障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律
平成24年8月22日 改正
第1条
【目的】
この法律は、障害者に対する虐待が障害者の尊厳を害するものであり、障害者の自立及び社会参加にとって障害者に対する虐待を防止することが極めて重要であること等に鑑み、障害者に対する虐待の禁止、障害者虐待の予防及び早期発見その他の障害者虐待の防止等に関する国等の責務、障害者虐待を受けた障害者に対する保護及び自立の支援のための措置、養護者の負担の軽減を図ること等の養護者に対する養護者による障害者虐待の防止に資する支援(以下「養護者に対する支援」という。)のための措置等を定めることにより、障害者虐待の防止、養護者に対する支援等に関する施策を促進し、もって障害者の権利利益の擁護に資することを目的とする。
第2条
【定義】
2
この法律において「障害者虐待」とは、養護者による障害者虐待、障害者福祉施設従事者等による障害者虐待及び使用者による障害者虐待をいう。
3
この法律において「養護者」とは、障害者を現に養護する者であって障害者福祉施設従事者等及び使用者以外のものをいう。
5
この法律において「使用者」とは、障害者を雇用する事業主(当該障害者が派遣労働者(
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律第2条第2号に規定する派遣労働者をいう。以下同じ。)である場合において当該派遣労働者に係る労働者派遣(
同条第1号に規定する労働者派遣をいう。)の役務の提供を受ける事業主その他これに類するものとして政令で定める事業主を含み、国及び地方公共団体を除く。以下同じ。)又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について事業主のために行為をする者をいう。
6
この法律において「養護者による障害者虐待」とは、次のいずれかに該当する行為をいう。
①
養護者がその養護する障害者について行う次に掲げる行為
イ
障害者の身体に外傷が生じ、若しくは生じるおそれのある暴行を加え、又は正当な理由なく障害者の身体を拘束すること。
ロ
障害者にわいせつな行為をすること又は障害者をしてわいせつな行為をさせること。
ハ
障害者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の障害者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
ニ
障害者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置、養護者以外の同居人によるイからハまでに掲げる行為と同様の行為の放置等養護を著しく怠ること。
②
養護者又は障害者の親族が当該障害者の財産を不当に処分することその他当該障害者から不当に財産上の利益を得ること。
7
この法律において「障害者福祉施設従事者等による障害者虐待」とは、障害者福祉施設従事者等が、当該障害者福祉施設に入所し、その他当該障害者福祉施設を利用する障害者又は当該障害福祉サービス事業等に係るサービスの提供を受ける障害者について行う次のいずれかに該当する行為をいう。
①
障害者の身体に外傷が生じ、若しくは生じるおそれのある暴行を加え、又は正当な理由なく障害者の身体を拘束すること。
②
障害者にわいせつな行為をすること又は障害者をしてわいせつな行為をさせること。
③
障害者に対する著しい暴言、著しく拒絶的な対応又は不当な差別的言動その他の障害者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
④
障害者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置、当該障害者福祉施設に入所し、その他当該障害者福祉施設を利用する他の障害者又は当該障害福祉サービス事業等に係るサービスの提供を受ける他の障害者による前三号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の障害者を養護すべき職務上の義務を著しく怠ること。
⑤
障害者の財産を不当に処分することその他障害者から不当に財産上の利益を得ること。
8
この法律において「使用者による障害者虐待」とは、使用者が当該事業所に使用される障害者について行う次のいずれかに該当する行為をいう。
①
障害者の身体に外傷が生じ、若しくは生じるおそれのある暴行を加え、又は正当な理由なく障害者の身体を拘束すること。
②
障害者にわいせつな行為をすること又は障害者をしてわいせつな行為をさせること。
③
障害者に対する著しい暴言、著しく拒絶的な対応又は不当な差別的言動その他の障害者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
④
障害者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置、当該事業所に使用される他の労働者による前三号に掲げる行為と同様の行為の放置その他これらに準ずる行為を行うこと。
⑤
障害者の財産を不当に処分することその他障害者から不当に財産上の利益を得ること。
第4条
【国及び地方公共団体の責務等】
1
国及び地方公共団体は、障害者虐待の予防及び早期発見その他の障害者虐待の防止、障害者虐待を受けた障害者の迅速かつ適切な保護及び自立の支援並びに適切な養護者に対する支援を行うため、関係省庁相互間その他関係機関及び民間団体の間の連携の強化、民間団体の支援その他必要な体制の整備に努めなければならない。
2
国及び地方公共団体は、障害者虐待の防止、障害者虐待を受けた障害者の保護及び自立の支援並びに養護者に対する支援が専門的知識に基づき適切に行われるよう、これらの職務に携わる専門的知識及び技術を有する人材その他必要な人材の確保及び資質の向上を図るため、関係機関の職員の研修等必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
3
国及び地方公共団体は、障害者虐待の防止、障害者虐待を受けた障害者の保護及び自立の支援並びに養護者に対する支援に資するため、障害者虐待に係る通報義務、人権侵犯事件に係る救済制度等について必要な広報その他の啓発活動を行うものとする。
第5条
【国民の責務】
国民は、障害者虐待の防止、養護者に対する支援等の重要性に関する理解を深めるとともに、国又は地方公共団体が講ずる障害者虐待の防止、養護者に対する支援等のための施策に協力するよう努めなければならない。
第6条
【障害者虐待の早期発見等】
1
国及び地方公共団体の障害者の福祉に関する事務を所掌する部局その他の関係機関は、障害者虐待を発見しやすい立場にあることに鑑み、相互に緊密な連携を図りつつ、障害者虐待の早期発見に努めなければならない。
2
障害者福祉施設、学校、医療機関、保健所その他障害者の福祉に業務上関係のある団体並びに障害者福祉施設従事者等、学校の教職員、医師、歯科医師、保健師、弁護士その他障害者の福祉に職務上関係のある者及び使用者は、障害者虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、障害者虐待の早期発見に努めなければならない。
3
前項に規定する者は、国及び地方公共団体が講ずる障害者虐待の防止のための啓発活動並びに障害者虐待を受けた障害者の保護及び自立の支援のための施策に協力するよう努めなければならない。
第2章
養護者による障害者虐待の防止、養護者に対する支援等
第7条
【養護者による障害者虐待に係る通報等】
1
養護者による障害者虐待(十八歳未満の障害者について行われるものを除く。以下この章において同じ。)を受けたと思われる障害者を発見した者は、速やかに、これを市町村に通報しなければならない。
2
刑法の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、
前項の規定による通報をすることを妨げるものと解釈してはならない。
第8条
市町村が
前条第1項の規定による通報又は
次条第1項に規定する届出を受けた場合においては、当該通報又は届出を受けた市町村の職員は、その職務上知り得た事項であって当該通報又は届出をした者を特定させるものを漏らしてはならない。
第9条
【通報等を受けた場合の措置】
1
市町村は、
第7条第1項の規定による通報又は障害者からの養護者による障害者虐待を受けた旨の届出を受けたときは、速やかに、当該障害者の安全の確認その他当該通報又は届出に係る事実の確認のための措置を講ずるとともに、
第35条の規定により当該市町村と連携協力する者(以下「市町村障害者虐待対応協力者」という。)とその対応について協議を行うものとする。
第10条
【居室の確保】
市町村は、養護者による障害者虐待を受けた障害者について
前条第2項の措置を採るために必要な居室を確保するための措置を講ずるものとする。
第11条
【立入調査】
1
市町村長は、養護者による障害者虐待により障害者の生命又は身体に重大な危険が生じているおそれがあると認めるときは、障害者の福祉に関する事務に従事する職員をして、当該障害者の住所又は居所に立ち入り、必要な調査又は質問をさせることができる。
2
前項の規定による立入り及び調査又は質問を行う場合においては、当該職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならない。
3
第1項の規定による立入り及び調査又は質問を行う権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
第12条
【警察署長に対する援助要請等】
1
市町村長は、
前条第1項の規定による立入り及び調査又は質問をさせようとする場合において、これらの職務の執行に際し必要があると認めるときは、当該障害者の住所又は居所の所在地を管轄する警察署長に対し援助を求めることができる。
2
市町村長は、障害者の生命又は身体の安全の確保に万全を期する観点から、必要に応じ適切に、
前項の規定により警察署長に対し援助を求めなければならない。
3
警察署長は、
第1項の規定による援助の求めを受けた場合において、障害者の生命又は身体の安全を確保するため必要と認めるときは、速やかに、所属の警察官に、
同項の職務の執行を援助するために必要な
警察官職務執行法その他の法令の定めるところによる措置を講じさせるよう努めなければならない。
第13条
【面会の制限】
養護者による障害者虐待を受けた障害者について
第9条第2項の措置が採られた場合においては、市町村長又は当該措置に係る障害者支援施設等若しくはのぞみの園の長若しくは当該措置に係る
身体障害者福祉法第18条第2項に規定する指定医療機関の管理者は、養護者による障害者虐待の防止及び当該障害者の保護の観点から、当該養護者による障害者虐待を行った養護者について当該障害者との面会を制限することができる。
第14条
【養護者の支援】
1
市町村は、
第32条第2項第2号に規定するもののほか、養護者の負担の軽減のため、養護者に対する相談、指導及び助言その他必要な措置を講ずるものとする。
2
市町村は、
前項の措置として、養護者の心身の状態に照らしその養護の負担の軽減を図るため緊急の必要があると認める場合に障害者が短期間養護を受けるために必要となる居室を確保するための措置を講ずるものとする。
第3章
障害者福祉施設従事者等による障害者虐待の防止等
第15条
【障害者福祉施設従事者等による障害者虐待の防止等のための措置】
障害者福祉施設の設置者又は障害福祉サービス事業等を行う者は、障害者福祉施設従事者等の研修の実施、当該障害者福祉施設に入所し、その他当該障害者福祉施設を利用し、又は当該障害福祉サービス事業等に係るサービスの提供を受ける障害者及びその家族からの苦情の処理の体制の整備その他の障害者福祉施設従事者等による障害者虐待の防止等のための措置を講ずるものとする。
第16条
【障害者福祉施設従事者等による障害者虐待に係る通報等】
1
障害者福祉施設従事者等による障害者虐待を受けたと思われる障害者を発見した者は、速やかに、これを市町村に通報しなければならない。
2
障害者福祉施設従事者等による障害者虐待を受けた障害者は、その旨を市町村に届け出ることができる。
3
刑法の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、
第1項の規定による通報(虚偽であるもの及び過失によるものを除く。
次項において同じ。)をすることを妨げるものと解釈してはならない。
4
障害者福祉施設従事者等は、
第1項の規定による通報をしたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いを受けない。
第17条
市町村は、
前条第1項の規定による通報又は
同条第2項の規定による届出を受けたときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該通報又は届出に係る障害者福祉施設従事者等による障害者虐待に関する事項を、当該障害者福祉施設従事者等による障害者虐待に係る障害者福祉施設又は当該障害者福祉施設従事者等による障害者虐待に係る障害福祉サービス事業等の事業所の所在地の都道府県に報告しなければならない。
第18条
市町村が
第16条第1項の規定による通報又は
同条第2項の規定による届出を受けた場合においては、当該通報又は届出を受けた市町村の職員は、その職務上知り得た事項であって当該通報又は届出をした者を特定させるものを漏らしてはならない。都道府県が
前条の規定による報告を受けた場合における当該報告を受けた都道府県の職員についても、同様とする。
第19条
【通報等を受けた場合の措置】
市町村が
第16条第1項の規定による通報若しくは
同条第2項の規定による届出を受け、又は都道府県が
第17条の規定による報告を受けたときは、市町村長又は都道府県知事は、障害者福祉施設の業務又は障害福祉サービス事業等の適正な運営を確保することにより、当該通報又は届出に係る障害者に対する障害者福祉施設従事者等による障害者虐待の防止並びに当該障害者の保護及び自立の支援を図るため、
社会福祉法、
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律その他関係法律の規定による権限を適切に行使するものとする。
第20条
【公表】
都道府県知事は、毎年度、障害者福祉施設従事者等による障害者虐待の状況、障害者福祉施設従事者等による障害者虐待があった場合に採った措置その他厚生労働省令で定める事項を公表するものとする。
第21条
【使用者による障害者虐待の防止等のための措置】
障害者を雇用する事業主は、労働者の研修の実施、当該事業所に使用される障害者及びその家族からの苦情の処理の体制の整備その他の使用者による障害者虐待の防止等のための措置を講ずるものとする。
第22条
【使用者による障害者虐待に係る通報等】
1
使用者による障害者虐待を受けたと思われる障害者を発見した者は、速やかに、これを市町村又は都道府県に通報しなければならない。
2
使用者による障害者虐待を受けた障害者は、その旨を市町村又は都道府県に届け出ることができる。
3
刑法の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、
第1項の規定による通報(虚偽であるもの及び過失によるものを除く。
次項において同じ。)をすることを妨げるものと解釈してはならない。
4
労働者は、
第1項の規定による通報又は
第2項の規定による届出(虚偽であるもの及び過失によるものを除く。)をしたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いを受けない。
第23条
市町村は、
前条第1項の規定による通報又は
同条第2項の規定による届出を受けたときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該通報又は届出に係る使用者による障害者虐待に関する事項を、当該使用者による障害者虐待に係る事業所の所在地の都道府県に通知しなければならない。
第24条
都道府県は、
第22条第1項の規定による通報、
同条第2項の規定による届出又は
前条の規定による通知を受けたときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該通報、届出又は通知に係る使用者による障害者虐待に関する事項を、当該使用者による障害者虐待に係る事業所の所在地を管轄する都道府県労働局に報告しなければならない。
第25条
市町村又は都道府県が
第22条第1項の規定による通報又は
同条第2項の規定による届出を受けた場合においては、当該通報又は届出を受けた市町村又は都道府県の職員は、その職務上知り得た事項であって当該通報又は届出をした者を特定させるものを漏らしてはならない。都道府県が
第23条の規定による通知を受けた場合における当該通知を受けた都道府県の職員及び都道府県労働局が
前条の規定による報告を受けた場合における当該報告を受けた都道府県労働局の職員についても、同様とする。
第26条
【報告を受けた場合の措置】
都道府県労働局が
第24条の規定による報告を受けたときは、都道府県労働局長又は労働基準監督署長若しくは公共職業安定所長は、事業所における障害者の適正な労働条件及び雇用管理を確保することにより、当該報告に係る障害者に対する使用者による障害者虐待の防止並びに当該障害者の保護及び自立の支援を図るため、当該報告に係る都道府県との連携を図りつつ、
労働基準法、
障害者の雇用の促進等に関する法律、
個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律その他関係法律の規定による権限を適切に行使するものとする。
第27条
【船員に関する特例】
船員法の適用を受ける船員である障害者について行われる使用者による障害者虐待に係る前三条の規定の適用については、
第24条中「厚生労働省令」とあるのは「国土交通省令又は厚生労働省令」と、「当該使用者による障害者虐待に係る事業所の所在地を管轄する都道府県労働局」とあるのは「地方運輸局その他の関係行政機関」と、
第25条中「都道府県労働局」とあるのは「地方運輸局その他の関係行政機関」と、
前条中「都道府県労働局が」とあるのは「地方運輸局その他の関係行政機関が」と、「都道府県労働局長又は労働基準監督署長若しくは公共職業安定所長」とあるのは「地方運輸局その他の関係行政機関の長」と、「
労働基準法」とあるのは「
船員法」とする。
第28条
【公表】
厚生労働大臣は、毎年度、使用者による障害者虐待の状況、使用者による障害者虐待があった場合に採った措置その他厚生労働省令で定める事項を公表するものとする。
第29条
【就学する障害者に対する虐待の防止等】
学校(
学校教育法第1条に規定する学校、
同法第124条に規定する専修学校又は
同法第134条第1項に規定する各種学校をいう。以下同じ。)の長は、教職員、児童、生徒、学生その他の関係者に対する障害及び障害者に関する理解を深めるための研修の実施及び普及啓発、就学する障害者に対する虐待に関する相談に係る体制の整備、就学する障害者に対する虐待に対処するための措置その他の当該学校に就学する障害者に対する虐待を防止するため必要な措置を講ずるものとする。
第30条
【保育所等に通う障害者に対する虐待の防止等】
第31条
【医療機関を利用する障害者に対する虐待の防止等】
医療機関(
医療法第1条の5第1項に規定する病院又は
同条第2項に規定する診療所をいう。以下同じ。)の管理者は、医療機関の職員その他の関係者に対する障害及び障害者に関する理解を深めるための研修の実施及び普及啓発、医療機関を利用する障害者に対する虐待に関する相談に係る体制の整備、医療機関を利用する障害者に対する虐待に対処するための措置その他の当該医療機関を利用する障害者に対する虐待を防止するため必要な措置を講ずるものとする。
第6章
市町村障害者虐待防止センター及び都道府県障害者権利擁護センター
第32条
【市町村障害者虐待防止センター】
1
市町村は、障害者の福祉に関する事務を所掌する部局又は当該市町村が設置する施設において、当該部局又は施設が市町村障害者虐待防止センターとしての機能を果たすようにするものとする。
2
市町村障害者虐待防止センターは、次に掲げる業務を行うものとする。
②
養護者による障害者虐待の防止及び養護者による障害者虐待を受けた障害者の保護のため、障害者及び養護者に対して、相談、指導及び助言を行うこと。
③
障害者虐待の防止及び養護者に対する支援に関する広報その他の啓発活動を行うこと。
第33条
【市町村障害者虐待防止センターの業務の委託】
1
市町村は、市町村障害者虐待対応協力者のうち適当と認められるものに、
前条第2項各号に掲げる業務の全部又は一部を委託することができる。
2
前項の規定による委託を受けた者若しくはその役員若しくは職員又はこれらの者であった者は、正当な理由なしに、その委託を受けた業務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
第34条
【市町村等における専門的に従事する職員の確保】
市町村及び
前条第1項の規定による委託を受けた者は、障害者虐待の防止、障害者虐待を受けた障害者の保護及び自立の支援並びに養護者に対する支援を適切に実施するために、障害者の福祉又は権利の擁護に関し専門的知識又は経験を有し、かつ、これらの事務に専門的に従事する職員を確保するよう努めなければならない。
第35条
【市町村における連携協力体制の整備】
市町村は、養護者による障害者虐待の防止、養護者による障害者虐待を受けた障害者の保護及び自立の支援並びに養護者に対する支援を適切に実施するため、
社会福祉法に定める福祉に関する事務所(以下「福祉事務所」という。)その他関係機関、民間団体等との連携協力体制を整備しなければならない。この場合において、養護者による障害者虐待にいつでも迅速に対応することができるよう、特に配慮しなければならない。
第36条
【都道府県障害者権利擁護センター】
1
都道府県は、障害者の福祉に関する事務を所掌する部局又は当該都道府県が設置する施設において、当該部局又は施設が都道府県障害者権利擁護センターとしての機能を果たすようにするものとする。
2
都道府県障害者権利擁護センターは、次に掲げる業務を行うものとする。
②
この法律の規定により市町村が行う措置の実施に関し、市町村相互間の連絡調整、市町村に対する情報の提供、助言その他必要な援助を行うこと。
③
障害者虐待を受けた障害者に関する各般の問題及び養護者に対する支援に関し、相談に応ずること又は相談を行う機関を紹介すること。
④
障害者虐待を受けた障害者の支援及び養護者に対する支援のため、情報の提供、助言、関係機関との連絡調整その他の援助を行うこと。
⑤
障害者虐待の防止及び養護者に対する支援に関する情報を収集し、分析し、及び提供すること。
⑥
障害者虐待の防止及び養護者に対する支援に関する広報その他の啓発活動を行うこと。
⑦
その他障害者に対する虐待の防止等のために必要な支援を行うこと。
第37条
【都道府県障害者権利擁護センターの業務の委託】
1
都道府県は、
第39条の規定により当該都道府県と連携協力する者(以下「都道府県障害者虐待対応協力者」という。)のうち適当と認められるものに、
前条第2項第1号又は
第3号から
第7号までに掲げる業務の全部又は一部を委託することができる。
2
前項の規定による委託を受けた者若しくはその役員若しくは職員又はこれらの者であった者は、正当な理由なしに、その委託を受けた業務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
3
第1項の規定により
第22条第1項の規定による通報又は
同条第2項に規定する届出の受理に関する業務の委託を受けた者が
同条第1項の規定による通報又は
同条第2項に規定する届出を受けた場合には、当該通報若しくは届出を受けた者又はその役員若しくは職員は、その職務上知り得た事項であって当該通報又は届出をした者を特定させるものを漏らしてはならない。
第38条
【都道府県等における専門的に従事する職員の確保】
都道府県及び
前条第1項の規定による委託を受けた者は、障害者虐待の防止、障害者虐待を受けた障害者の保護及び自立の支援並びに養護者に対する支援を適切に実施するために、障害者の福祉又は権利の擁護に関し専門的知識又は経験を有し、かつ、これらの事務に専門的に従事する職員を確保するよう努めなければならない。
第39条
【都道府県における連携協力体制の整備】
都道府県は、障害者虐待の防止、障害者虐待を受けた障害者の保護及び自立の支援並びに養護者に対する支援を適切に実施するため、福祉事務所その他関係機関、民間団体等との連携協力体制を整備しなければならない。
第40条
【周知】
市町村又は都道府県は、市町村障害者虐待防止センター又は都道府県障害者権利擁護センターとしての機能を果たす部局又は施設及び市町村障害者虐待対応協力者又は都道府県障害者虐待対応協力者の名称を明示すること等により、当該部局又は施設及び市町村障害者虐待対応協力者又は都道府県障害者虐待対応協力者を周知させなければならない。
第41条
【障害者虐待を受けた障害者の自立の支援】
国及び地方公共団体は、障害者虐待を受けた障害者が地域において自立した生活を円滑に営むことができるよう、居住の場所の確保、就業の支援その他の必要な施策を講ずるものとする。
第42条
【調査研究】
国及び地方公共団体は、障害者虐待を受けた障害者がその心身に著しく重大な被害を受けた事例の分析を行うとともに、障害者虐待の予防及び早期発見のための方策、障害者虐待があった場合の適切な対応方法、養護者に対する支援の在り方その他障害者虐待の防止、障害者虐待を受けた障害者の保護及び自立の支援並びに養護者に対する支援のために必要な事項についての調査及び研究を行うものとする。
第43条
【財産上の不当取引による被害の防止等】
1
市町村は、養護者、障害者の親族、障害者福祉施設従事者等及び使用者以外の者が不当に財産上の利益を得る目的で障害者と行う取引(以下「財産上の不当取引」という。)による障害者の被害について、相談に応じ、若しくは消費生活に関する業務を担当する部局その他の関係機関を紹介し、又は市町村障害者虐待対応協力者に、財産上の不当取引による障害者の被害に係る相談若しくは関係機関の紹介の実施を委託するものとする。
第44条
【成年後見制度の利用促進】
国及び地方公共団体は、障害者虐待の防止並びに障害者虐待を受けた障害者の保護及び自立の支援並びに財産上の不当取引による障害者の被害の防止及び救済を図るため、成年後見制度の周知のための措置、成年後見制度の利用に係る経済的負担の軽減のための措置等を講ずることにより、成年後見制度が広く利用されるようにしなければならない。
第46条
正当な理由がなく、
第11条第1項の規定による立入調査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は
同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をし、若しくは障害者に答弁をさせず、若しくは虚偽の答弁をさせた者は、三十万円以下の罰金に処する。
附則
第2条
(検討)
政府は、学校、保育所等、医療機関、官公署等における障害者に対する虐待の防止等の体制の在り方並びに障害者の安全の確認又は安全の確保を実効的に行うための方策、障害者を訪問して相談等を行う体制の充実強化その他の障害者虐待の防止、障害者虐待を受けた障害者の保護及び自立の支援、養護者に対する支援等のための制度について、この法律の施行後三年を目途として、児童虐待、高齢者虐待、配偶者からの暴力等の防止等に関する法制度全般の見直しの状況を踏まえ、この法律の施行状況等を勘案して検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
第4条
(調整規定)
この法律の施行の日が障害者基本法の一部を改正する法律の施行の日前である場合には、同法の施行の日の前日までの間における第二条第一項及び前条の規定による改正後の高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律第二条第六項の規定の適用については、これらの規定中「第二条第一号」とあるのは、「第二条」とする。
附則
平成24年4月6日
第1条
(施行期日)
この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
附則
平成24年6月27日
第1条
(施行期日)
この法律は、平成二十五年四月一日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
附則
平成24年8月22日
この法律は、子ども・子育て支援法の施行の日から施行する。