特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法
平成23年12月16日 制定
第1条
【目的】
この法律は、集団予防接種等の際の注射器の連続使用により、多数の者にB型肝炎ウイルスの感染被害が生じ、かつ、その感染被害が未曽有のものであることに鑑み、特定B型肝炎ウイルス感染者及びその相続人に対し、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等を支給するための措置を講ずることにより、この感染被害の迅速かつ全体的な解決を図ることを目的とする。
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参照条文
第2条
【定義】
1
この法律において「集団予防接種等の際の注射器の連続使用」とは、昭和二十三年七月一日から昭和六十三年一月二十七日までの間において、市町村長、都道府県知事その他厚生労働省令で定める者が、その期日又は期間及び場所を指定して行った予防接種又はツベルクリン反応検査のうち、当該予防接種又はツベルクリン反応検査が実施された日において施行されていた法律であって厚生労働省令で定めるものの規定に基づくものが行われた際に、注射針、注射筒その他厚生労働省令で定める医療機器を当該予防接種又はツベルクリン反応検査を受ける者ごとに取り替えることなく、使用したことをいう。
2
この法律において「特定B型肝炎ウイルス感染者」とは、七歳に達するまでの間における集団予防接種等の際の注射器の連続使用によりB型肝炎ウイルスに感染した者であって当該B型肝炎ウイルスが持続的に生体内に存在する状態として厚生労働省令で定めるもの(以下この条において「持続感染の状態」という。)になったもの及びその者の胎内又は産道においてB型肝炎ウイルスに感染した者(以下「母子感染者」という。)その他母子感染者に類する者として厚生労働省令で定めるもの(以下「母子感染者に類する者」という。)であって持続感染の状態になったものをいう。
3
この法律において「確定判決等」とは、七歳に達するまでの間における集団予防接種等の際の注射器の連続使用によりB型肝炎ウイルスに感染した者が持続感染の状態になったこと又は母子感染者その他母子感染者に類する者が持続感染の状態になったことによって生じた損害の賠償に係る確定判決又は和解若しくは調停であって、その相手方に国が含まれるものをいう。
第3条
【特定B型肝炎ウイルス感染者給付金の支給】
1
社会保険診療報酬支払基金(以下「支払基金」という。)は、特定B型肝炎ウイルス感染者(特定B型肝炎ウイルス感染者がこの法律の施行前に死亡している場合にあっては、その相続人)に対し、その者の請求に基づき、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金を支給する。ただし、当該特定B型肝炎ウイルス感染者について既に特定B型肝炎ウイルス感染者給付金が支給されている場合は、この限りでない。
2
特定B型肝炎ウイルス感染者給付金の支給を受ける権利を有する者が死亡した場合において、その者がその死亡前に特定B型肝炎ウイルス感染者給付金の支給の請求をしていなかったときは、その者の相続人は、自己の名で、その者の特定B型肝炎ウイルス感染者給付金の支給を請求することができる。
第4条
【特定B型肝炎ウイルス感染者給付金の支給手続】
特定B型肝炎ウイルス感染者給付金の支給の請求をするには、厚生労働省令で定めるところにより、当該請求をする者又はその被相続人が特定B型肝炎ウイルス感染者であること及びその者が第6条第1項各号のいずれかに該当する者であることを証する確定判決等の判決書又は調書の正本又は謄本を提出しなければならない。
第6条
【特定B型肝炎ウイルス感染者給付金の額】
1
特定B型肝炎ウイルス感染者給付金の額は、次の各号に掲げる特定B型肝炎ウイルス感染者の区分に応じ、当該各号に定める額とする。
①
B型肝炎ウイルスに起因して、肝硬変(重度のものに限る。)若しくは肝がんにり患し、又は死亡した者(当該肝硬変(当該肝がんにり患した者にあっては、当該肝がん)を発症した時(当該死亡した者にあっては、当該死亡した時)から二十年を経過した後にされた訴えの提起等に係る者を除く。) 三千六百万円
②
B型肝炎ウイルスに起因して、肝硬変(重度のものを除く。)にり患した者(当該肝硬変を発症した時から二十年を経過した後にされた訴えの提起等に係る者及びB型肝炎ウイルスに起因して、肝硬変(重度のものに限る。)若しくは肝がんにり患し、又は死亡した者を除く。) 二千五百万円
③
慢性B型肝炎にり患した者(当該慢性B型肝炎を発症した時から二十年を経過した後にされた訴えの提起等に係る者及びB型肝炎ウイルスに起因して、肝硬変若しくは肝がんにり患し、又は死亡した者を除く。) 千二百五十万円
④
慢性B型肝炎にり患した者のうち、当該慢性B型肝炎を発症した時から二十年を経過した後にされた訴えの提起等に係る者であって、現に当該慢性B型肝炎にり患しているもの又は現に当該慢性B型肝炎にり患していないが、当該慢性B型肝炎の治療を受けたことのあるもの(これらの者のうち、B型肝炎ウイルスに起因して、肝硬変若しくは肝がんにり患し、又は死亡した者を除く。) 三百万円
⑤
慢性B型肝炎にり患した者のうち、当該慢性B型肝炎を発症した時から二十年を経過した後にされた訴えの提起等に係る者であって、前号に掲げる者以外のもの(B型肝炎ウイルスに起因して、肝硬変若しくは肝がんにり患し、又は死亡した者を除く。) 百五十万円
第7条
【訴訟手当金の支給】
1
特定B型肝炎ウイルス感染者又はその相続人が、確定判決等に係る訴訟又は和解若しくは調停に関し、特定B型肝炎ウイルス感染者であることを確認するための検査に要する費用として厚生労働省令で定めるものを支出したとき又は弁護士若しくは弁護士法人に報酬を支払うべきときは、支払基金は、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金の支給を請求する者に対し、その者の請求に基づき、訴訟手当金を支給する。
第12条
【定期検査費の支給】
1
支払基金は、確定判決等において第6条第1項第7号に該当する者であることを証された特定B型肝炎ウイルス感染者(追加給付金の支給を受けた者を除く。以下「特定無症候性持続感染者」という。)が、判決確定日等以後に、病院又は診療所から慢性B型肝炎又は肝がんの発症を確認するための定期的な検査であって厚生労働省令で定めるもの(以下「定期検査」という。)を受けたときは、当該特定無症候性持続感染者に対し、その者の請求に基づき、定期検査費を支給する。
第13条
【母子感染防止医療費の支給】
1
支払基金は、特定無症候性持続感染者が出産した場合において、当該特定無症候性持続感染者又はその子(以下「特定無症候性持続感染者の子」という。)が、判決確定日等以後に、病院又は診療所から当該特定無症候性持続感染者の子がB型肝炎ウイルスに感染することを防止するための検査又は血液製剤若しくはワクチンの投与であって厚生労働省令で定めるもの(以下「母子感染防止医療」という。)を受けたときは、当該特定無症候性持続感染者に対し、その者の請求に基づき、母子感染防止医療費を支給する。
2
母子感染防止医療費の額は、当該母子感染防止医療に要する費用の額から、健康保険法等の規定により当該特定無症候性持続感染者又は当該特定無症候性持続感染者の子が受け、又は受けることができた当該母子感染防止医療に関する給付の額を控除した額とする。
第14条
【世帯内感染防止医療費の支給】
1
支払基金は、判決確定日等以後に特定無症候性持続感染者と同一の世帯に属する者となった者(母子感染防止医療の対象となる者を除く。以下「特定無症候性持続感染者の同一世帯所属者」という。)が、判決確定日等以後に、病院又は診療所からB型肝炎ウイルスに感染することを防止するための検査又はワクチンの投与であって厚生労働省令で定めるもの(以下「世帯内感染防止医療」という。)を受けたときは、当該特定無症候性持続感染者に対し、その者の請求に基づき、世帯内感染防止医療費を支給する。
2
世帯内感染防止医療費の額は、当該世帯内感染防止医療に要する費用の額から、健康保険法等の規定により当該特定無症候性持続感染者の同一世帯所属者が受け、又は受けることができた当該世帯内感染防止医療に関する給付の額を控除した額とする。
第15条
【定期検査手当の支給】
1
支払基金は、第12条第1項の規定により特定無症候性持続感染者が定期検査を受けたときは、当該特定無症候性持続感染者に対し、その者の請求に基づき、年を単位として定期検査二回までに限り、定期検査手当を支給する。
第16条
【定期検査費及び母子感染防止医療費の支給の特例】
2
特定無症候性持続感染者が、受給者証を提示して、健康保険法第63条第3項第1号に規定する保険医療機関その他病院又は診療所であって厚生労働省令で定めるもの(以下「保険医療機関等」という。)から定期検査又は母子感染防止医療を受けた場合においては、支払基金は、定期検査費又は母子感染防止医療費(特定無症候性持続感染者に対する母子感染防止医療に係る部分に限る。以下この条及び第24条において同じ。)として当該特定無症候性持続感染者に支給すべき額の限度において、その者が当該定期検査又は母子感染防止医療に関し当該保険医療機関等に支払うべき費用を、当該特定無症候性持続感染者に代わり、当該保険医療機関等に支払うことができる。
第17条
1
支払基金は、前条第2項の規定による支払をなすべき額を決定するに当たっては、社会保険診療報酬支払基金法に定める審査委員会、国民健康保険法に定める国民健康保険診療報酬審査委員会その他政令で定める医療に関する審査機関の意見を聴かなければならない。
第18条
【損害賠償との調整】
1
特定B型肝炎ウイルス感染者給付金、訴訟手当金、追加給付金、定期検査費、母子感染防止医療費、世帯内感染防止医療費又は定期検査手当(以下「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等」という。)の支給を受ける権利を有する者に対し、同一の事由について、国により損害のてん補がされた場合(この法律の施行前に、既に国により損害のてん補がされている場合を含む。)においては、支払基金は、その価額の限度において特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等を支給する義務を免れる。
第21条
【不正利得の徴収】
第23条
【定期検査等を行った者等に対する報告の徴収等】
第24条
【保険医療機関等に対する報告の徴収等】
1
支払基金は、第16条第2項の規定による保険医療機関等に対する定期検査費又は母子感染防止医療費の支払に関し必要があると認めるときは、保険医療機関等の管理者に対して必要な報告を求め、又は当該職員に、保険医療機関等についてその管理者の同意を得て、実地に診療録その他の帳簿書類を検査させることができる。
第29条
【予算等の認可】
第30条
【財務諸表等】
1
支払基金は、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等支給関係業務に関し、毎事業年度、財産目録、貸借対照表及び損益計算書(以下この条において「財務諸表」という。)を作成し、当該事業年度の終了後三月以内に厚生労働大臣に提出し、その承認を受けなければならない。
2
支払基金は、前項の規定により財務諸表を厚生労働大臣に提出するときは、厚生労働省令で定めるところにより、これに当該事業年度の事業報告書及び予算の区分に従い作成した決算報告書並びに財務諸表及び決算報告書に関する監事の意見書を添付しなければならない。
第31条
【利益及び損失の処理】
1
支払基金は、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等支給関係業務に関し、毎事業年度、損益計算において利益を生じたときは、前事業年度から繰り越した損失を埋め、なお残余があるときは、その残余の額は、積立金として整理しなければならない。
2
支払基金は、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等支給関係業務に関し、毎事業年度、損益計算において損失を生じたときは、前項の規定による積立金を減額して整理し、なお不足があるときは、その不足額は繰越欠損金として整理しなければならない。
第32条
【短期借入金】
2
前項の規定による短期借入金は、当該事業年度内に償還しなければならない。ただし、資金の不足のため償還することができないときは、その償還することができない金額に限り、厚生労働大臣の認可を受けて、これを借り換えることができる。
第35条
【報告の徴収等】
1
厚生労働大臣は、支払基金又は第17条第2項の規定による委託を受けた者(以下「受託者」という。)について、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等支給関係業務に関し必要があると認めるときは、その業務又は財産の状況に関する報告を徴し、又は当該職員に実地にその状況を検査させることができる。ただし、受託者に対しては、当該受託業務の範囲内に限る。
第36条
【社会保険診療報酬支払基金法の適用の特例】
1
第17条第1項の規定に基づき社会保険診療報酬支払基金法に定める審査委員会が意見を述べる場合における同法第16条第1項の規定の適用については、同項中「行うため」とあるのは、「行うため並びに特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法第17条第1項の規定に基づき意見を述べるため」とする。
第37条
【特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等支給基金】
1
支払基金は、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等支給関係業務に要する費用(特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等支給関係業務の事務の執行に要する費用を除く。)に充てるため、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等支給基金を設ける。
2
特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等支給基金は、次条の規定により交付された資金及び当該特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等支給基金の運用によって生じた利子その他の収入金の合計額に相当する額から特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等支給関係業務の事務の執行に要する費用に相当する金額を控除した金額をもって充てるものとする。
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参照条文
第39条
【戸籍事項の無料証明】
市町村長(特別区及び地方自治法第252条の19第1項に規定する指定都市においては、区長とする。)は、支払基金又は特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給を受けようとする者に対して、当該市町村(特別区を含む。)の条例で定めるところにより、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給を受けようとする者の戸籍に関し、無料で証明を行うことができる。
附則
第1条
(施行期日)
第2条
(特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の請求期限等の検討)
第3条
(先行訴訟原告等についての訴訟手当金の特例)
第4条
(長期借入金等)
第5条
(平成二十四年度から平成二十八年度までにおける交付金の財源)