これをしなければならない。
第77条
【区分事件の審理における検察官等による意見の陳述】
1
区分事件の審理において、証拠調べが終わった後、検察官は、
次条第2項第1号及び
第3号から
第5号まで並びに
第3項各号に掲げる事項に係る事実及び法律の適用について意見を陳述しなければならない。
2
区分事件の審理において、証拠調べが終わった後、被告人及び弁護人は、当該区分事件について意見を陳述することができる。
3
区分事件の審理において、裁判所は、区分事件に含まれる被告事件に係る被害者参加人(
刑事訴訟法第316条の33第3項に規定する被害者参加人をいう。
第89条第1項において同じ。)又はその委託を受けた弁護士から、
第1項に規定する事項に係る事実又は法律の適用について意見を陳述することの申出がある場合において、審理の状況、申出をした者の数その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、公判期日において、
同項の規定による検察官の意見の陳述の後に、訴因として特定された事実の範囲内で、申出をした者がその意見を陳述することを許すものとする。
第78条
【部分判決】
1
区分事件に含まれる被告事件について、犯罪の証明があったときは、
刑事訴訟法第333条及び
第334条の規定にかかわらず、部分判決で有罪の言渡しをしなければならない。
2
部分判決で有罪の言渡しをするには、
刑事訴訟法第335条第1項の規定にかかわらず、次に掲げる事項を示さなければならない。
④
法律上犯罪の成立を妨げる理由となる事実に係る判断
⑤
法律上刑を減免し又は減免することができる理由となる事実に係る判断
3
部分判決で有罪の言渡しをする場合は、次に掲げる事項を示すことができる。
①
犯行の動機、態様及び結果その他の罪となるべき事実に関連する情状に関する事実
②
没収、追徴及び被害者還付の根拠となる事実並びにこれらに関する規定の適用に係る判断
5
第63条の規定は、
第1項の規定による部分判決の宣告をする場合について準用する。
第82条
【区分事件審判に関する公判調書】
1
区分事件審判に関する公判調書は、
刑事訴訟法第48条第3項の規定にかかわらず、各公判期日後速やかに、遅くとも当該区分事件についての部分判決を宣告するまでにこれを整理しなければならない。ただし、部分判決を宣告する公判期日の調書及び公判期日から部分判決を宣告する日までの期間が十日に満たない場合における当該公判期日の調書は、それぞれその公判期日後十日以内に、整理すれば足りる。
2
前項の公判調書に係る
刑事訴訟法第51条第1項の規定による異議の申立ては、
同条第2項の規定にかかわらず、遅くとも当該区分事件審判における最終の公判期日後十四日以内(
前項ただし書の規定により部分判決を宣告する公判期日後に整理された調書については、整理ができた日から十四日以内)にこれをしなければならない。
第83条
【公訴の取消し等の制限】
1
区分事件に含まれる被告事件についての公訴は、
刑事訴訟法第257条の規定にかかわらず、当該区分事件について部分判決の宣告があった後は、これを取り消すことができない。
2
刑事訴訟法第465条第1項の規定による正式裁判の請求があった被告事件について、区分審理決定があったときは、
同法第466条の規定にかかわらず、当該被告事件を含む区分事件について部分判決の宣告があった後は、当該請求を取り下げることができない。
3
前項の区分審理決定があった場合には、
同項の請求に係る略式命令は、
刑事訴訟法第469条の規定にかかわらず、当該被告事件について終局の判決があったときに、その効力を失う。
第84条
【区分事件審判における裁判員等の任務の終了】
区分事件審判に係る職務を行う裁判員及び補充裁判員の任務は、
第48条の規定にかかわらず、次の各号のいずれかに該当するときに終了する。
第85条
【区分事件の審理における公判手続の更新】
前条の規定により区分事件審判に係る職務を行う裁判員の任務が終了し、新たに
第2条第1項の合議体に他の区分事件審判に係る職務を行う裁判員が加わった場合には、
第61条第1項の規定にかかわらず、公判手続の更新は行わないものとする。
第86条
【併合事件審判】
1
裁判所は、すべての区分事件審判が終わった後、区分事件以外の被告事件の審理及び区分事件の審理(当該区分事件に含まれる被告事件に係る部分判決で示された事項に係るもの(
第3項の決定があった場合を除く。)を除く。)並びに併合事件の全体についての裁判(以下「併合事件審判」という。)をしなければならない。
2
裁判所は、
前項の規定により併合事件の全体についての裁判をする場合においては、部分判決がされた被告事件に係る当該部分判決で示された事項については、
次項の決定があった場合を除き、これによるものとする。
3
裁判所は、構成裁判官の合議により、区分事件の審理又は部分判決について
刑事訴訟法第377条各号、
第378条各号又は
第383条各号に掲げる事由があると認めるときは、職権で、その旨の決定をしなければならない。
附則
第1条
(施行期日)
この法律は、公布の日から起算して五年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
第2条
(施行前の措置等)
1
政府及び最高裁判所は、裁判員の参加する刑事裁判の制度が司法への参加についての国民の自覚とこれに基づく協力の下で初めて我が国の司法制度の基盤としての役割を十全に果たすことができるものであることにかんがみ、この法律の施行までの期間において、国民が裁判員として裁判に参加することの意義、裁判員の選任の手続、事件の審理及び評議における裁判員の職務等を具体的に分かりやすく説明するなど、裁判員の参加する刑事裁判の制度についての国民の理解と関心を深めるとともに、国民の自覚に基づく主体的な刑事裁判への参加が行われるようにするための措置を講じなければならない。
2
前条の政令を定めるに当たっては、前項の規定による措置の成果を踏まえ、裁判員の参加する刑事裁判が円滑かつ適正に実施できるかどうかについての状況に配慮しなければならない。
第3条
(環境整備)
国は、裁判員の参加する刑事裁判の制度を円滑に運用するためには、国民がより容易に裁判員として裁判に参加することができるようにすることが不可欠であることにかんがみ、そのために必要な環境の整備に努めなければならない。
第4条
(経過措置)
1
この法律の施行の際現に係属している事件については、第二条第一項及び第四条の規定は適用しない。この法律の施行前判決が確定した事件であってこの法律の施行後再審開始の決定が確定したものについても、同様とする。
2
前項の規定にかかわらず、裁判所は、この法律の施行の際現に係属している事件であってその弁論を対象事件の弁論と併合することが適当と認められるものについては、決定で、これを第二条第一項の合議体で取り扱うことができる。
3
裁判所は、前項の決定をした場合には、刑事訴訟法の規定により、当該決定に係る事件の弁論と当該対象事件の弁論とを併合しなければならない。
第5条
(調整規定)
1
この法律の施行の日が犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律の施行の日前となる場合には、同法の施行の日の前日までの間における第八十九条第一項の規定の適用については、同項中「、同条第二項の規定による被告人及び弁護人の意見の陳述並びに同法第三百十六条の三十八第一項の規定による区分事件に含まれる被告事件に係る被害者参加人又はその委託を受けた弁護士」とあるのは、「並びに同条第二項の規定による被告人及び弁護人」とする。
2
この法律の施行の日が犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律附則第一条第二号に掲げる規定の施行の日前となる場合には、同号に掲げる規定の施行の日の前日までの間における第六十五条第四項の規定の適用については、同項中「第三百五条第四項及び第五項」とあるのは、「第三百五条第三項及び第四項」とする。
第9条
(検討)
政府は、この法律の施行後三年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて、裁判員の参加する刑事裁判の制度が我が国の司法制度の基盤としての役割を十全に果たすことができるよう、所要の措置を講ずるものとする。
附則
平成17年11月7日
第1条
(施行期日)
この法律は、公布の日の属する月の翌月の初日(公布の日が月の初日であるときは、その日)から施行する。ただし、第二条、第三条、第五条及び第七条並びに附則第六条から第十五条まで及び第十七条から第三十二条までの規定は、平成十八年四月一日から施行する。
附則
平成17年11月7日
第1条
(施行期日)
この法律は、公布の日の属する月の翌月の初日(公布の日が月の初日であるときは、その日)から施行する。ただし、第二条並びに附則第八条から第十九条まで及び第二十一条から第二十五条までの規定は、平成十八年四月一日から施行する。
附則
平成18年5月31日
第1条
(施行期日)
この法律は、公布の日から起算して四月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
附則
平成18年12月22日
第1条
(施行期日)
この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、附則第三十二条第二項の規定は、公布の日から施行する。
附則
平成19年6月27日
第1条
(施行期日)
この法律は、公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、それぞれ当該各号に定める日から施行する。
第7条
(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部改正に伴う調整規定)
裁判員の参加する刑事裁判に関する法律等の一部を改正する法律の施行の日がこの法律の施行の日後となる場合には、前条のうち裁判員の参加する刑事裁判に関する法律第六十四条第一項の表の改正規定中「第六十四条第一項」とあるのは、「第六十四条」とする。
第9条
(検討等)
政府は、この法律の施行後三年を経過した場合において、この法律による改正後の規定の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
第10条
政府は、被害者参加人(第一条の規定による改正後の刑事訴訟法第三百十六条の三十三第三項に規定する被害者参加人をいう。以下同じ。)の委託を受けた弁護士の役割の重要性にかんがみ、資力の乏しい被害者参加人も弁護士の法的援助を受けられるようにするため、必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
附則
平成19年6月27日
第1条
(施行期日)
この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
附則
平成19年11月30日
第1条
(施行期日等)
この法律は、公布の日から施行する。ただし、第二条、第三条及び附則第六条から第十条までの規定は、平成二十年四月一日から施行する。
附則
平成19年11月30日
第1条
(施行期日等)
この法律は、公布の日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
附則
平成21年6月3日
第1条
(施行期日)
この法律は、平成二十二年三月三十一日までの間において政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。