犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律
平成25年6月19日 改正
第1条
【目的】
この法律は、預金口座等への振込みを利用して行われた詐欺等の犯罪行為により被害を受けた者に対する被害回復分配金の支払等のため、預金等に係る債権の消滅手続及び被害回復分配金の支払手続等を定め、もって当該犯罪行為により被害を受けた者の財産的被害の迅速な回復等に資することを目的とする。
第2条
【定義】
1
この法律において「金融機関」とは、次に掲げるものをいう。
2
この法律において「預金口座等」とは、預金口座又は貯金口座(金融機関により、預金口座又は貯金口座が犯罪行為に利用されたこと等を理由として、これらの口座に係る契約を解約しその資金を別段預金等により管理する措置がとられている場合におけるこれらの口座であったものを含む。)をいう。
3
この法律において「振込利用犯罪行為」とは、詐欺その他の人の財産を害する罪の犯罪行為であって、財産を得る方法としてその被害を受けた者からの預金口座等への振込みが利用されたものをいう。
4
この法律において「犯罪利用預金口座等」とは、次に掲げる預金口座等をいう。
①
振込利用犯罪行為において、
前項に規定する振込みの振込先となった預金口座等
②
専ら
前号に掲げる預金口座等に係る資金を移転する目的で利用された預金口座等であって、当該預金口座等に係る資金が
同号の振込みに係る資金と実質的に同じであると認められるもの
5
この法律において「被害回復分配金」とは、
第7条の規定により消滅した預金又は貯金(以下「預金等」という。)に係る債権の額に相当する額の金銭を原資として金融機関により支払われる金銭であって、振込利用犯罪行為により失われた財産の価額を基礎として
第4章の規定によりその金額が算出されるものをいう。
第3条
1
金融機関は、当該金融機関の預金口座等について、捜査機関等から当該預金口座等の不正な利用に関する情報の提供があることその他の事情を勘案して犯罪利用預金口座等である疑いがあると認めるときは、当該預金口座等に係る取引の停止等の措置を適切に講ずるものとする。
2
金融機関は、
前項の場合において、
同項の預金口座等に係る取引の状況その他の事情を勘案して当該預金口座等に係る資金を移転する目的で利用された疑いがある他の金融機関の預金口座等があると認めるときは、当該他の金融機関に対して必要な情報を提供するものとする。
第4条
【公告の求め】
1
金融機関は、当該金融機関の預金口座等について、次に掲げる事由その他の事情を勘案して犯罪利用預金口座等であると疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、速やかに、当該預金口座等について現に取引の停止等の措置が講じられていない場合においては当該措置を講ずるとともに、主務省令で定めるところにより、預金保険機構に対し、当該預金口座等に係る預金等に係る債権について、主務省令で定める書類を添えて、当該債権の消滅手続の開始に係る公告をすることを求めなければならない。
①
捜査機関等から当該預金口座等の不正な利用に関する情報の提供があったこと。
②
前号の情報その他の情報に基づいて当該預金口座等に係る振込利用犯罪行為による被害の状況について行った調査の結果
③
金融機関が有する資料により知ることができる当該預金口座等の名義人の住所への連絡その他の方法による当該名義人の所在その他の状況について行った調査の結果
2
前項の規定は、次の各号のいずれかに該当するときは、適用しない。
①
前項に規定する預金口座等についてこれに係る預金等の払戻しを求める訴え(以下この章において「払戻しの訴え」という。)が提起されているとき又は当該預金等に係る債権について強制執行、仮差押え若しくは仮処分の手続その他主務省令で定める手続(以下この章において「強制執行等」という。)が行われているとき。
②
振込利用犯罪行為により被害を受けたと認められる者の状況その他の事情を勘案して、この法律に規定する手続を実施することが適当でないと認められる場合として、主務省令で定める場合に該当するとき。
3
金融機関は、
第1項の預金口座等に係る取引の状況その他の事情を勘案して当該預金口座等に係る資金を移転する目的で利用されたと疑うに足りる相当な理由がある他の金融機関の預金口座等があると認めるときは、当該他の金融機関に対し、
同項の預金口座等に係る主務省令で定める事項を通知しなければならない。
第5条
【公告等】
1
預金保険機構は、
前条第1項の規定による求めがあったときは、遅滞なく、当該求めに係る書面又は
同項に規定する主務省令で定める書類の内容に基づき、次に掲げる事項を公告しなければならない。
①
前条第1項の規定による求めに係る預金口座等(以下この章において「対象預金口座等」という。)に係る預金等に係る債権(以下この章において「対象預金等債権」という。)についてこの章の規定に基づく消滅手続が開始された旨
②
対象預金口座等に係る金融機関及びその店舗並びに預金等の種別及び口座番号
⑤
対象預金口座等に係る名義人その他の対象預金等債権に係る債権者による当該対象預金等債権についての金融機関への権利行使の届出又は払戻しの訴えの提起若しくは強制執行等(以下「権利行使の届出等」という。)に係る期間
⑦
払戻しの訴えの提起又は強制執行等に関し参考となるべき事項として主務省令で定めるもの(当該事項を公告することが困難である旨の金融機関の通知がある事項を除く。)
⑧
第5号に掲げる期間内に権利行使の届出等がないときは、対象預金等債権が消滅する旨
2
前項第5号に掲げる期間は、
同項の規定による公告があった日の翌日から起算して六十日以上でなければならない。
3
預金保険機構は、
前条第1項の規定による求めに係る書面又は
同項に規定する主務省令で定める書類に形式上の不備があると認めるときは、金融機関に対し、相当の期間を定めて、その補正を求めることができる。
4
金融機関は、
第1項第5号に掲げる期間内に対象預金口座等に係る振込利用犯罪行為により被害を受けた旨の申出をした者があるときは、その者に対し、被害回復分配金の支払の申請に関し利便を図るための措置を適切に講ずるものとする。
5
第1項から
第3項までに規定するもののほか、
第1項の規定による公告に関し必要な事項は、主務省令で定める。
第6条
【権利行使の届出等の通知等】
1
金融機関は、
前条第1項第5号に掲げる期間内に権利行使の届出等があったときは、その旨を預金保険機構に通知しなければならない。
2
金融機関は、
前条第1項第5号に掲げる期間内に対象預金口座等が犯罪利用預金口座等でないことが明らかになったときは、その旨を預金保険機構に通知しなければならない。
3
預金保険機構は、前二項の規定による通知を受けたときは、預金等に係る債権の消滅手続が終了した旨を公告しなければならない。
第7条
【預金等に係る債権の消滅】
対象預金等債権について、
第5条第1項第5号に掲げる期間内に権利行使の届出等がなく、かつ、
前条第2項の規定による通知がないときは、当該対象預金等債権は、消滅する。この場合において、預金保険機構は、その旨を公告しなければならない。
第8条
【被害回復分配金の支払】
1
金融機関は、
前条の規定により消滅した預金等に係る債権(以下この章及び
第37条第2項において「消滅預金等債権」という。)の額に相当する額の金銭を原資として、この章の定めるところにより、消滅預金等債権に係る預金口座等(以下この章において「対象預金口座等」という。)に係る振込利用犯罪行為(対象預金口座等が
第2条第4項第2号に掲げる預金口座等である場合にあっては、当該預金口座等に係る資金の移転元となった
同項第1号に掲げる預金口座等に係る振込利用犯罪行為。以下この章において「対象犯罪行為」という。)により被害を受けた者(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。)であってこれにより財産を失ったもの(以下この章において「対象被害者」という。)に対し、被害回復分配金を支払わなければならない。
2
金融機関は、対象被害者について相続その他の一般承継があったときは、この章の定めるところにより、その相続人その他の一般承継人に対し、被害回復分配金を支払わなければならない。
3
前二項の規定は、消滅預金等債権の額が千円未満である場合は、適用しない。この場合において、預金保険機構は、その旨を公告しなければならない。
第9条
【被害回復分配金の支払を受けることができない者】
前条の規定にかかわらず、次の各号のいずれかに該当する者は、被害回復分配金の支払を受けることができない。
①
対象犯罪行為により失われた財産の価額に相当する損害の全部について、そのてん補又は賠償がされた場合(当該対象犯罪行為により当該財産を失った対象被害者又はその一般承継人以外の者により当該てん補又は賠償がされた場合に限る。)における当該対象犯罪行為により当該財産を失った対象被害者又はその一般承継人
②
対象犯罪行為を実行した者若しくはこれに共犯として加功した者、当該対象犯罪行為に関連して不正な利益を得た者、当該対象犯罪行為により財産を失ったことについて自己に不法な原因がある者その他被害回復分配金の支払を受けることが社会通念上適切でない者又は対象被害者がこれらの者のいずれかに該当する場合におけるその一般承継人
第10条
【公告の求め】
1
金融機関は、
第7条の規定により預金等に係る債権が消滅したとき(
第8条第3項に規定する場合を除く。)は、速やかに、主務省令で定めるところにより、預金保険機構に対し、その消滅に係る消滅預金等債権について、主務省令で定める書類を添えて、被害回復分配金の支払手続の開始に係る公告をすることを求めなければならない。
2
前項の規定は、対象預金口座等に係るすべての対象被害者又はその一般承継人が明らかであり、かつ、これらの対象被害者又はその一般承継人のすべてから被害回復分配金の支払を求める旨の申出があるときは、適用しない。この場合において、金融機関は、預金保険機構にその旨を通知しなければならない。
第11条
【公告等】
1
預金保険機構は、
前条第1項の規定による求めがあったときは、遅滞なく、当該求めに係る書面又は
同項に規定する主務省令で定める書類の内容に基づき、次に掲げる事項を公告しなければならない。
①
前条第1項の規定による求めに係る消滅預金等債権についてこの章の規定に基づく被害回復分配金の支払手続が開始された旨
②
対象預金口座等(対象預金口座等が
第2条第4項第2号に掲げる預金口座等である場合における当該対象預金口座等に係る資金の移転元となった
同項第1号に掲げる預金口座等を含む。
次号において同じ。)に係る金融機関及びその店舗並びに預金等の種別及び口座番号
⑦
被害回復分配金の支払の申請に関し参考となるべき事項として主務省令で定めるもの(当該事項を公告することが困難である旨の金融機関の通知がある事項を除く。)
2
前項第5号に掲げる支払申請期間(以下この章において単に「支払申請期間」という。)は、
同項の規定による公告があった日の翌日から起算して三十日以上でなければならない。
3
預金保険機構は、
前条第1項の規定による求めに係る書面又は
同項に規定する主務省令で定める書類に形式上の不備があると認めるときは、金融機関に対し、相当の期間を定めて、その補正を求めることができる。
4
金融機関は、対象犯罪行為による被害を受けたことが疑われる者に対し被害回復分配金の支払手続の実施等について周知するため、必要な情報の提供その他の措置を適切に講ずるものとする。
5
第1項から
第3項までに規定するもののほか、
第1項の規定による公告に関し必要な事項は、主務省令で定める。
第12条
【支払の申請】
1
被害回復分配金の支払を受けようとする者は、支払申請期間(
第10条第2項の規定による通知があった場合においては、金融機関が定める相当の期間。以下同じ。)内に、主務省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書に
第1号及び
第2号に掲げる事項を疎明するに足りる資料を添付して、対象預金口座等に係る金融機関に申請をしなければならない。
①
申請人が対象被害者又はその一般承継人であることの基礎となる事実
③
控除対象額(対象犯罪行為により失われた財産の価額に相当する損害について、そのてん補又は賠償がされた場合(当該対象犯罪行為により当該財産を失った対象被害者又はその一般承継人以外の者により当該てん補又は賠償がされた場合に限る。)における当該てん補額及び賠償額を合算した額をいう。以下同じ。)
2
前項の規定による申請をした対象被害者又はその一般承継人(以下この項において「対象被害者等」という。)について、当該申請に対する
次条の規定による決定が行われるまでの間に一般承継があったときは、当該対象被害者等の一般承継人は、支払申請期間が経過した後であっても、当該一般承継があった日から六十日以内に限り、被害回復分配金の支払の申請をすることができる。この場合において、当該一般承継人は、主務省令で定めるところにより、
前項に規定する申請書に
同項第1号及び
第2号に掲げる事項を疎明するに足りる資料を添付して、これを対象預金口座等に係る金融機関に提出しなければならない。
3
前二項の規定による申請は、対象犯罪行為に係る
第2条第3項に規定する振込みの依頼をした金融機関を経由して、行うことができる。
第13条
【支払の決定】
1
金融機関は、
前条第1項の規定による申請があった場合において、支払申請期間が経過したときは、遅滞なく、
同条第1項又は
第2項に規定する申請書及び資料等に基づき、その申請人が被害回復分配金の支払を受けることができる者に該当するか否かの決定をしなければならない。
同条第2項の規定による申請があった場合において、当該申請に係る一般承継があった日から六十日が経過したときも、同様とする。
2
金融機関は、被害回復分配金の支払を受けることができる者に該当する旨の決定(以下「支払該当者決定」という。)をするに当たっては、その犯罪被害額(対象犯罪行為により失われた財産の価額から控除対象額を控除した額をいう。以下同じ。)を定めなければならない。この場合において、支払該当者決定を受ける者で同一の対象被害者の一般承継人であるものが二人以上ある場合におけるその者に係る犯罪被害額は、当該対象被害者に係る対象犯罪行為により失われた財産の価額から控除対象額を控除した額を当該一般承継人の数で除して得た額とする。
3
前項後段に規定する場合において、当該支払該当者決定を受ける者のうちに各人が支払を受けるべき被害回復分配金の額の割合について合意をした者があるときは、
同項後段の規定にかかわらず、当該合意をした者に係る犯罪被害額は、
同項後段の規定により算出された額のうちこれらの者に係るものを合算した額に当該合意において定められた各人が支払を受けるべき被害回復分配金の額の割合を乗じて得た額とする。
4
前二項に定めるもののほか、犯罪被害額の認定の方法については、主務省令で定める。
第14条
【書面の送付等】
1
金融機関は、
前条の規定による決定を行ったときは、速やかに、その内容を記載した書面を申請人に送付しなければならない。
2
前項の規定にかかわらず、申請人の所在が知れないときその他
同項の書面を送付することができないときは、金融機関において当該書面を保管し、いつでも申請人に交付すべき旨を明らかにする措置として主務省令で定める措置をとることをもって
同項の規定による送付に代えることができる。
第15条
【決定表の作成等】
金融機関は、
第13条の規定による決定を行ったときは、次に掲げる事項を記載した決定表を作成し、申請人の閲覧に供するため、これを主務省令で定める場所に備え置かなければならない。
①
支払該当者決定を受けた者の氏名又は名称及び当該支払該当者決定において定められた犯罪被害額(支払該当者決定を受けた者がないときは、その旨)
第16条
【支払の実施等】
1
金融機関は、すべての申請に対する
第13条の規定による決定を行ったときは、遅滞なく、支払該当者決定を受けた者に対し、被害回復分配金を支払わなければならない。
2
前項の規定により支払う被害回復分配金の額は、支払該当者決定により定めた犯罪被害額の総額(以下この項において「総被害額」という。)が消滅預金等債権の額を超えるときは、この額に当該支払該当者決定を受けた者に係る犯罪被害額の総被害額に対する割合を乗じて得た額(その額に一円未満の端数があるときは、これを切り捨てた額)とし、その他のときは、当該犯罪被害額とする。
3
金融機関は、
第1項の規定により支払う被害回復分配金の額を決定表に記載し、その旨を預金保険機構に通知しなければならない。
4
預金保険機構は、
前項の規定による通知を受けたときは、
第1項の規定により支払う被害回復分配金の額を金融機関が決定表に記載した旨を公告しなければならない。
第17条
【支払該当者決定後の一般承継人に対する被害回復分配金の支払】
1
金融機関は、支払該当者決定が行われた者について一般承継があった場合において、その者に支払うべき被害回復分配金でまだ支払っていないものがあるときは、その者の一般承継人であって当該一般承継があった日から六十日以内に届出をしたものに対し、未払の被害回復分配金を支払わなければならない。この場合において、当該一般承継人は、主務省令で定めるところにより、届出書を金融機関に提出しなければならない。
2
前項の規定により届出をした一般承継人が二人以上ある場合における当該一般承継人に支払う被害回復分配金の額は、
同項に規定する未払の被害回復分配金の額を当該一般承継人の数で除して得た額(その額に一円未満の端数があるときは、これを切り捨てた額)とする。ただし、当該一般承継人のうちに各人が支払を受けるべき被害回復分配金の額の割合について合意をした者があるときは、当該合意をした者に支払う被害回復分配金の額は、この項本文の規定により算出された額のうちこれらの者に係るものを合算した額に当該合意において定められた各人が支払を受けるべき被害回復分配金の額の割合を乗じて得た額(その額に一円未満の端数があるときは、これを切り捨てた額)とする。
第18条
【公告】
1
金融機関は、次の各号のいずれかに該当するときは、速やかに、預金保険機構に対し、被害回復分配金の支払手続の終了に係る公告をすることを求めなければならない。
③
前節又は
第22条第2項の規定により支払うべき被害回復分配金のすべてについて、
同節の規定によりこれを支払い、又は
同項に規定する措置をとったとき。
④
対象預金口座等が犯罪利用預金口座等でないことが明らかになったとき。
2
預金保険機構は、
前項の規定による求めがあったときは、遅滞なく、被害回復分配金の支払手続が終了した旨を公告しなければならない。
第19条
【預金保険機構への納付】
金融機関は、
第8条第3項又は
前条第2項の規定による公告があった場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、当該各号に定める額に相当する額の金銭を、預金保険機構に納付しなければならない。
①
第8条第3項の規定による公告があったとき又は
前条第2項の規定による公告があった場合において被害回復分配金の支払を行わなかったとき。 消滅預金等債権の額
②
前条第2項の規定による公告があった場合において、当該公告に係る対象預金口座等について支払った被害回復分配金の額の合計額が消滅預金等債権の額に満たないとき。 消滅預金等債権の額から当該被害回復分配金の額の合計額を控除した額
第20条
【犯罪被害者等の支援の充実等】
1
預金保険機構は、
前条(
第24条第3項の規定によりその例によることとされる場合を含む。)の規定により金銭の納付を受けたときは、当該納付を受けた金銭の額から当該金銭の額に
第25条第4項の規定による支払に要する費用の額を考慮して主務省令で定める割合を乗じて得た額を控除した額の金銭を、主務省令で定めるところにより、犯罪被害者等の支援の充実のために支出するものとする。
2
預金保険機構は、
前項の主務省令で定める割合を乗じて得た額の金銭について、その全部又は一部が
第25条第4項の規定による支払のため必要がなくなったときは、
前項の主務省令で定めるところにより、これを犯罪被害者等の支援の充実のために支出するものとする。
第21条
【損害賠償請求権等との関係】
1
被害回復分配金を支払ったときは、その支払を受けた者が有する当該被害回復分配金に係る対象犯罪行為に係る損害賠償請求権その他の請求権は、その支払を受けた額の限度において消滅する。
2
金融機関が
第25条第1項又は
第2項の規定による支払を行った場合において、その支払を受けた者が
第4条第1項の規定の適用その他の
前章又はこの章に規定する手続の実施に関し損害賠償請求権その他の請求権を有するときは、当該請求権は、その支払を受けた額の限度において消滅する。
第22条
【被害回復分配金の支払を受ける権利の消滅等】
1
被害回復分配金の支払手続において、被害回復分配金の支払を受ける権利は、
第16条第4項(
次項又は
第24条第2項の規定によりその例によることとされる場合を含む。)の規定による公告があった時から六月間行使しないときは、消滅する。
2
金融機関は、
前項の規定により被害回復分配金の支払を受ける権利が消滅した場合において、同一の対象預金口座等に係る被害回復分配金の支払について他に支払該当者決定を受けた者(被害回復分配金の支払を受ける権利が消滅した者を除く。以下「他の支払該当者」という。)があり、かつ、他の支払該当者について既に支払った被害回復分配金の額が犯罪被害額に満たないときは、遅滞なく、
同項の規定により消滅した権利に係る被害回復分配金の額に相当する額の金銭を原資として、
前節の規定の例により、他の支払該当者又はその一般承継人に対し、被害回復分配金の支払をしなければならない。ただし、
同項の規定により消滅した権利に係る被害回復分配金の額が千円未満である場合は、この限りでない。
第23条
【被害回復分配金の支払を受ける権利の保護】
被害回復分配金の支払を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。ただし、国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押さえる場合は、この限りでない。
第24条
【不正の手段により支払を受けた場合の返還等】
1
金融機関は、偽りその他不正の手段により被害回復分配金の支払を受けた者があるときは、その者からの被害回復分配金の返還に係る措置を適切に講ずるものとする。
2
金融機関は、
前項に規定する者から被害回復分配金の返還を受けた場合において、他の支払該当者があり、かつ、他の支払該当者について既に支払った被害回復分配金の額が犯罪被害額に満たないときは、遅滞なく、返還を受けた額に相当する額の金銭を原資として、
前節の規定の例により、他の支払該当者又はその一般承継人に対し、被害回復分配金の支払をしなければならない。ただし、
同項に規定する者から返還を受けた額が千円未満である場合は、この限りでない。
3
第1項に規定する者から返還を受けた金銭の預金保険機構への納付については、
第19条の規定の例による。
第25条
【犯罪利用預金口座等でないことについて相当な理由があると認められる場合における支払の請求等】
1
対象預金口座等に係る名義人その他の消滅預金等債権に係る債権者(以下この条において「名義人等」という。)は、
第8条第3項又は
第18条第2項の規定による公告があった後において、対象預金口座等に係る金融機関に対し
第5条第1項第5号に掲げる期間内に
同号の権利行使の届出を行わなかったことについてのやむを得ない事情その他の事情、当該対象預金口座等の利用の状況及び当該対象預金口座等への主要な入金の原因について必要な説明が行われたこと等により、当該対象預金口座等が犯罪利用預金口座等でないことについて相当な理由があると認められる場合には、当該金融機関に対し、消滅預金等債権の額に相当する額の支払を請求することができる。
2
名義人等は、対象預金口座等について、当該対象預金口座等に係る金融機関に対し
第5条第1項第5号に掲げる期間内に
同号の権利行使の届出を行わなかったことについてのやむを得ない事情その他の事情について必要な説明を行った場合において、対象犯罪行為による被害に係る財産以外の財産をもって当該対象預金口座等への振込みその他の方法による入金が行われているときは、
第8条第3項又は
第18条第2項の規定による公告があった後において、当該対象預金口座等に係る金融機関に対し、消滅預金等債権の額から当該入金以外の当該対象預金口座等へのすべての入金の合計額を控除した額の支払を請求することができる。ただし、当該消滅預金等債権の額が当該合計額以下であるときは、この限りでない。
3
金融機関は、前二項の規定による支払を行おうとする場合において、
第4条第1項の規定の適用その他の
前章に規定する手続の実施に関し過失がないと思料するときは、その旨を預金保険機構に通知しなければならない。
4
第1項又は
第2項の規定による支払を行った金融機関は、主務省令で定めるところにより、
第4条第1項の規定の適用その他の
前章に規定する手続の実施に関し過失がないことについて相当な理由があると認められるときは、預金保険機構に対し、
第1項又は
第2項の規定により支払った額に相当する額の支払を請求することができる。ただし、当該支払に係る預金口座等について被害回復分配金が支払われている場合において、この章に規定する手続の実施に関し金融機関に過失があるときは、その請求することができる額は、
第1項又は
第2項の規定により支払った額から金融機関の過失により支払った被害回復分配金の額の合計額を控除した額とする。
5
金融機関は、
第1項又は
第2項の規定による支払に係る預金口座等が犯罪利用預金口座等その他不正に利用された預金口座等である疑いがあると認めるときは、当該支払を停止する措置を講ずることができる。
第26条
【預金保険機構の業務の特例】
預金保険機構(以下「機構」という。)は、
預金保険法第34条に規定する業務のほか、
第1条の目的を達成するため、次の業務を行う。
①
預金等に係る債権の消滅手続の開始に係る公告その他
第3章の規定による業務
②
被害回復分配金の支払手続の開始に係る公告その他
前章の規定による業務(
次号及び
第4号に掲げる業務を除く。)
第27条
【公告の方法】
この法律の規定による公告は、インターネットを利用して公衆の閲覧に供する方法でしなければならない。
第28条
【区分経理】
機構は、
第26条の規定による業務(以下「被害回復分配金支払業務」という。)に係る経理については、その他の経理と区分し、特別の勘定を設けて整理しなければならない。
第29条
【借入金】
1
機構は、被害回復分配金支払業務を行うため必要があると認めるときは、内閣総理大臣及び財務大臣の認可を受けて、金融機関その他の者から資金の借入れ(借換えを含む。)をすることができる。
2
前項の規定による借入金の現在額は、政令で定める金額を超えることとなってはならない。
第30条
【手数料】
1
機構は、
第4条第1項又は
第10条第1項の規定による求めを行う金融機関から、被害回復分配金支払業務に係る事務に要する費用を勘案して機構が運営委員会(
預金保険法第14条に規定する運営委員会をいう。)の議決を経て定める額の手数料を徴収することができる。
2
機構は、
前項に規定する手数料の額を定め、又はこれを変更しようとするときは、内閣総理大臣及び財務大臣の認可を受けなければならない。
第32条
【関係行政機関等に対する協力の要請】
金融機関は、この法律に規定する手続の実施に関し、関係行政機関等に対し必要な協力を求めることができる。
第33条
【分別管理】
金融機関は、被害回復分配金の支払の原資となる金銭を、自己の固有財産その他の財産と分別して管理しなければならない。
第34条
【電磁的記録又は電磁的方法による求め等】
第4条第1項の規定による求め(
同項の主務省令で定める書類の提出を含む。)、
第5条第1項第7号の規定による通知、
第6条第1項又は
第2項の規定による通知、
第10条第1項の規定による求め(
同項の主務省令で定める書類の提出を含む。)、
同条第2項の規定による通知、
第11条第1項第7号の規定による通知、
第16条第3項の規定による通知、
第18条第1項の規定による求め及び
第25条第3項の規定による通知は、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして主務省令で定めるものをいう。)の提出又は電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって主務省令で定めるものをいう。)をもって行うことができる。
第35条
【報告又は資料の提出】
3
金融機関等の子会社又は金融機関等から業務の委託を受けた者は、正当な理由があるときは、
前項の規定による報告又は資料の提出を拒むことができる。
第36条
【立入検査】
1
行政庁は、この法律の円滑な実施を確保するため必要があると認めるときは、当該職員に金融機関等(金融機関代理業者を含む。)の営業所若しくは事務所その他の施設に立ち入らせ、その業務若しくは財産の状況に関し質問させ、又は帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
2
行政庁は、
前項の規定による立入り、質問又は検査を行う場合において特に必要があると認めるときは、その必要の限度において、当該職員に当該金融機関等の子会社若しくは当該金融機関等から業務の委託を受けた者の施設に立ち入らせ、当該金融機関等に対する質問若しくは検査に必要な事項に関し質問させ、又は帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
3
前二項の場合において、当該職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があったときは、これを提示しなければならない。
4
第1項及び
第2項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
5
前条第3項の規定は、
第2項の規定による金融機関等の子会社又は金融機関等から業務の委託を受けた者に対する質問及び検査について準用する。
6
行政庁は、必要があると認めるときは、機構に、
第1項又は
第2項の規定による立入り、質問又は検査(
第3章及び
第4章の規定による手続が適正に行われていることを調査するために行うものに限る。)を行わせることができる。この場合において、機構は、その職員に当該立入り、質問又は検査を行わせるものとする。
7
第3項から
第5項までの規定は、
前項の規定による立入り、質問又は検査について準用する。
第37条
【政府による周知等】
1
政府は、この法律の円滑な実施を図るため、振込利用犯罪行為により被害を受けた者の財産的被害の迅速な回復等に資するとのこの法律の趣旨及び被害回復分配金の支払手続等に関する事項その他この法律の内容について、広報活動等を通じて国民に周知を図り、その理解を得るよう努めるものとする。
2
機構は、毎年少なくとも一回、消滅預金等債権に関する事項、被害回復分配金の支払の実施の状況その他のこの法律の実施の状況に関する事項を公表するものとする。
第38条
【主務省令への委任】
この法律に規定するもののほか、この法律の実施のため必要な事項は、主務省令で定める。
第39条
【行政庁】
この法律における行政庁は、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める者とする。
第40条
【主務省令】
この法律における主務省令は、内閣府令・財務省令・厚生労働省令・農林水産省令・経済産業省令とする。ただし、
第20条第1項に規定する主務省令は、内閣府令・財務省令とする。
第41条
【権限の委任】
1
内閣総理大臣は、この法律による権限を金融庁長官に委任する。
2
この法律に規定する行政庁の権限に属する事務(この法律の規定により都道府県知事の権限に属することとされている事務を除く。)の一部は、政令で定めるところにより、都道府県知事が行うこととすることができる。
3
前二項に規定するもののほか、この法律の規定による行政庁の権限の行使に関して必要な事項は、政令で定める。
第43条
1
第35条第1項又は
第2項の規定による報告若しくは資料の提出をせず、又は虚偽の報告若しくは資料の提出をした者は、一年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
2
第36条第1項、
第2項又は
第6項の規定による当該職員又は機構の職員の質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をし、又はこれらの規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者も、
前項と同様とする。
第44条
次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。
第45条
1
法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めがあるものを含む。以下この項において同じ。)の代表者若しくは管理人又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
2
法人でない団体について
前項の規定の適用がある場合には、その代表者又は管理人が、その訴訟行為につき当該法人でない団体を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。
附則
第1条
(施行期日)
この法律は、公布の日から起算して六月を経過した日から施行する。ただし、次条及び附則第四条の規定は、公布の日から施行する。
第2条
(準備行為)
機構は、この法律の施行の日前においても、被害回復分配金支払業務の実施に必要な準備行為をすることができる。
附則
平成19年6月1日
第1条
(施行期日)
この法律は、平成二十年十月一日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
第100条
(処分等に関する経過措置)
この法律の施行前に改正前のそれぞれの法律(これに基づく命令を含む。以下この条において同じ。)の規定によってした処分、手続その他の行為であって、改正後のそれぞれの法律の規定に相当の規定があるものは、この附則に別段の定めがあるものを除き、改正後のそれぞれの法律の相当の規定によってしたものとみなす。
第101条
(罰則の適用に関する経過措置)
この法律(附則第一条各号に掲げる規定にあっては、当該規定。以下この条において同じ。)の施行前にした行為並びにこの附則の規定によりなお従前の例によることとされる場合及びこの附則の規定によりなおその効力を有することとされる場合におけるこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
第102条
(その他の経過措置の政令への委任)
この附則に定めるもののほか、この法律の施行に伴い必要な経過措置は、政令で定める。
附則
平成25年6月19日
第1条
(施行期日)
この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
第36条
(罰則の適用に関する経過措置)
この法律(附則第一条各号に掲げる規定にあっては、当該規定。以下この条において同じ。)の施行前にした行為及びこの附則の規定によりなお従前の例によることとされる場合におけるこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
第37条
(政令への委任)
附則第二条から第十五条まで及び前条に定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)は、政令で定める。
第38条
(検討)
政府は、この法律の施行後五年を目途として、この法律による改正後のそれぞれの法律(以下この条において「改正後の各法律」という。)の施行の状況等を勘案し、必要があると認めるときは、改正後の各法律の規定について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。