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  • 国際受刑者移送法

国際受刑者移送法

平成25年6月19日 改正
第1章
総則
第1条
【目的】
この法律は、外国において外国刑の確定裁判を受けその執行として拘禁されている日本国民等及び日本国において懲役又は禁錮の確定裁判を受けその執行として拘禁されている外国人について、国際的な協力の下に、その本国において当該確定裁判の執行の共助をすることにより、その改善更生及び円滑な社会復帰を促進することの重要性にかんがみ、並びに日本国が締結した刑を言い渡された者の移送及び確定裁判の執行の共助について定める条約(以下単に「条約」という。)を実施するため、当該日本国民等が受けた外国刑の確定裁判及び当該外国人が受けた懲役又は禁錮の確定裁判の執行の共助等について必要な事項を定めることを目的とする。
第2条
【定義】
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
外国刑 懲役又は禁錮に相当する外国の法令による刑をいう。
共助刑 受入移送犯罪に係る確定裁判の執行の共助として日本国が執行する外国刑をいう。
日本国民等 日本の国籍を有する者及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法に定める特別永住者(以下「特別永住者」という。)をいう。
締約国の国民等 条約の締約国たる外国(以下「締約国」という。)の国籍を有する者及び条約に基づき当該締約国がその国民とみなす者をいう。
受入移送 条約に基づき、締約国において外国刑の確定裁判を受けその執行として拘禁されている日本国民等の引渡しを当該締約国から受けて、当該確定裁判の執行の共助をすることをいう。
送出移送 条約に基づき、日本国において懲役又は禁錮の確定裁判を受けその執行として拘禁されている締約国の国民等を日本国から当該締約国に引き渡して、当該確定裁判の執行の共助を嘱託することをいう。
裁判国 日本国から受入移送の要請をしようとする締約国及び日本国からその要請をした締約国並びに日本国に対してその要請をした締約国をいう。
執行国 日本国から送出移送の要請をしようとする締約国及び日本国からその要請をした締約国並びに日本国に対してその要請をした締約国をいう。
受入受刑者 裁判国において外国刑の確定裁判を受けその執行として拘禁されている日本国民等及び受入移送により引渡しを受けた日本国民等であって外国刑の確定裁判の執行の共助が終わるまでの者をいう。
送出受刑者 日本国において懲役又は禁錮の確定裁判を受けその執行として拘禁されている締約国の国民等及び送出移送により引き渡した締約国の国民等であって懲役又は禁錮の確定裁判の執行の共助が終わるまでの者をいう。
受入移送犯罪 受入移送において執行の共助の対象とされる外国刑の確定裁判により受入受刑者が犯したものと認められた犯罪をいう。
送出移送犯罪 送出移送において執行の共助の対象とされる懲役又は禁錮の確定裁判により送出受刑者が犯したものと認められた犯罪をいう。
第3条
【要請の発受等】
受入移送及び送出移送の要請の発受並びに条約の実施に関し必要な締約国との間の文書及び通知の発受は、外務大臣が行う。ただし、緊急その他特別の事情がある場合において、外務大臣が同意したときは、法務大臣が行うものとする。
第4条
【要請を受けた外務大臣の措置】
外務大臣は、締約国から受入移送又は送出移送の要請を受理したときは、要請書に関係書類を添付し、意見を付して法務大臣に送付しなければならない。
第2章
受入移送
第5条
【受入移送の実施】
受入移送は、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、これをすることができる。
受入受刑者の同意がないとき。
受入受刑者が十四歳に満たないとき。
受入移送犯罪に係る行為が日本国内において行われたとした場合において、その行為が日本国の法令によれば禁錮以上の刑が定められている罪に当たるものでないとき。
受入移送犯罪に係る事件が日本国の裁判所に係属するとき、又はその事件について、日本国の裁判所において言い渡された無罪の裁判が確定したとき、日本国の裁判所において禁錮以上の刑に処せられその刑の全部若しくは一部の執行を受けたとき若しくはその刑の全部の執行を受けないこととなっていないとき。
参照条文
第6条
【同意の確認】
前条第1号の同意は、次の各号のいずれかに掲げる職員が確認するものとする。この場合において、当該職員は、受入受刑者をして、第16条及び第17条の規定に関する事項その他法務省令で定める事項を記載した書面に、当該職員の面前で、署名押印させるものとする。
法務大臣の委任を受けた外国に駐在する日本国の大使、公使若しくは領事官又はこれらの者が指定する職員
法務大臣が指定する職員
第7条
【法務大臣の措置】
法務大臣は、裁判国から受入移送の要請があった場合において、第5条各号のいずれにも該当せず、かつ、要請に応ずることが相当であると認めるときは、東京地方検察庁検事正に対し関係書類を送付して、受入移送をすることができる場合に該当するかどうかについて東京地方裁判所に審査の請求をすることを命じなければならない。
裁判国から受入移送の要請がない場合において、法務大臣が、第5条各号のいずれにも該当せず、かつ、裁判国に対し受入移送の要請をすることが相当であると認めるときも、前項と同様とする。
法務大臣は、前項の規定に基づき審査の請求をすることを命じようとするときは、あらかじめ外務大臣の意見を聴かなければならない。
参照条文
第8条
【審査の請求】
東京地方検察庁の検察官は、前条第1項又は第2項の命令があったときは、速やかに、東京地方裁判所に対し、受入移送をすることができる場合に該当するかどうかについて審査の請求をしなければならない。
前項の審査の請求は書面で行い、当該書面に関係書類を添付しなければならない。
第9条
【東京地方裁判所の審査】
東京地方裁判所は、前条の審査の請求を受けたときは、速やかに、審査を開始し、決定をするものとする。
参照条文
第10条
【東京地方裁判所の決定】
東京地方裁判所は、前条の規定による審査の結果に基づいて、次の区別に従い、決定をしなければならない。
審査の請求が不適法であるときは、これを却下する決定
受入移送をすることができない場合に該当するときは、その旨の決定
受入移送をすることができる場合に該当するときは、その旨の決定
東京地方裁判所は、前項の決定をしたときは、速やかに、東京地方検察庁の検察官に裁判書の謄本を送達するとともに、関係書類を返還しなければならない。
第11条
【裁判書の謄本等の法務大臣への提出】
東京地方検察庁検事正は、前条第2項の規定により、裁判書の謄本が東京地方検察庁の検察官に送達されたときは、速やかに、関係書類とともに、これを法務大臣に提出しなければならない。
第12条
【裁判国に対する受入移送の要請】
法務大臣は、裁判国から受入移送の要請がない場合において、第10条第1項第3号の決定があり、かつ、相当であると認めるときは、裁判国に対し受入移送の要請をすることができる。
参照条文
第13条
【法務大臣の受入移送命令】
法務大臣は、裁判国から受入移送の要請があった場合において第10条第1項第3号の決定があったとき、又は前条の規定により裁判国に対し受入移送の要請をした場合において裁判国から要請に応ずる旨の通知があったときは、東京地方検察庁検事正に対し、当該要請に係る受入移送を命じなければならない。ただし、受入移送を命ずることが相当でないと認めるときは、この限りでない。
第14条
【受入受刑者に対する通知】
法務大臣は、第12条の規定により裁判国に対して受入移送の要請をしたとき及び前条の規定により受入移送の命令をしたときは、当該受入受刑者に書面でその旨を通知しなければならない。裁判国から要請があった場合又は第6条の規定に基づき受入受刑者の同意を確認した場合において、受入移送をしないこととしたときも、同様とする。
参照条文
第15条
【受入移送命令の方式】
第13条の命令は書面によるものとし、当該書面に関係書類の謄本を添付しなければならない。
前項の書面には、受入受刑者の氏名、年齢、裁判国の名称、受入移送犯罪の名称、外国刑の刑期、引渡しを受ける日及び場所並びに引致すべき刑事施設を記載し、法務大臣が記名押印しなければならない。
第16条
【共助刑の執行方法】
第13条の命令により裁判国から受入受刑者の引渡しを受けたときは、次の各号に掲げる受入移送犯罪に係る確定裁判において言い渡された外国刑の区分に応じ、当該各号に掲げる種類の共助刑を執行することにより、受入移送犯罪に係る外国刑の確定裁判の執行の共助をするものとする。
外国刑が懲役に相当する刑であるとき 当該受入受刑者を刑事施設に拘置して所定の作業を行わせること。
前号に掲げる場合に該当しないとき 当該受入受刑者を刑事施設に拘置すること。
受入移送犯罪に係る確定裁判において言い渡された外国刑が二以上あるときは、これらを一の共助刑として執行する。この場合における共助刑の種類は、当該外国刑のすべてが懲役に相当する刑であるときは、前項第1号に掲げるものとし、当該外国刑のいずれかが懲役に相当する刑でないときは、同項第2号に掲げるものとする。
第17条
【共助刑の期間】
共助刑の期間は、次の各号に掲げる受入移送犯罪に係る確定裁判において言い渡された外国刑の区分に応じ、当該各号に掲げるものとする。
外国刑(二以上あるときは、そのいずれか)が無期であるとき 無期
前号に掲げる場合に該当しないとき 次のイ又はロに掲げる裁判国において当該外国刑の執行が開始された日(二以上あるときは、当該日のうち最も早い日。以下同じ。)から受入受刑者の拘禁をすることができるとされる最終日までの日数(裁判国においてその執行としての拘禁をしていないとされる日数を除く。)の区分に応じ、当該イ又はロに定める期間
裁判国において当該外国刑の執行が開始された日から三十年を経過する日までの日数を超えるとき 当該三十年を経過する日までの日数
裁判国において当該外国刑の執行が開始された日から三十年を経過する日までの日数を超えないとき 当該最終日までの日数
受入受刑者が二十歳に満たないときに共助刑に係る外国刑(二以上あるときは、それらのすべて)の言渡しを受けた者である場合における前項の規定の適用については、同項第2号中「三十年」とあるのは「十五年」とする。
参照条文
第18条
【共助刑の刑期の計算】
共助刑の刑期は、裁判国において受入移送犯罪に係る確定裁判において言い渡された外国刑の執行が開始された日(二以上あるときは、当該日のうち最も早い日)の午前零時に応当する日本国における時刻の属する日から起算する。
裁判国において受入移送犯罪に係る確定裁判において言い渡された外国刑の執行としての拘禁をしていないとされる日数及び第13条の命令により裁判国から受入受刑者の引渡しを受けた後に当該受入受刑者を拘禁していない日数は、共助刑の刑期に算入しない。
第19条
【受入収容状の発付等】
東京地方検察庁の検察官は、第13条の命令があったときは、受入収容状を発しなければならない。
前項の受入収容状には、第15条第2項に掲げる事項を記載し、東京地方検察庁の検察官が記名押印しなければならない。
第1項の受入収容状は、勾引状と同一の効力を有するものとし、東京地方検察庁の検察官の指揮によって刑事施設の長又はその指名する刑事施設の職員が執行する。
刑事訴訟法第73条第1項前段及び第74条の規定は、第1項の受入収容状の執行について準用する。この場合において、これらの規定中「被告人」とあるのは「国際受刑者移送法第2条第9号の受入受刑者」と、同法第73条第1項前段中「勾引状」とあり、及び同法第74条中「勾引状又は勾留状」とあるのは「国際受刑者移送法第19条第1項の受入収容状」と、同法第73条第1項前段中「裁判所その他の場所」とあるのは「刑事施設」と読み替えるものとする。
参照条文
第20条
【共助刑の執行指揮】
共助刑の執行は、東京地方検察庁の検察官が指揮する。
前項の指揮は書面で行い、当該書面に第15条第1項の書面の謄本及び関係書類の謄本を添付しなければならない。
第21条
【刑法等の適用】
共助刑の執行に関しては、第16条第1項第1号の共助刑の執行を受ける者を懲役に処せられた者と、同項第2号の共助刑の執行を受ける者を禁錮に処せられた者と、同項第1号の共助刑を懲役と、同項第2号の共助刑を禁錮とそれぞれみなして、刑法第22条第24条第28条第29条第31条から第33条まで及び第34条第1項刑事訴訟法第474条第480条から第482条まで、第484条から第489条まで、第502条から第504条まで及び第507条少年法第2条第1項第27条第1項第56条第57条及び第61条少年院法第1条第2条第4条から第9条まで、第10条第1項第10条の2第13条第14条第1項第4項及び第5項第14条の2から第16条まで、第17条第2項第17条の2並びに第17条の4から第17条の6まで並びに更生保護法第3条第4条第2項第11条から第14条まで、第16条第23条から第30条まで、第33条第34条第1項第35条から第40条まで、第48条第49条第1項第50条第51条第52条第2項及び第3項第53条第2項及び第3項第54条第2項第55条から第58条まで、第60条から第65条まで、第75条から第77条まで、第82条第84条から第88条まで並びに第91条から第98条までの規定を適用する。この場合において、刑法第28条中「三分の一」とあるのは「三分の一(国際受刑者移送法第2条第7号の裁判国(以下「裁判国」という。)において同法第2条第11号の受入移送犯罪(以下「受入移送犯罪」という。)に係る確定裁判において言い渡された同法第2条第1号の外国刑(以下「外国刑」という。)の執行としての拘禁をしたとされる日数を含む。)」と、「十年」とあるのは「十年(裁判国において受入移送犯罪に係る確定裁判において言い渡された外国刑の執行としての拘禁をしたとされる日数を含む。)」と、同法第32条中「刑の言渡しが確定した後」とあるのは「国際受刑者移送法第13条の命令により裁判国から引渡しを受けた後」と、刑事訴訟法第474条中「二以上の」とあるのは「国際受刑者移送法第2条第2号の共助刑(以下「共助刑」という。)と」と、「その重いもの」とあり、及び「重い刑」とあるのは「共助刑」と、「他の刑」とあるのは「主刑」と、同法第480条及び第482条中「刑の言渡をした裁判所に対応する検察庁」とあるのは「東京地方検察庁」と、同法第487条中「刑名」とあるのは「共助刑の種類」と、同法第502条中「裁判の執行を受ける者」とあるのは「共助刑の執行を受ける者」と、「言渡をした裁判所」とあるのは「東京地方裁判所」と、少年法第27条第1項中「保護処分の継続中、本人に対して有罪判決が確定した」とあり、及び同法第57条中「保護処分の継続中、懲役、禁錮又は拘留の刑が確定した」とあるのは「国際受刑者移送法第2条第2号の共助刑の執行を受ける者が保護処分の継続中である」とし、その他これらの規定の適用に関し必要な技術的読替えは、政令で定める。
第22条
【仮釈放の特則】
二十歳に満たないときに共助刑に係る外国刑(二以上あるときは、それらのすべて)の言渡しを受けた受入受刑者については、次の期間(裁判国において当該外国刑の執行としての拘禁をしたとされる日数を含む。)を経過した後、仮釈放をすることができる。
無期の共助刑については七年
十年を超える有期の共助刑については三年
五年を超え十年以下の有期の共助刑については一年八月
五年以下の有期の共助刑については、その刑期の三分の一
第23条
【施設の長の通告義務の特則】
刑事施設の長は、第20条第1項の指揮があった場合において、受入受刑者が第21条の規定により適用される刑法第28条又はこの法律第22条に掲げる期間を既に経過しているときは、速やかに、その旨を地方更生保護委員会に通告しなければならない。
第24条
【仮釈放期間の終了の特則】
第22条に規定する受入受刑者が無期の共助刑についての仮釈放後、その処分を取り消されないで十年を経過したときは、共助刑の執行を受け終わったものとする。
第22条に規定する受入受刑者が有期の共助刑についての仮釈放後、その処分を取り消されないで仮釈放前に共助刑の執行を受けた期間(裁判国において受入移送犯罪に係る確定裁判において言い渡された外国刑の執行としての拘禁をしたとされる日数を含む。)と同一の期間又は共助刑の刑期を経過したときは、そのいずれか早い時期において、共助刑の執行を受け終わったものとする。ただし、共助刑の刑期が三年に満たないときは、この限りでない。
参照条文
第25条
【共助刑の執行の減軽等】
中央更生保護審査会は、法務大臣に対し、受入受刑者に対する共助刑の執行の減軽又は免除の実施について申出をすることができる。
法務大臣は、前項の申出があったときは、当該受入受刑者に対して共助刑の執行の減軽又は免除をすることができる。
法務大臣は、前項の規定により共助刑の執行の減軽又は免除をしたときは、共助刑の執行の減軽状又は共助刑の執行の免除状を当該受入受刑者に下付しなければならない。
恩赦法第11条及び更生保護法第90条の規定は、共助刑の執行の減軽又は免除について準用する。この場合において、恩赦法第11条中「有罪の言渡」とあるのは「国際受刑者移送法第13条の命令」と、「大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除又は復権」とあるのは「同法第25条第2項の規定による共助刑の執行の減軽又は免除」と、更生保護法第90条第1項中「前条の申出」とあり、及び同条第2項中「特赦、減刑又は刑の執行の免除の申出」とあるのは「国際受刑者移送法第25条第1項の申出」と読み替えるものとする。
第26条
【外国刑の確定裁判の執行不能等の通知を受けた法務大臣の措置等】
裁判国において受入移送犯罪に係る外国刑の確定裁判(二以上あるときは、それらのすべて)が取り消された場合その他その執行ができなくなった場合において、裁判国からその旨の通知があったときは、法務大臣は、第13条の命令を撤回し、直ちに、東京地方検察庁検事正に当該受入受刑者の釈放を命じなければならない。
東京地方検察庁の検察官は、前項の規定による釈放の命令があったときは、直ちに、当該受入受刑者を釈放しなければならない。
第1項に規定する場合を除き、裁判国から、受入移送犯罪に係る確定裁判において言い渡された外国刑について、減刑その他の事由により当該外国刑の種類又は裁判国において受入受刑者の拘禁をすることができるとされる最終日を変更する旨の通知があったときは、当該通知に基づき、第16条及び第17条の定めるところに従い、共助刑の種類及び期間を変更するものとする。
第27条
【裁判国に対する通知】
法務大臣は、受入受刑者が次の各号のいずれかに該当する場合には、速やかに、裁判国にその旨を通知しなければならない。
共助刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなったとき。
共助刑の執行が終わる前に死亡し、又は逃走したとき。
第3章
送出移送
第28条
【送出移送の実施】
送出移送は、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、これをすることができる。
送出受刑者の同意がないとき。
送出移送犯罪に係る行為が執行国内において行われたとした場合において、その行為が執行国の法令によれば罪に当たるものでないとき。
送出移送犯罪について刑事訴訟法第350条の請求又は送出移送犯罪に係る事件について上訴権回復若しくは再審の請求若しくは非常上告の手続が日本国の裁判所に係属するとき。
送出移送犯罪について特赦の出願若しくは上申がなされ、又は送出移送犯罪に係る確定裁判において言い渡された懲役若しくは禁錮について減刑若しくは刑の執行の免除の出願若しくは上申がなされ、その手続が終了していないとき。
送出移送犯罪に係る懲役又は禁錮の確定裁判において罰金、没収又は追徴が併科されている場合において、その執行を終わらず、又は執行を受けないこととなっていないとき。
送出移送犯罪以外の罪に係る事件が日本国の裁判所に係属するとき、又はその事件について送出受刑者が日本国の裁判所において刑に処せられ、その執行を終わらず、若しくは執行を受けないこととなっていないとき。
参照条文
第29条
【条約の内容の告知】
刑事施設の長は、当該刑事施設に収容されている締約国の国民等に対して言い渡された懲役又は禁錮の裁判が確定したときは、速やかに、その者に対し条約に定める事項のうち重要なものを告知しなければならない。締約国の国民等が懲役又は禁錮の裁判を言い渡されその確定裁判の執行のため刑事施設に収容されたときも、同様とする。
第30条
【送出受刑者に対する通知】
法務大臣は、送出受刑者が送出移送の申出をした場合において、条約に基づき日本国が当該送出受刑者の執行国となるべき国に対し行うこととされる通知をしたときは、当該送出受刑者に書面でその旨を通知しなければならない。
第31条
【送出受刑者の同意】
送出受刑者は、第28条第1号の同意をするときは、その収容されている刑事施設の長又はその指定する職員の立会いの下に、法務省令で定める事項を記載した書面に署名押印しなければならない。
刑事施設の長は、送出受刑者が前項の書面に署名押印したときは、速やかに、当該書面を法務大臣に提出しなければならない。
第32条
【同意の確認のための接見】
刑事施設の長は、締約国の大使、公使、領事官その他領事任務を遂行する者又は締約国が指定する当該締約国の公務員が、条約に基づき送出受刑者が送出移送に同意しているかどうかを確認するためにその者との接見を求めるときは、これを許さなければならない。
前項の接見は、法令の範囲内で行うものとする。
参照条文
第33条
【執行国に対する送出移送の要請】
法務大臣は、第28条各号のいずれにも該当せず、かつ、相当であると認めるときは、執行国に対し送出移送の要請をすることができる。
法務大臣は、前項の要請をしようとするときは、あらかじめ外務大臣の意見を聴かなければならない。
参照条文
第34条
【法務大臣の送出移送決定等】
法務大臣は、執行国から送出移送の要請があった場合において第28条各号のいずれにも該当しないとき、又は前条第1項の規定により執行国に対し送出移送の要請をした場合において執行国から要請に応ずる旨の通知があったときは、送出移送の決定をしなければならない。ただし、送出移送をすることが相当でないと認めるときは、この限りでない。
法務大臣は、前項の決定をしたときは、送出受刑者が収容されている刑事施設の長に対し、当該決定に係る引渡しを命じなければならない。
法務大臣は、第1項ただし書の規定により送出移送をしないこととするときは、あらかじめ外務大臣と協議しなければならない。
第35条
【送出受刑者に対する通知】
法務大臣は、第33条第1項の規定により執行国に対し送出移送の要請をしたとき及び前条第2項の規定により引渡しの命令をしたときは、当該送出受刑者に書面でその旨を通知しなければならない。執行国から要請があった場合又は第31条第1項の規定に基づく送出受刑者の同意があった場合において、送出移送をしないこととしたときも、同様とする。
参照条文
第36条
【送出移送の実施に関する準用規定】
逃亡犯罪人引渡法第16条第1項第3項及び第4項第19条第1項第20条第1項並びに第21条の規定は、第34条第2項の命令により送出受刑者を執行国に引き渡す場合について準用する。この場合において、同法第16条第1項中「第14条第1項の規定による引渡の命令」とあり、及び同法第20条第1項中「第17条第1項又は第5項の規定による逃亡犯罪人の引渡の指揮」とあるのは「国際受刑者移送法第34条第2項の命令」と、同法第16条第4項中「逃亡犯罪人の氏名、引渡犯罪名、請求国の名称、引渡の場所、引渡の期限及び発付の年月日」とあるのは「国際受刑者移送法第2条第10号の送出受刑者(以下「送出受刑者」という。)の氏名、年齢、国籍、同法第2条第8号の執行国(以下「執行国」という。)の名称、同法第2条第12号の送出移送犯罪の名称、刑名、刑期、引渡日及び引渡しの場所」と、同法第19条第1項中「第16条第3項」とあるのは「国際受刑者移送法第36条の規定により準用される逃亡犯罪人引渡法第16条第3項」と、同法第19条第1項第20条第1項及び第21条中「請求国」とあるのは「執行国」と、同法第20条第1項中「示して逃亡犯罪人の」とあるのは「示して送出受刑者の」と、「逃亡犯罪人を」とあるのは「送出受刑者を」と、同法第21条中「前条第1項」とあるのは「国際受刑者移送法第36条の規定により準用される逃亡犯罪人引渡法第20条第1項」と、「逃亡犯罪人」とあるのは「送出受刑者」と読み替えるものとする。
第37条
【送出移送をした場合における懲役又は禁錮の執行の終了】
送出移送犯罪に係る確定裁判において言い渡された懲役又は禁錮の執行は、執行国においてその執行の共助が終わった日の午前零時に応当する日本国における時刻の属する日に終了したものとする。
第38条
【執行国に対する通知】
法務大臣は、送出受刑者が第34条第2項の命令により執行国に引き渡された後に、その者について次の各号のいずれかの事由が生じた場合には、直ちに、執行国にその旨を通知しなければならない。
刑事訴訟法第350条の請求、上訴権回復、再審、非常上告又は同法第502条の申立ての手続により、送出移送犯罪に係る懲役若しくは禁錮の確定裁判の執行をすることができなくなったとき、又は刑の種類若しくは送出受刑者を拘禁することができる最終日に変更が生じたとき。
送出移送犯罪について大赦、特赦若しくは政令による減刑又は送出移送犯罪に係る確定裁判において言い渡された懲役若しくは禁錮について減刑若しくは刑の執行の免除があったとき。
第4章
雑則
第39条
【受入受刑者の送還】
法務大臣は、第13条の命令により裁判国から引渡しを受けた受入受刑者(第21条の規定により適用される刑法第28条又はこの法律第22条の規定により仮釈放中の者を除く。)について、受入移送犯罪に係る外国刑の確定裁判の再審の審判に出頭する場合その他やむを得ない事情があると認める場合において、裁判国からの要請があるときは、当該受入受刑者が収容されている刑事施設の長に対し、裁判国への引渡し(以下本条において「送還」という。)を命ずることができる。
法務大臣は、前項の規定により送還の命令をしたときは、当該受入受刑者に書面でその旨を通知しなければならない。
第1項の命令により送還をしたときは、受入移送犯罪に係る外国刑の確定裁判の執行の共助は終了するものとする。
逃亡犯罪人引渡法第16条第1項第3項及び第4項第19条第1項第20条第1項並びに第21条の規定は、第1項の命令により送還をする場合について準用する。この場合において、同法第16条第1項中「第14条第1項の規定による引渡の命令」とあり、及び同法第20条第1項中「第17条第1項又は第5項の規定による逃亡犯罪人の引渡の指揮」とあるのは「国際受刑者移送法第39条第1項の命令」と、同法第16条第4項中「逃亡犯罪人の氏名、引渡犯罪名、請求国の名称、引渡の場所、引渡の期限及び発付の年月日」とあるのは「国際受刑者移送法第2条第9号の受入受刑者(以下「受入受刑者」という。)の氏名、年齢、同法第2条第7号の裁判国(以下「裁判国」という。)の名称、同法第2条第11号の受入移送犯罪の名称、同法第2条第1号の外国刑の刑期、引渡日及び引渡しの場所」と、同法第19条第1項中「第16条第3項」とあるのは「国際受刑者移送法第39条第4項の規定により準用される逃亡犯罪人引渡法第16条第3項」と、同法第19条第1項第20条第1項及び第21条中「請求国」とあるのは「裁判国」と、同法第20条第1項中「示して逃亡犯罪人の」とあるのは「示して受入受刑者の」と、「逃亡犯罪人を」とあるのは「受入受刑者を」と、同法第21条中「前条第1項」とあるのは「国際受刑者移送法第39条第4項の規定により準用される逃亡犯罪人引渡法第20条第1項」と、「逃亡犯罪人」とあるのは「受入受刑者」と読み替えるものとする。
第40条
【執行国における拘禁等の取扱い】
第34条第2項の命令により執行国に引渡しをした者であって、次に掲げるものについて、日本国において送出移送犯罪に係る確定裁判において言い渡された懲役又は禁錮の執行をするときは、執行国において当該確定裁判の執行の共助としての拘禁をしたとされる期間については、当該懲役又は禁錮の執行を受け終えたものとする。
送出移送犯罪に係る懲役又は禁錮の確定裁判の再審の審判に出頭するため、執行国から引渡しを受けた者
逃走その他の事由により執行国による送出移送犯罪に係る懲役又は禁錮の確定裁判の執行の共助としての拘禁、保護観察その他これに相当する措置を行うことができなくなった者
第41条
【刑法第五条ただし書の特則】
第13条の命令により裁判国から引渡しを受けた日本国民等を、その引渡し後に公訴が提起された受入移送犯罪に係る事件について刑に処するときは、刑法第5条ただし書の規定にかかわらず、その刑の執行を免除するものとする。
第42条
【逃走罪等の特則】
第16条の規定により刑事施設に拘置された受入受刑者については、裁判の執行により拘禁された既決の者とみなして、刑法第97条若しくは第98条又は第102条第97条又は第98条の未遂罪に係る部分に限る。)の規定を適用する。
第43条
【受入移送に関する費用】
第13条の命令により裁判国から受入受刑者の引渡しを受けた場合において、当該受入受刑者を裁判国から日本国に護送するために要した費用のうち、日本国が支出した受入受刑者に係る交通費は、受入受刑者の負担とする。ただし、法務大臣は、受入受刑者が貧困のためこれを完納することができないことが明らかであるときは、政令で定めるところにより、その全部又は一部を免除することができる。
第44条
【出入国管理及び難民認定法等の特則】
特別永住者が第13条の命令により本邦に上陸した場合には、当該特別永住者は、出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)第9条第1項の規定による上陸許可の証印を受けて上陸したものとみなす。
第34条第2項の命令により本邦から出国した送出受刑者に対して入管法第47条第5項第48条第9項又は第49条第6項の規定により退去強制令書が発付されていた場合には、当該送出受刑者は、同法第5条第1項第5号の2第9号及び第10号の適用については、当該退去強制令書により本邦からの退去を強制された者とみなす。この場合において、同法第5条第1項第9号中「退去した」とあるのは「出国した」と読み替えるものとする。
第45条
【最高裁判所規則】
この法律に定めるもののほか、東京地方裁判所の審査に関する手続について必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
第46条
【通過護送の承認に関する法務大臣の措置】
法務大臣は、外国から外交機関を経由して、当該外国の官憲が、当該外国又は他の外国において外国刑の確定裁判を受けた者を、その執行の共助のために、日本国内を通過して護送することの承認の要請があったときは、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、これを承認することができる。
当該外国刑の確定裁判により認められた犯罪に係る行為が日本国内において行われたとした場合において、その行為が日本国の法令によれば罪に当たるものでないとき。
当該外国刑の確定裁判を受けた者が日本国民であるとき。
法務大臣は、外国刑の確定裁判を受けた者について、条約に基づき、締約国から前項の承認の要請があったときは、同項各号のいずれかに該当する場合を除き、これを承認しなければならない。
法務大臣は、第1項の承認をするかどうかについてあらかじめ外務大臣と協議しなければならない。
第47条
【施行細則】
この法律に特別の規定があるものを除くほか、この法律の実施の手続その他その執行について必要な細則は、法務省令で定める。
附則
第1条
(施行期日)
この法律は、条約が日本国について効力を生ずる日から施行する。
第2条
(経過規定)
この法律は、この法律の施行の際に締約国において外国刑の確定裁判の執行として拘禁されている日本国民等又は日本国において懲役若しくは禁錮の確定裁判の執行として拘禁されている締約国の国民等についても、適用する。
附則
平成16年6月2日
第1条
(施行期日)
この法律は、公布の日から起算して六月を経過した日から施行する。
附則
平成16年12月8日
第1条
(施行期日)
この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
第7条
(国際受刑者移送法の一部改正に伴う経過措置)
この法律の施行前に国際受刑者移送法第二条第十一号の受入移送犯罪(二以上あるときは、それらのすべて)を犯した者に係る同条第二号の共助刑の期間については、前条の規定による改正後の同法第十七条第一項第二号及び第二項の規定にかかわらず、なお従前の例による。
附則
平成17年5月25日
第1条
(施行期日)
この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、附則第三十三条の規定、附則第三十八条中国際受刑者移送法第二十一条の改正規定(「、犯罪者予防更生法」を「並びに犯罪者予防更生法」に改め、「並びに構造改革特別区域法第十一条及び第十一条の二」を削る部分に限る。)及び附則第三十九条の規定は、構造改革特別区域法の一部を改正する法律の施行の日又はこの法律の施行の日のいずれか遅い日から施行する。
第41条
(検討)
政府は、施行日から五年以内に、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
附則
平成17年6月17日
第1条
(施行期日)
この法律は、平成十七年十月一日から施行する。
附則
平成19年6月15日
第1条
(施行期日)
この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
附則
平成22年5月6日
この法律は、公布の日から施行する。
附則
平成25年6月19日
第1条
(施行期日)
この法律は、公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

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