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  • 犯罪捜査規範

犯罪捜査規範

平成24年6月21日 改正
第1章
総則
第1節
捜査の心構え
第1条
【この規則の目的】
この規則は、警察官が犯罪の捜査を行うに当つて守るべき心構え、捜査の方法、手続その他捜査に関し必要な事項を定めることを目的とする。
第2条
【捜査の基本】
捜査は、事案の真相を明らかにして事件を解決するとの強固な信念をもつて迅速適確に行わなければならない。
捜査を行うに当つては、個人の基本的人権を尊重し、かつ、公正誠実に捜査の権限を行使しなければならない。
第3条
【法令等の厳守】
捜査を行うに当たつては、警察法刑事訴訟法(以下「刑訴法」という。)その他の法令及び規則を厳守し、個人の自由及び権利を不当に侵害することのないように注意しなければならない。
第4条
【合理捜査】
捜査を行うに当たつては、証拠によつて事案を明らかにしなければならない。
捜査を行うに当たつては、先入観にとらわれず、根拠に基づかない推測を排除し、被疑者その他の関係者の供述を過信することなく、基礎的捜査を徹底し、物的証拠を始めとするあらゆる証拠の発見収集に努めるとともに、鑑識施設及び資料を十分に活用して、捜査を合理的に進めるようにしなければならない。
第5条
【総合捜査】
捜査を行うに当つては、すべての情報資料を総合して判断するとともに、広く知識技能を活用し、かつ、常に組織の力により、捜査を総合的に進めるようにしなければならない。
第6条
【着実な捜査】
捜査は、安易に成果を求めることなく、犯罪の規模、方法その他諸般の状況を冷静周密に判断し、着実に行わなければならない。
第7条
【公訴、公判への配慮】
捜査は、それが刑事手続の一環であることにかんがみ、公訴の実行及び公判の審理を念頭に置いて、行わなければならない。特に、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律第2条第1項に規定する事件に該当する事件の捜査を行う場合は、国民の中から選任された裁判員に分かりやすい立証が可能となるよう、配慮しなければならない。
第8条
【規律と協力】
捜査を行うに当たつては、自己の能力を過信して独断に陥ることなく、上司から命ぜられた事項を忠実に実行し、常に警察規律を正しくし、協力一致して事案に臨まなければならない。
第9条
【秘密の保持等】
捜査を行うに当たつては、秘密を厳守し、捜査の遂行に支障を及ぼさないように注意するとともに、被疑者、被害者(犯罪により害を被つた者をいう。以下同じ。)その他事件の関係者の名誉を害することのないように注意しなければならない。
捜査を行うに当たつては、前項の規定により秘密を厳守するほか、告訴、告発、犯罪に関する申告その他犯罪捜査の端緒又は犯罪捜査の資料を提供した者(第11条(被害者等の保護等)第2項において「資料提供者」という。)の名誉又は信用を害することのないように注意しなければならない。
第10条
【関係者に対する配慮】
捜査を行うに当つては、常に言動を慎み、関係者の利便を考慮し、必要な限度をこえて迷惑を及ぼさないように注意しなければならない。
第10条の2
【被害者等に対する配慮】
捜査を行うに当たつては、被害者又はその親族(以下この節において「被害者等」という。)の心情を理解し、その人格を尊重しなければならない。
捜査を行うに当たつては、被害者等の取調べにふさわしい場所の利用その他の被害者等にできる限り不安又は迷惑を覚えさせないようにするための措置を講じなければならない。
第10条の3
【被害者等に対する通知】
捜査を行うに当たつては、被害者等に対し、刑事手続の概要を説明するとともに、当該事件の捜査の経過その他被害者等の救済又は不安の解消に資すると認められる事項を通知しなければならない。ただし、捜査その他の警察の事務若しくは公判に支障を及ぼし、又は関係者の名誉その他の権利を不当に侵害するおそれのある場合は、この限りでない。
第11条
【被害者等の保護等】
警察官は、犯罪の手口、動機及び組織的背景、被疑者と被害者等との関係、被疑者の言動その他の状況から被害者等に後難が及ぶおそれがあると認められるときは、被疑者その他の関係者に、当該被害者等の氏名又はこれらを推知させるような事項を告げないようにするほか、必要に応じ、当該被害者等の保護のための措置を講じなければならない。
前項の規定は、資料提供者に後難が及ぶおそれがあると認められる場合について準用する。
参照条文
第12条
【研究と工夫】
警察官は、捜査専従員であると否とを問わず、常に捜査関係法令の研究および捜査に関する知識技能の習得に努め、捜査方法の工夫改善に意を用いなければならない。
第13条
【備忘録】
警察官は、捜査を行うに当り、当該事件の公判の審理に証人として出頭する場合を考慮し、および将来の捜査に資するため、その経過その他参考となるべき事項を明細に記録しておかなければならない。
第14条
【捜査の回避】
警察官は、被疑者、被害者その他事件の関係者と親族その他特別の関係にあるため、その捜査について疑念をいだかれるおそれのあるときは、上司の許可を得て、その捜査を回避しなければならない。
第2節
捜査の組織
第15条
【捜査の組織的運営】
捜査を行うに当つては、捜査に従事する者の団結と統制を図り、他の警察諸部門および関係警察と緊密に連絡し、警察の組織的機能を最高度に発揮するように努めなければならない。
第16条
【警察本部長】
警察本部長(警視総監または道府県警察本部長をいう。以下同じ。)は、捜査の合理的な運営と公正な実施を期するため、犯罪の捜査について、全般の指揮監督に当るとともに、職員の合理的配置、その指導教養の徹底、資材施設の整備等捜査態勢の確立を図り、もつてその責に任ずるものとする。
第17条
【捜査担当部課長】
刑事部長、警備部長その他犯罪の捜査を担当する部課長は、警察本部長を補佐し、その命を受け犯罪の捜査の指揮監督に当るものとする。
第18条
【警察署長】
警察署長は、その警察署に関し、犯罪の捜査の指揮監督に当るとともに、捜査の合理的な運営と公正な実施について、警察本部長に対しその責に任ずるものとする。
第19条
【捜査指揮】
前三条に規定する犯罪の捜査の指揮については、常にその責任を明らかにしておかなければならない。
警察本部長または警察署長が直接指揮すべき事件および事項ならびに指揮の方法その他事件指揮簿の様式等は、警察本部長の定めるところによる。
第20条
【捜査主任官】
警察本部長又は警察署長は、当該事件の捜査につき、捜査主任官を指名するものとする。
捜査主任官は、第16条から前条まで(警察本部長、捜査担当部課長、警察署長、捜査指揮)の規定により指揮を受け、当該事件の捜査につき、次に掲げる職務を行うものとする。
捜査すべき事項及び捜査員の任務分担を定めること。
押収物及びその換価代金の出納を承認し、これらの保管の状況を常に把握すること。
第3章第5節(捜査方針)の規定により捜査方針を立てること。
捜査員に対し、捜査の状況に関し報告を求めること。
留置施設に留置されている被疑者(第136条の2(引き当たり捜査の際の注意)第1項において「留置被疑者」という。)に関し同項の計画を作成する場合において、留置主任官(被留置者の留置に関する規則第4条第1項に規定する留置主任官をいう。第136条の2第1項において同じ。)と協議すること。
被疑者の取調べその他の捜査の適正な遂行並びに被疑者の逃亡及び自殺その他の事故の防止について捜査員に対する指導教養を行うこと。
前各号に掲げるもののほか、法令の規定によりその権限に属させられ、又は警察本部長若しくは警察署長から特に命ぜられた事項
警察本部長又は警察署長は、第1項の規定により捜査主任官を指名する場合には、当該事件の内容並びに所属の職員の捜査能力、知識経験及び職務遂行の状況を勘案し、前項に規定する職務を的確に行うことができると認められる者を指名しなければならない。
捜査主任官が交代する場合には、関係書類、証拠物等の引継ぎを確実に行うとともに、捜査の状況その他必要な事項を明らかにし、事後の捜査に支障を来すことのないようにしなければならない。
第21条
【捜査員】
警察官は、上司の命を受け、犯罪の捜査に従事する。
警察官以外の捜査関係職員が、警察官を助けて職務を行う場合には、この規則の規定に従わなければならない。
第22条
【捜査本部】
重要犯罪その他事件の発生に際し、特に、捜査を統一的かつ強力に推進する必要があると認められるときは、捜査本部を設置するものとする。
捜査本部の設置及び解散並びに捜査本部の長及び編成は、警察本部長が命ずる。
捜査本部長は、命を受け、捜査本部に所属する職員を指揮監督する。
捜査本部を設置した事件の捜査については、すべて捜査本部長の統制に従うものとし、他の警察署において当該事件に関する捜査資料を得たときは、速やかに捜査本部に連絡しなければならない。
第23条
【報告】
警察官は、犯罪に関係があると認められる事項その他捜査上参考となるべき事項を知つたときは、速やかに、上司に報告しなければならない。
警察署長は、その管轄区域において発生した事件その他捜査上参考となるべき事項のうち重要なものについては、速やかに、警察本部長に報告しなければならない。
第24条
【他の機関との連絡等】
警察官は、検察官または他の捜査機関との捜査に関する連絡または協力については、あらかじめ順序を経て警察本部長または警察署長に報告して、その指揮を受けなければならない。
第25条
【新聞発表等】
捜査に関し、新聞その他の報道機関等に発表を行うときは、警察本部長若しくは警察署長(捜査本部を設置した場合においては捜査本部長)又はその指定する者がこれに当たらなければならない。
第26条
【指導教養】
犯罪の捜査に関する指導教養は、幹部、専従員および一般警察官の別に応じ、実務に即して行い、その実効を期さなければならない。
第3節
手配および共助
第27条
【一般的協力義務】
警察官は、別に定がある場合のほか、この節の規定するところに従い、捜査に関し、相互に協力しなければならない。
第28条
【共助の依頼】
捜査のため必要があるときは、他の警察に対し、共助の依頼(被疑者の逮捕、呼出し若しくは取調べ、盗品等(盗品その他財産に対する罪に当たる行為によつて領得された物をいう。以下同じ。)その他の証拠物の手配、押収、捜索若しくは検証、参考人の呼出し若しくは取調べ、職員の派遣その他の措置を依頼することをいう。以下同じ。)をすることができる。
他の警察から、共助の依頼を受けたときは、誠実かつ速やかにこれに当たらなければならない。
共助の依頼をするに当たつては、依頼の趣旨、内容その他の必要な事項を明確にし、及び依頼を受けた警察の事務の遂行に支障を及ぼさないようにしなければならない。
第29条
【緊急事件手配】
犯罪の捜査につき、他の警察に対して緊急の措置を依頼する必要があるときは、直ちに、緊急事件手配書(別記様式第1号)により、緊急配備その他の必要な措置を求めるものとする。
参照条文
第30条
【事件手配】
容疑者および捜査資料その他参考事項について通報を求める手配を、事件手配とする。
事件手配は、事件の概要および通報を求める事項を明らかにして行わなければならない。
参照条文
第31条
【指名手配】
逮捕状の発せられている被疑者の逮捕を依頼し、逮捕後身柄の引渡しを要求する手配を、指名手配とする。
指名手配は、指名手配書(別記様式第2号)により行わなければならない。
急速を要し逮捕状の発付を受けるいとまのないときは、指名手配書による手配を行つた後、速やかに逮捕状の発付を得て、その有効期間を通報しなければならない。
第29条(緊急事件手配)の規定による緊急事件手配により、氏名等の明らかな被疑者の逮捕を依頼した場合には、当該緊急事件手配を指名手配とみなす。この場合においては、逮捕状の発付を得た後、改めて第1項の規定による手続をとるものとする。
参照条文
第32条
【指名手配の種別】
指名手配を行うに当つては、被疑者を逮捕した場合における身柄の処置につき、次のいずれであるかを明らかにしなければならない。
第一種手配(身柄の護送を求める場合の手配をいう。)
第二種手配(身柄を引取に行く場合の手配をいう。)
指名手配は、原則として第一種手配によるものとする。
第33条
【指名手配の継続】
指名手配をした場合においては、常に逮捕状の有効期間に注意し、有効期間経過後もなお手配継続の必要があるものについては、逮捕状の再発付を受け、その有効期間を通報しなければならない。
第34条
【指名通報】
被疑者が発見された場合に身柄の引渡を求めず、かつ、その事件の処理を当該警察にゆだねる旨の手配を、指名通報とする。
指名通報は、被疑者の氏名等が明らかであり、かつ、犯罪事実が確実なものについて、指名通報書(別記様式第2号)により行わなければならない。
指名通報のあつた事件については、あらかじめ、通報を発した警察に、逮捕状の有無、容疑事実の内容、関係書類その他の捜査資料の有無等を照会して処理するものとする。
指名通報を行つた被疑者については、事件処理に必要な証拠資料、関係書類等を完全に整備しておき、被疑者を発見した警察から要求があつたときは、すみやかに、第78条(事件の移送および引継)第2項の規定による事件引継書とともに証拠資料、関係書類等を、その警察に送付しなければならない。
参照条文
第35条
【盗品等手配】
警察が、その捜査中の事件の盗品等につき、他の警察に対してその発見を求める手配を、盗品等手配とする。
盗品等手配を行うに当たつては、発見すべき盗品等の名称、銘柄、品種、特徴等を明らかにすることに努め、必要があるときは、写真を添付する等有効適切な措置を講じなければならない。
参照条文
第36条
【品触れ】
古物営業法第19条第1項若しくは第3項又は質屋営業法第21条第1項に規定する品触れ(以下「品触れ」という。)は、これを次の三種に区分するものとする。
特別重要品触れ(捜査本部に係る事件について発する品触れをいう。)
重要品触れ(前号の事件以外の重要な事件について発する品触れをいう。)
普通品触れ(その他の事件について発する品触れをいう。)
品触れは、前項の区分を明らかにして発しなければならない。
前条第2項の規定は、品触れについて準用する。
品触れを発したときは、品触原簿(別記様式第3号)及び品触取扱簿(別記様式第4号)により、それぞれ、その状況を明確にしておかなければならない。
第37条
【手配等の適正】
第29条(緊急事件手配)、第30条(事件手配)、第31条(指名手配)、第34条(指名通報)及び第35条(盗品等手配)に規定する手配又は通報については、その実効を期するため、犯罪の種別、軽重、緊急の度合い等に応じ、手配の範囲、種別及び方法を合理的に定め、いやしくも、濫用にわたることのないように注意しなければならない。
第38条
【手配等の解除】
第29条(緊急事件手配)、第30条(事件手配)、第31条(指名手配)、第34条(指名通報)及び第35条(盗品等手配)に規定する手配又は通報に係る事件について、被疑者を逮捕し、又は事件を解決したときは、速やかに、かつ、確実に、その手配又は通報の解除を行わなければならない。
逮捕状の有効期間が経過し、逮捕状の再発付を受けない場合も、また、前項と同様とする。
前二項のほか、共助の依頼をし、又は品触を発した場合において、その必要がなくなつたときは、第1項の規定に準じ、必要な手続をとらなければならない。
第39条
【参考通報】
警察署長は、他の警察に関連する犯罪事件について、その被疑者、証拠物その他捜査上参考となるべき事項を発見したときは、直ちに、適当な措置をとるとともに、その旨を当該警察に通報しなければならない。
警察署長は、前項の通報のほか、重要事件、他に波及するおそれのある事件その他犯罪の捜査または予防上参考となるべき事件について、関係警察に通報するものとする。
第40条
【本部長への報告】
警察署長は、第29条(緊急事件手配)、第30条(事件手配)、第31条(指名手配)、第34条(指名通報)及び第35条(盗品等手配)の規定による手配又は通報をする場合においては、原則として、あらかじめ警察本部長に報告した後、直接に、又は警察本部長を通じて行わなければならない。
第41条
【身柄引渡しの原則】
指名手配のあつた被疑者を逮捕した警察(以下「逮捕警察」という。)は、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、被疑者の身柄をその指名手配をした警察(以下「手配警察」という。)に引渡さなければならない。
逮捕警察が、手配を受けた犯罪より法定刑が重い別の犯罪をその管轄区域において犯した被疑者を逮捕したとき。
逮捕警察が、手配を受けた犯罪と法定刑が同等以上の別の犯罪で手配をしていた被疑者を逮捕したとき。
逮捕警察が、手配被疑者に関連する犯罪で、既にその正犯又は共同正犯である被疑者の一部を逮捕しているとき。
同一被疑者について、二以上の手配警察がある場合には、次の各号に定める手配警察にその身柄を引き渡さなければならない。
手配を受けた犯罪について、その法定刑に軽重があるとき(次号に規定する場合に該当する場合を除く。)は、重い犯罪を手配した警察
手配を受けた犯罪で、既にその正犯又は共同正犯である被疑者の一部を逮捕している警察があるときはその警察
前二号に規定する場合のほかは、先に手配をした警察
前二項に規定する身柄引渡しの原則により難い事情があるときは、警察本部長の決するところによる。
第42条
【被疑者引渡書】
指名手配により逮捕した被疑者の身柄を引き渡すに当たつては、被疑者引渡書(別記様式第5号)を作成しなければならない。
第43条
【留置の依頼】
被疑者の護送その他犯罪の捜査のため必要があるときは、他の警察に対し、被疑者の留置の依頼をすることができる。
第44条
【他の警察の管轄区域における捜査に係る連絡】
警察官は、他の警察の管轄区域において犯罪の捜査を行うに当たつては、所轄警察に連絡するようにしなければならない。
第4節
検察官との関係
第45条
【捜査に関する協力】
警察官は、捜査に関し、検察官と互に協力しなければならない。
警察本部長または警察署長は、その捜査する事件について、公訴を実行するため、あらかじめ連絡しておく必要があると認めるときは、すみやかに、犯罪事実の概要その他の参考となるべき事項を検察官に連絡しなければならない。
第46条
【一般的指示】
警察官は、司法警察職員捜査書類基本書式例その他の刑訴法第193条第1項の規定に基づき検察官から示された一般的指示があるときは、これに従つて捜査を行わなければならない。
第47条
【捜査調整の申出】
警察官は、他の司法警察職員との間において捜査の調整につき、刑訴法第193条第2項の規定による検察官の一般的指揮を必要とする特別の事情があるときは、すみやかに順を経て警察本部長に報告しなければならない。
警察本部長は、前項に規定する報告を受けた場合において、必要があると認められるときは、すみやかに、その旨を検察官に申し出なければならない。
第48条
【一般的指揮】
刑訴法第193条第2項の規定に基き、検察官から一般的指揮が与えられたときは、警察官はこれに従つて捜査を行わなければならない。
第49条
【補助のための指揮】
刑訴法第193条第3項の規定により検察官が自ら捜査する犯罪について、その補助を求められたときは、警察官はすみやかに、これに従つて必要な捜査を行い、かつ、その結果を報告しなければならない。
第5節
特別司法警察職員等との関係
第50条
【共助の原則】
刑訴法第190条の規定により別に法律で定められた司法警察職員またはこれに準ずる者(以下「特別司法警察職員等」という。)との共助に関しては、共助協定その他の特別の定があるときはその規定するところによるほか、この節の規定によるものとする。
第51条
【自ら捜査する場合】
警察官は、特別司法警察職員等の職務の範囲に属する犯罪を特別司法警察職員等に先んじて知つた場合において、その捜査を特別司法警察職員等にゆだねることなく、自ら捜査することを適当と認めるときは、警察本部長または警察署長に報告して、その指揮を受け、捜査するものとする。この場合においては、当該特別司法警察職員等と連絡を密にし、その専門的知識による助言等を受けたときは、充分これを尊重して捜査を行うようにしなければならない。
第52条
【捜査をゆだねる場合】
警察官は、特別司法警察職員等の職務の範囲に属する犯罪を特別司法警察職員等に先んじて知つた場合において、その捜査を特別司法警察職員等にゆだねることを適当と認めるときは、自ら急速を要する処置を行つた後、警察本部長または警察署長に報告して、その指揮を受け、すみやかに必要な捜査資料を添えて、これを特別司法警察職員等に移すものとする。
前項の規定により、捜査をゆだねた後においても、当該特別司法警察職員等から捜査のために協力を求められた場合においては、できる限り、これに応じて協力するものとする。
第53条
【引継を受けた場合】
警察官は、特別司法警察職員等が、その職務の範囲に属する犯罪を捜査する場合において、その事件が職務の範囲に属しない犯罪事件と関連するため、またはその他の理由により、警察官にその捜査を引き継ぐべき旨の申出を受けたときは、警察本部長または警察署長に報告して、その指揮を受け、自らもその捜査を行うものとする。この場合において、必要があるときは、当該特別司法警察職員等に対し、証拠物の引渡その他捜査のための協力を求めるとともに、事後の捜査の経過および結果を連絡するものとする。
第54条
【捜査が競合する場合】
警察官は、特別司法警察職員等の職務の範囲に属する犯罪を捜査する場合において、その捜査が当該特別司法警察職員等の行う捜査と競合するときは、警察本部長または警察署長に報告して、その指揮を受け、当該特別司法警察職員等とその捜査に関し、必要な事項を協議するものとする。
第6節
捜査書類
第55条
【捜査書類の作成】
捜査を行うに当つては、司法警察職員捜査書類基本書式例による調書その他必要な書類を明確に作成しなければならない。
書類の作成に当つては、事実をありのままに、かつ、簡潔明瞭に表現することを旨とし、推測、誇張等にわたつてはならない。
第56条
【署名・押印等】
書類には、特別の定がある場合を除いては、年月日を記載して署名押印し、所属官公署を表示しなければならない。
押印は、原則として認印をもつてするものとする。
書類(裁判所又は裁判官に対する申立て、意見の陳述、通知その他これらに類する訴訟行為に関する書類を除く。)には、毎葉に契印するものとする。ただし、その謄本又は抄本を作成する場合には、契印に代えて、これに準ずる措置をとることができる。
書類の余白または空白には、斜線を引き押印するものとする。
第57条
【文字の加除】
書類を作成するに当たつては、文字を改変してはならない。文字を加え、又は削るときは、その範囲を明らかにして、訂正した部分に押印しなければならない。ただし、削つた部分は、これを読むことができるように字体を残さなければならない。
第58条
【書類の代書】
本人が文盲である等やむを得ない理由で書類を代書した場合には、代書事項が本人の意思と相違がないことを確かめた上、代書の理由を記載して署名押印しなければならない。
第2章
捜査の端緒
第1節
端緒のは握
第59条
【端緒の把握の努力】
警察官は、新聞紙その他の出版物の記事、インターネットを利用して提供される情報、匿名の申告、風説その他広く社会の事象に注意するとともに、警ら、職務質問等の励行により、進んで捜査の端緒を得ることに努めなければならない。
第60条
【手配の有無等の照会】
職務質問に当り、必要があると認められるときは、直ちに、指名手配その他の手配または通報の有無、被害届の有無、鑑識資料の有無等を、電話その他適当な方法により、警視庁もしくは道府県警察本部または警察署に照会しなければならない。
第61条
【被害届の受理】
警察官は、犯罪による被害の届出をする者があつたときは、その届出に係る事件が管轄区域の事件であるかどうかを問わず、これを受理しなければならない。
前項の届出が口頭によるものであるときは、被害届(別記様式第6号)に記入を求め又は警察官が代書するものとする。この場合において、参考人供述調書を作成したときは、被害届の作成を省略することができる。
第62条
【犯罪事件受理簿】
犯罪事件を受理したときは、警察庁長官(以下「長官」という。)が定める様式の犯罪事件受理簿に登載しなければならない。
第2節
告訴、告発および自首
第63条
【告訴、告発および自首の受理】
司法警察員たる警察官は、告訴、告発または自首をする者があつたときは、管轄区域内の事件であるかどうかを問わず、この節に定めるところにより、これを受理しなければならない。
司法巡査たる警察官は、告訴、告発または自首をする者があつたときは、直ちに、これを司法警察員たる警察官に移さなければならない。
第64条
【自首調書、告訴調書および告発調書等】
自首を受けたときまたは口頭による告訴もしくは告発を受けたときは、自首調書または告訴調書もしくは告発調書を作成しなければならない。
告訴または告発の口頭による取消しを受けたときは、告訴取消調書または告発取消調書を作成しなければならない。
第65条
【書面による告訴および告発】
書面による告訴または告発を受けた場合においても、その趣旨が不明であるときまたは本人の意思に適合しないと認められるときは、本人から補充の書面を差し出させ、またはその供述を求めて参考人供述調書(補充調書)を作成しなければならない。
第66条
【被害者以外の者の告訴】
被害者の委任による代理人から告訴を受ける場合には、委任状を差し出させなければならない。
被害者以外の告訴権者から告訴を受ける場合には、その資格を証する書面を差し出させなければならない。
被害者以外の告訴権者の委任による代理人から告訴を受ける場合には、前二項の書面をあわせ差し出させなければならない。
前三項の規定は、告訴の取消を受ける場合について準用する。
第67条
【告訴事件および告発事件の捜査】
告訴または告発があつた事件については、特にすみやかに捜査を行うように努めるとともに、次に掲げる事項に注意しなければならない。
ぶ告、中傷を目的とする虚偽または著しい誇張によるものでないかどうか。
当該事件の犯罪事実以外の犯罪がないかどうか。
第68条
【自首事件の捜査】
自首のあつた事件について捜査を行うに当つては、次に掲げる事項に注意しなければならない。
当該犯罪または犯人が既に発覚していたものでないかどうか。
自首が当該事件について他に存する真犯人を隠すためのものでないかどうか。
自首者が、自己が犯した他の犯罪を隠すために、ことさらに当該事件につき自首したものでないかどうか。
第69条
【事件の移送】
警察本部長または警察署長は、告訴または告発のあつた事件が、管轄区域外の犯罪であるため当該警察においてこれを処理することができないとき、またはこれを処理することが適当でないと認められるときは、関係警察に対してすみやかに移送の手続をとらなければならない。
前項の規定による移送をしたときは、すみやかに、告訴人または告発人にその移送先を通知しなければならない。
第70条
【親告罪の要急捜査】
警察官は、親告罪に係る犯罪があることを知つた場合において、直ちにその捜査を行わなければ証拠の収集その他事後における捜査が著しく困難となるおそれがあると認めるときは、未だ告訴がない場合においても、捜査しなければならない。この場合においては、被害者またはその家族の名誉、信用等を傷つけることのないよう、特に注意しなければならない。
第71条
【親告罪の告訴取消の場合の処置】
親告罪に係る犯罪につき捜査を行い、事件を検察官に送付した後、告訴人から告訴の取消を受けたときは、直ちに、その旨を検察官に通知し、必要な書類を追送しなければならない。
第72条
【請求事件の捜査】
請求をまつて論ずる犯罪については、直ちにその捜査を行わなければ証拠の収集その他事後における捜査が著しく困難となると認められる場合を除いては、請求があつてから、捜査するものとする。
第73条
【犯則事件の通知等】
国税犯則取締法関税法地方税法その他の法律により通告処分の認められている犯則事件のあることを知つたときは、警察本部長又は警察署長に報告してその指揮を受け、速やかに、その旨を当該事件につき調査の権限を有する官吏又は吏員(以下「収税官吏等」という。)に通知するものとする。
収税官吏等から、調査のため臨検、捜索又は差押えを行うに当たり、援助の要求を受けたときは、必要な援助をしなければならない。
第74条
【犯則事件の告発】
犯則事件について収税官吏等から告発を受けたときは、その捜査を行わなければならない。この場合においても、常に収税官吏等と緊密に連絡をとるものとする。
第75条
【犯則事件の要急捜査】
犯則事件について、直ちにその捜査を行わなければ証拠の収集その他事後における捜査が著しく困難となるおそれがあると認められるときは、未だ収税官吏等の告発がない場合においても、捜査し、その結果を収税官吏等に通知しなければならない。
第3章
捜査の開始
第1節
捜査の着手
第76条
【着手報告】
警察官は、犯罪があると思料するときは、捜査の着手に先だち、順を経て、警察本部長または警察署長に報告し、その指揮を受けなければならない。ただし、急速を要する場合においては、必要な処置を行つた後、すみやかに報告するものとする。
第77条
【着手に関する判断】
捜査の着手については、犯罪の軽重および情状、犯人の性格、事件の波及性および模倣性、捜査の緩急等諸般の事情を判断し、捜査の時期または方法を誤らないように注意しなければならない。
第78条
【事件の移送及び引継ぎ】
警察本部長又は警察署長は、管轄権のない事件又は当該警察において捜査することが適当でないと認められる事件については、速やかにこれを犯罪地又は被疑者の住居地を管轄する警察その他の適当な警察に移送又は引継ぎしなければならない。
前項の規定による移送又は引継ぎは、事件引継書(別記様式第5号)により行わなければならない。
参照条文
第2節
捜査資料
第79条
【資料の組織的収集等】
捜査資料の収集は、捜査専従員のみによつて行われるのでなく、全警察職員の組織的な活動によつて行われるよう努めなければならない。
前項の規定により収集した捜査資料及びその写しは、適切に管理しなければならない。
第1項の規定により収集された捜査資料及びその写しを保管する必要がなくなつたときは、還付すべきものを除き、これらを確実に破棄しなければならない。
前二項の規定により、保管し、又は破棄される捜査資料が電磁的記録をもつて作成されたものである場合は、電磁的記録の特性を踏まえ、当該電磁的記録に記録された情報が漏えいしないための的確な措置を講じなければならない。
第80条
【基礎資料の整備】
捜査に資するため、広く犯罪に関係ある社会的諸事情、犯罪を犯すおそれのある者その他捜査上注意を要すると認められる者の動向等捜査に必要な基礎資料は、常に収集整備しておかなければならない。
第81条
【資料に基く捜査】
捜査を行うに当つては、犯罪に関する有形または無形の資料、内偵による資料その他諸般の情報等確実な資料を収集し、これに基いて捜査を進めなければならない。特に被疑者の逮捕その他の強制処分を行うに当つては、事前にできる限り多くの確実な資料を収集しておかなければならない。
第82条
【鑑識資料の収集整備及び利用】
指掌紋、手口、写真その他の鑑識資料は、常に収集整備することに努め、捜査を行うに当たつては、それらの多角的利用を図らなければならない。
第83条
【参考資料の収集活用】
捜査を行つたときは、そのつど捜査の過程に反省検討を加え、これによつて得たあらゆる参考資料を収集して、事後の捜査に活用するように努めなければならない。
第3節
犯罪現場
第84条
【現場臨検】
警察官は、現場臨検を必要とする犯罪の発生を知つたときは、捜査専従員たると否とを問わず、すみやかにその現場に臨み、必要な捜査を行わなければならない。
前項の場合において他に捜査主任官その他の者による現場臨検が行われるときは、確実に現場を保存するよう努めなければならない。
附則
この規則は、昭和三十二年九月一日から施行する。
附則
平成12年10月6日
この規則は、平成十三年一月一日から施行する。
附則
平成15年3月5日
この規則は、平成十五年四月一日から施行する。
附則
平成15年10月10日
この規則は、平成十六年四月一日から施行する。ただし、別記様式第十八号の改正規定(同様式を別記様式第二十一号とする部分を除く。)は、同年一月一日から施行する。
附則
平成17年7月12日
この規則は、平成十七年九月一日から施行する。
附則
平成18年5月23日
この規則は、刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の施行の日(平成十八年五月二十四日)から施行する。
附則
平成19年5月25日
(施行期日)
この規則は、刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の一部を改正する法律の施行の日(平成十九年六月一日)から施行する。
附則
平成19年8月1日
この規則は、平成十九年八月一日から施行する。
附則
平成19年10月30日
(施行期日)
この規則は、少年法等の一部を改正する法律の施行の日(平成十九年十一月一日)から施行する。
附則
平成20年4月10日
この規則は、公布の日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
この規則の施行の際現に存する取調べ室(この規則の施行後に改築を行ったものを除く。)については、当分の間、この規則による改正後の犯罪捜査規範第百八十二条の三の規定は適用しない。
附則
平成20年11月10日
この規則は、公布の日から施行する。ただし、第二百十一条の改正規定は、少年法の一部を改正する法律の施行の日(平成二十年十二月十五日)から施行する。
附則
平成22年4月15日
この規則は、公布の日から施行する。
附則
平成22年10月22日
この規則は、刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律附則第一条ただし書に規定する規定の施行の日(平成二十二年十月二十五日)から施行する。
附則
平成24年3月16日
この規則は、民法等の一部を改正する法律の施行の日(平成二十四年四月一日)から施行する。
附則
平成24年6月18日
第1条
(施行期日)
この規則は、出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する等の法律の施行の日(平成二十四年七月九日)から施行する。
第2条
(経過措置)
この規則の施行の日前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
附則
平成24年6月21日
この規則は、情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律附則第一条第一号に掲げる規定の施行の日(平成二十四年六月二十二日)から施行する。

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