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  • 武力攻撃事態における捕虜等の取扱いに関する法律

武力攻撃事態における捕虜等の取扱いに関する法律

平成22年4月27日 改正
第1章
総則
第1条
【目的】
この法律は、武力攻撃事態における捕虜等の拘束、抑留その他の取扱いに関し必要な事項を定めることにより、武力攻撃を排除するために必要な自衛隊の行動が円滑かつ効果的に実施されるようにするとともに、武力攻撃事態において捕虜の待遇に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ条約(以下「第3条約」という。)その他の捕虜等の取扱いに係る国際人道法の的確な実施を確保することを目的とする。
参照条文
第2条
【基本原則】
国は、武力攻撃事態においてこの法律の規定により拘束され又は抑留された者(以下この条において「捕虜等」という。)の取扱いに当たっては、第3条約その他の国際的な武力紛争において適用される国際人道法に基づき、常に人道的な待遇を確保するとともに、捕虜等の生命、身体、健康及び名誉を尊重し、これらに対する侵害又は危難から常に保護しなければならない。
この法律(これに基づく命令を含む。)の規定により捕虜等に対して与えられる保護は、人種、国籍、宗教的又は政治的意見その他これに類する基準に基づく不当に差別的なものであってはならない。
何人も、捕虜等に対し、武力攻撃に対する報復として、いかなる不利益をも与えてはならない。
参照条文
第3条
【定義】
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
武力攻撃武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律次号において「事態対処法」という。)第2条第1号に規定する武力攻撃をいう。
武力攻撃事態事態対処法第2条第2号に規定する武力攻撃事態をいう。
敵国軍隊等 武力攻撃事態において、武力攻撃を行っている外国の軍隊その他これに類する組織をいう。
抑留対象者 次のイからルまでのいずれかに該当する外国人をいう。
敵国軍隊等の構成員(ホ、ト、リ及びヌに掲げる者を除く。)
敵国軍隊等に随伴する者(敵国軍隊等の構成員を除く。)であって、当該敵国軍隊等からその随伴を許可されているもの(ヘ及びチに掲げる者を除く。)
船舶(軍艦及び各国政府が所有し又は運航する船舶であって非商業的目的のみに使用されるもの(以下「軍艦等」という。)を除く。)であって敵国軍隊等の軍艦等に警護されるもの又は武力攻撃事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律第2条第3号に規定する外国軍用品等(ニにおいて「外国軍用品等」という。)を輸送しているものの乗組員(武力攻撃を行っている外国の国籍を有する者に限る。)
国際民間航空条約第3条に規定する民間航空機であって敵国軍用航空機(敵国軍隊等に属し、かつ、その軍用に供する航空機をいう。)に警護されるもの又は外国軍用品等を輸送しているものの乗組員(同条第32条(a)に規定する運航乗組員であって、武力攻撃を行っている外国の国籍を有するものに限る。)
戦地にある軍隊の傷者及び病者の状態の改善に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ条約(以下「第1条約」という。)第24条に規定する傷者若しくは病者の捜索、収容、輸送若しくは治療若しくは疾病の予防に専ら従事する衛生要員又は敵国軍隊等の衛生部隊及び衛生施設の管理に専ら従事する職員
第1条第26条第1項に規定する武力攻撃を行っている外国の赤十字社その他の篤志救済団体で当該外国の政府が正当に認めたものの職員のうち、ホに掲げる者と同一の任務に当たるもの
第1条第24条に規定する敵国軍隊等に随伴する宗教要員
第1条第26条第1項に規定する武力攻撃を行っている外国の赤十字社その他の篤志救済団体で当該外国の政府が正当に認めたものの職員のうち、トに掲げる者と同一の任務に当たるもの
敵国軍隊等の構成員であって、千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書I)(以下「第一追加議定書」という。)第44条3に規定する義務に違反し、捕虜として取り扱われる権利を失うこととなるもの
敵国軍隊等の構成員であって、第一追加議定書第46条の規定により間諜として取り扱われることとなるもの
第一追加議定書第47条2に規定する傭兵
捕虜 第2章第3節又は第4章第2節に規定する手続により前号イからニまでに掲げる外国人に該当する旨の抑留資格認定又は裁決を受けて抑留される者をいう。
衛生要員 第2章第3節又は第4章第2節に規定する手続により第4号ホ又はヘに掲げる外国人に該当する旨の抑留資格認定又は裁決を受けて抑留される者をいう。
宗教要員 第2章第3節又は第4章第2節に規定する手続により第4号ト又はチに掲げる外国人に該当する旨の抑留資格認定又は裁決を受けて抑留される者をいう。
区別義務違反者 第2章第3節又は第4章第2節に規定する手続により第4号リに掲げる外国人に該当する旨の抑留資格認定又は裁決を受けて抑留される者をいう。
間諜 第2章第3節又は第4章第2節に規定する手続により第4号ヌに掲げる外国人に該当する旨の抑留資格認定又は裁決を受けて抑留される者をいう。
傭兵 第2章第3節又は第4章第2節に規定する手続により第4号ルに掲げる外国人に該当する旨の抑留資格認定又は裁決を受けて抑留される者をいう。
資格認定審査請求 第14条第1項第17条第4項及び第106条第1項の規定による抑留資格認定に関する審査請求をいう。
懲戒審査請求 第125条の規定による懲戒処分に関する審査請求をいう。
捕虜収容所自衛隊法第24条第3項に規定する捕虜収容所をいう。
捕虜収容所長自衛隊法第29条の2第2項に規定する所長をいう。
捕虜代表 第3条第80条に規定する任務を遂行する者として、捕虜収容所長から指名されたものをいう。
利益保護国 第一追加議定書第2条(c)に規定する利益保護国をいう。
利益保護国代理 第一追加議定書第2条(d)に規定する代理をいう。
利益保護国代表 我が国領域内において第3条約又は第一追加議定書の規定による利益保護国又は利益保護国代理としての任務を遂行する者であって、我が国政府が承認を与えたものをいう。
第2章
拘束及び抑留資格認定の手続
第1節
拘束
第4条
【拘束措置】
自衛隊法第76条第1項の規定により出動を命ぜられた自衛隊の自衛官(以下「出動自衛官」という。)は、武力攻撃が発生した事態において、服装、所持品の形状、周囲の状況その他の事情に照らし、抑留対象者に該当すると疑うに足りる相当の理由がある者があるときは、これを拘束することができる。
第5条
【危険物等の検査】
出動自衛官は、前条の規定により拘束した者(以下「被拘束者」という。)については、その所持品又は身体について危険物(銃砲、銃剣、銃砲弾、爆発物その他の軍用の武器及びこれらに準ずる物であって、人の生命又は身体に危険を生じさせるものをいう。次項において同じ。)又は軍用書類(地図、軍用規則、命令書、計画書その他の軍用に供する書類をいう。以下同じ。)を所持しているかどうかを調べることができる。
出動自衛官は、前項の規定による検査の結果、危険物又は軍用書類を発見したときは、次条第1項又は第2項の規定による引渡しの時までこれを取り上げ、又は直ちに廃棄することができる。
第6条
【被拘束者の引渡し等】
出動自衛官は、第4条の規定による拘束をしたときは、防衛大臣の定めるところにより、速やかに、被拘束者を指定部隊長(自衛隊法第8条に規定する部隊等であって、連隊、自衛艦その他の防衛省令で定めるものの長をいう。以下同じ。)に引き渡さなければならない。
出動自衛官は、前項の規定にかかわらず、指定部隊長よりも近傍に抑留資格認定官(方面総監、地方総監又は航空方面隊司令官若しくは航空混成団司令その他政令で定める部隊等の長をいう。以下同じ。)が所在するときは、防衛大臣の定めるところにより、被拘束者を当該抑留資格認定官に引き渡すことができる。
出動自衛官は、前二項の規定による引渡しをする場合には、防衛省令で定めるところにより、拘束の日時及び場所その他必要な事項をその引渡しをする指定部隊長又は抑留資格認定官に報告しなければならない。
第7条
【被拘束者に対する特例措置】
出動自衛官は、前条第1項又は第2項の規定にかかわらず、被拘束者の心身の状況、利用可能な輸送手段その他の事情を考慮し、被拘束者がこれらの規定による引渡しのための移動に耐えられないと認めるに足りる相当の理由があるときは、戦闘行為の直接の危険から回避することができる近傍の場所への移動、適切な医薬品等の給与その他の当該被拘束者の状況に応じて可能な範囲の安全措置を講じた上で、直ちに当該被拘束者を放免することができる。
第2節
指定部隊長による確認
第8条
【指定部隊長による確認】
指定部隊長は、第6条第1項の規定により被拘束者の引渡しを受けたときは、速やかに、当該被拘束者について、その氏名、階級又は地位(以下「階級等」という。)、生年月日及び身分証明書番号等(身分証明書番号、個人番号その他これに類する個人を識別するために付された数字、記号又は符号をいう。以下同じ。)を確認しなければならない。
指定部隊長は、前項の規定による確認を行うために必要な範囲内において、被拘束者に対し、質問し、又は身分証明書その他の所持品を検査することができる。
指定部隊長は、第1項の規定による確認の結果について、確認記録を作成しなければならない。
確認記録には、次に掲げる事項を記載し、かつ、指定部隊長がその識別符号(個人を識別するために防衛大臣の定めるところにより指定部隊長に付された数字、記号又は符号をいう。)を記入しなければならない。
被拘束者の氏名、階級等、生年月日及び身分証明書番号等
拘束の日時及び場所
作成年月日
その他防衛省令で定める事項
指定部隊長は、防衛大臣の定めるところによりその指揮監督する自衛官の中から指定した者に、第2項の規定による処分を行わせることができる。
第9条
【確認後の措置】
指定部隊長は、前条第1項の規定による確認の結果、被拘束者が抑留対象者に該当しないと判断したときは、直ちに、当該被拘束者にその旨の通知をしなければならない。
前項の通知をする場合には、指定部隊長は、当該被拘束者に対し、次条に規定する抑留資格認定官による抑留資格認定を受けることができる旨を告知しなければならない。
第1項の場合において、被拘束者が抑留対象者に該当しない旨の判断に同意したときは、指定部隊長は、当該被拘束者に対し、当該判断に同意する旨を記載した文書に署名させるとともに、前条第4項の規定による確認記録の写しを交付の上、直ちにこれを放免しなければならない。
前項の規定により放免する場合を除き、指定部隊長は、防衛大臣の定めるところにより、遅滞なく、被拘束者を確認記録とともに管轄の抑留資格認定官に引き渡さなければならない。
第3節
抑留資格認定
第10条
【抑留資格認定】
抑留資格認定官は、第6条第2項又は前条第4項の規定により被拘束者の引渡しを受けたときは、速やかに、当該被拘束者が抑留対象者に該当するかどうかの認定(抑留対象者に該当する場合にあっては、第3条第4号イからルまでのいずれに該当するかの認定を含む。以下「抑留資格認定」という。)をしなければならない。
参照条文
第11条
【抑留資格認定のための調査】
抑留資格認定官は、抑留資格認定のため必要があるときは、被拘束者を取り調べることができる。
抑留資格認定官は、抑留資格認定のため必要があるときは、参考人の出頭を求め、当該参考人を取り調べることができる。この場合において、当該参考人が他の抑留資格認定官の管理する収容区画等(第172条第1項に規定する区画又は施設をいう。)に留め置かれ、又は捕虜収容所に収容されている者であるときは、抑留資格認定官は、当該他の抑留資格認定官又は捕虜収容所長に対し、当該参考人の取調べを依頼することができる。
抑留資格認定官は、抑留資格認定のため必要があるときは、被拘束者の所持品又は身体の検査をすることができる。ただし、女性の被拘束者の身体を検査する場合には、緊急を要するときを除き、女性の自衛隊員(自衛隊法第2条第5項に規定する隊員をいう。第168条第1項において同じ。)にこれを行わせなければならない。
抑留資格認定官は、抑留資格認定のため必要があるときは、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。
抑留資格認定官は、防衛大臣の定めるところによりその指揮監督する自衛官の中から指定した者(以下この節において「認定補佐官」という。)に、前各項の規定による調査を行わせることができる。
第12条
【認定調査記録の作成】
抑留資格認定官は、前条第1項から第4項までの規定による調査を行ったときは、その結果について、認定調査記録を作成し、かつ、自らこれに署名しなければならない。ただし、同条第5項の規定により認定補佐官が当該調査を行ったときは、当該認定補佐官が、その認定調査記録を作成し、かつ、これに署名するものとする。
前条第2項の規定により参考人の取調べを依頼された抑留資格認定官又は捕虜収容所長についても、前項と同様とする。
第13条
【放免】
抑留資格認定官は、調査の結果、被拘束者が抑留対象者に該当しない旨の抑留資格認定をしたときは、防衛省令で定めるところにより、直ちに、当該被拘束者にその旨の通知をしなければならない。
前項の通知をする場合には、抑留資格認定官は、当該被拘束者に対し、次条第1項の規定による資格認定審査請求をすることができる旨を告知しなければならない。
第1項の場合において、被拘束者が同項の抑留資格認定に同意したときは、抑留資格認定官は、当該被拘束者に対し、当該認定に同意する旨を記載した文書に署名させるとともに、次項の規定による放免書を交付の上、直ちにこれを放免しなければならない。第1項の通知を受けた被拘束者が次条第1項の規定による資格認定審査請求をしなかったときも、同様とする。
前項の規定により交付される放免書には、次に掲げる事項を記載し、かつ、抑留資格認定官がこれに記名押印しなければならない。
被拘束者の氏名及び生年月日
拘束の日時及び場所
放免の理由
交付年月日
その他防衛省令で定める事項
第14条
【資格認定審査請求】
前条第1項の通知を受けた被拘束者は、同項の抑留資格認定に不服があるときは、その通知を受けた時から二十四時間以内に、政令で定めるところにより、不服の理由を記載した書面(次項において「審査請求書」という。)を抑留資格認定官に提出して、捕虜資格認定等審査会に対し、資格認定審査請求をすることができる。
抑留資格認定官は、前項の資格認定審査請求があったときは、捕虜資格認定等審査会に対し、審査請求書、認定調査記録その他の関係書類を送付しなければならない。
第15条
【仮収容】
抑留資格認定官は、被拘束者が前条第1項の資格認定審査請求をしたときは、次項の規定による仮収容令書を発付し、当該被拘束者を仮に収容するものとする。
前項の規定により発付される仮収容令書には、次に掲げる事項を記載し、かつ、抑留資格認定官がこれに記名押印しなければならない。
被拘束者の氏名及び生年月日
拘束の日時及び場所
発付年月日
その他防衛省令で定める事項
仮収容令書は、認定補佐官が執行するものとする。
認定補佐官は、仮収容令書を執行するときは、その仮に収容される者に仮収容令書を示して、速やかに、その者を捕虜収容所長に引き渡さなければならない。
捕虜収容所長は、前項の規定による引渡しを受けたときは、当該引渡しを受けた者を捕虜収容所に収容するものとする。
第16条
【抑留資格認定に係る処分】
抑留資格認定官は、被拘束者が抑留対象者(第3条第4号ロ、ハ又はニに掲げる者(以下この条、次条及び第121条第2項において「軍隊等非構成員捕虜」という。)を除く。)に該当する旨の抑留資格認定をしたときは、防衛省令で定めるところにより、直ちに、当該被拘束者にその旨の通知をしなければならない。
抑留資格認定官は、被拘束者が抑留対象者(軍隊等非構成員捕虜に限る。)に該当する旨の抑留資格認定をする場合においては、併せて、当該被拘束者を抑留する必要性についての判定をしなければならない。この場合において、当該被拘束者の抑留は、武力攻撃を排除するために必要な自衛隊の行動を円滑かつ効果的に実施するため特に必要と認めるときに限るものとし、抑留資格認定官は、あらかじめ、その判定について、防衛大臣の承認を得なければならない。
抑留資格認定官は、被拘束者が抑留対象者(軍隊等非構成員捕虜に限る。)に該当する旨の抑留資格認定をしたときは、防衛省令で定めるところにより、直ちに、当該被拘束者にその旨及び前項の判定の結果を通知しなければならない。
第1項又は前項の通知をする場合には、被拘束者(軍隊等非構成員捕虜に該当する旨の抑留資格認定を受け、かつ、第2項の規定により抑留する必要性がない旨の判定を受けた者を除く。)に対し、第106条第1項の資格認定審査請求をすることができる旨を告知しなければならない。
抑留資格認定官は、第1項又は第3項の通知及び前項の告知をした後、同項に規定する被拘束者に対し、速やかに、第18条の規定による抑留令書を発付し、これを抑留するものとする。
第17条
【放免】
抑留資格認定官は、被拘束者(軍隊等非構成員捕虜に該当する旨の抑留資格認定を受け、かつ、前条第2項の規定により抑留する必要性がない旨の判定を受けた者に限る。)に対し、同条第3項の通知をする場合には、第4項の資格認定審査請求をすることができる旨を告知しなければならない。
前項の場合において、同項に規定する被拘束者が、軍隊等非構成員捕虜に該当する旨の抑留資格認定及び前条第2項の規定による抑留する必要性がない旨の判定に同意したときは、これに同意する旨を記載した文書に署名させるとともに、次項の規定による放免書を交付の上、直ちにこれを放免しなければならない。前項に規定する被拘束者が第4項の資格認定審査請求をしなかったときも、同様とする。
前項の規定により交付する放免書には、次に掲げる事項を記載し、抑留資格認定官がこれに記名押印しなければならない。
被拘束者の氏名、階級等、生年月日及び身分証明書番号等
拘束の日時及び場所
放免の理由
交付年月日
その他防衛省令で定める事項
第1項に規定する被拘束者は、軍隊等非構成員捕虜に該当する旨の抑留資格認定又は前条第2項の規定による抑留する必要性がない旨の判定に不服があるときは、同条第3項の通知を受けた時から二十四時間以内に、政令で定めるところにより、不服の理由を記載した書面を抑留資格認定官に提出して、捕虜資格認定等審査会に対し、資格認定審査請求をすることができる。
第14条第2項及び第15条の規定は、前項の資格認定審査請求があった場合について準用する。
第18条
【抑留令書の方式】
第16条第5項の規定により発付される抑留令書には、次に掲げる事項を記載し、抑留資格認定官がこれに記名押印しなければならない。
被拘束者の氏名、階級等、生年月日及び身分証明書番号等
拘束の日時及び場所
抑留資格(抑留資格認定において当該被拘束者が該当すると認められた第3条第4号イからルまでの区分をいう。以下同じ。)
発付年月日
その他防衛省令で定める事項
第19条
【抑留令書の執行】
抑留令書は、認定補佐官が執行する。
認定補佐官は、抑留令書を執行するときは、その抑留される者に抑留令書を示して、速やかに、その者を捕虜収容所長に引き渡さなければならない。
捕虜収容所長は、前項の規定による引渡しを受けたときは、当該引渡しを受けた者を捕虜収容所に収容するものとする。
第20条
【逃走者に対する措置】
抑留資格認定官は、第6条第2項又は第9条第4項の規定により被拘束者の引渡しを受けた場合において、当該被拘束者が抑留令書によって抑留されていた者であって逃走したものであることが判明したときは、第16条の規定にかかわらず、当該被拘束者に対し、当該抑留令書により再び抑留する旨を告げた上、直ちにこれを捕虜収容所長に引き渡すものとする。
捕虜収容所長は、前項の規定による引渡しを受けたときは、その引渡しを受けた者に対し、できる限り速やかに抑留令書を示さなければならない。
第21条
【防衛省令への委任】
この節に定めるもののほか、抑留資格認定の手続に必要な事項は、防衛省令で定める。
参照条文
第4節
他の法令による手続との関係等
第22条
【他の法令による身体拘束手続との関係】
抑留資格認定官は、次に掲げる者であって抑留対象者に該当すると思料するものがある場合には、第4条の規定によりその身体を拘束しないときであっても、その者について第11条第3項を除く。)の規定の例により抑留資格認定のための調査を行うことができる。
刑事事件又は少年の保護事件に関する法令の規定によりその身体を拘束されている者
出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)第40条に規定する収容令書又は入管法第51条に規定する退去強制令書の発付を受けて収容されている者
抑留資格認定官は、前項の規定による調査の結果、同項第2号に掲げる者が抑留対象者に該当すると認めるときは、その者について、第16条の規定の例により、抑留令書を発付した上、入国警備官(入管法第2条第13号に規定する入国警備官をいう。)からその者の引渡しを受け、これを抑留することができる。
第23条
【第三条約の締約国からの移入】
抑留資格認定官は、第3条約の我が国以外の締約国の軍隊その他これに類する組織によりその身体を拘束されている外国人であって抑留対象者に該当すると思料するものがある場合には、防衛大臣の定めるところにより、第4条の規定によりその身体を拘束しないときであっても、その者について第11条第3項を除く。)の規定の例により抑留資格認定のための調査を行うことができる。
前項の規定による調査の結果、同項の外国人が抑留対象者に該当し、かつ、我が国において抑留することが相当であると認めるときは、当該外国人について、第16条の規定の例により、抑留令書を発付した上、同項の締約国の官憲から当該外国人の引渡しを受け、これを抑留することができる。
第3章
捕虜収容所における抑留及び処遇
第1節
通則
第24条
【基本原則】
捕虜収容所長は、捕虜収容所の適正な管理運営を図り、被収容者(抑留令書により捕虜収容所に収容されている捕虜、衛生要員、宗教要員、区別義務違反者、間諜及び傭兵並びに仮収容令書により捕虜収容所に収容されている者(以下「仮収容者」という。)をいう。以下同じ。)の人権を尊重しつつ、被収容者の抑留資格、階級等、性別及び年齢、その属する国における風俗慣習及び生活様式等に応じた適切な処遇を行うものとする。
被収容者には、捕虜収容所の規律及び秩序の維持その他管理運営上支障がない範囲内において、できる限りの自由が与えられなければならない。
第25条
【利益保護国等への配慮】
捕虜収容所長は、利益保護国代表並びに指定赤十字国際機関(赤十字国際機関であって政令で定めるものをいう。以下同じ。)及び指定援助団体(防衛大臣が指定する被収容者への援助を目的とする団体をいう。以下同じ。)の代表が第3条約及び第一追加議定書の規定により遂行するそれらの任務を尊重し、その遂行に支障が生じないよう特に配慮しなければならない。
第26条
【階級等の区分】
捕虜収容所長は、被収容者(仮収容者を除く。)について、その階級等に応じた適切な処遇を行うため、防衛大臣の定める階級等の基準に従い、将校、准士官、下士官及び兵の区分を指定するものとする。
参照条文
第2節
収容の開始
第27条
【収容開始時の告知】
捕虜収容所長は、被収容者に対し、その収容の開始に際し、次に掲げる事項を告知するものとする。
保健衛生及び医療に関する事項
宗教に関する事項
第44条第1項に規定する遵守事項
懲戒処分に関する事項
物品の貸与等及び自弁に関する事項
書籍等の閲覧に関する事項
面会及び信書の発受に関する事項
苦情の申出に関する事項
前項の規定による告知は、防衛省令で定めるところにより、書面で行う。
第28条
【写真撮影・指紋の採取】
捕虜収容所長は、被収容者につき、その収容の開始に際し、防衛省令で定めるところにより、その者の識別のため必要な限度で、写真の撮影、指紋の採取その他の措置をとるものとする。その後必要が生じたときも、同様とする。
第3節
保健衛生及び医療
第29条
【保健衛生及び医療の原則】
捕虜収容所においては、被収容者の心身の状況を把握することに努め、被収容者の健康及び捕虜収容所内の衛生を保持するため適切な保健衛生上又は医療上の措置を講ずるものとする。
第30条
【被収容者の清潔義務】
被収容者は、身体、着衣及び所持品並びに居住区画(被収容者が主として休息及び就寝のために使用する場所として捕虜収容所長が指定した区画をいう。第45条において同じ。)その他日常使用する場所を清潔にしなければならない。
第31条
【健康診断】
捕虜収容所においては、収容の開始後速やかに、及び毎月一回以上定期的に、被収容者の健康診断を行うものとする。捕虜収容所における保健衛生上必要があるときも、同様とする。
被収容者は、前項の規定による健康診断を受けなければならない。この場合においては、その健康診断の実施のため必要な限度内における採血、エックス線撮影その他の医学的処置を拒むことはできない。
第32条
【医療】
捕虜収容所長は、被収容者が負傷し、若しくは疾病にかかった場合又はこれらの疑いがある場合には、速やかに、防衛省令で定めるところにより、診療その他必要な措置を講ずるものとする。
捕虜収容所長は、前項に規定する措置を講ずるに当たっては、その措置を受ける被収容者の意思を十分に尊重するとともに、被収容者がその属する国の衛生要員による診療を受けることができるよう配慮しなければならない。
捕虜収容所長は、被収容者が感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第12条第1項各号に掲げる者に該当すると認めるときは、防衛大臣の定めるところにより、当該被収容者の隔離、入院その他の必要な措置を講ずるものとする。
参照条文
第33条
【医師相当衛生要員等】
捕虜及び衛生要員のうち、捕虜収容所長が外国において医師に相当する資格を有する者と認めたもの(以下「医師相当衛生要員等」という。)は、医師法第17条の規定にかかわらず、自衛隊病院等(自衛隊法第27条に規定する病院その他防衛省令で定める自衛隊の病院又は診療所をいう。以下同じ。)において、被収容者に対し、医業をすることができる。
医師法第19条第20条及び第23条から第24条の2までの規定は、医師相当衛生要員等について準用する。
第1項の規定により医業をする場合における医師相当衛生要員等は、医師とみなして、保健師助産師看護師法第6条及び第37条歯科衛生士法第13条の3診療放射線技師法第2条第2項第24条の2第26条及び第28条第1項臨床検査技師等に関する法律第2条及び第20条の2薬剤師法第19条及び第22条から第24条まで並びに臨床工学技士法第2条第2項及び第38条の規定を適用する。
第34条
【歯科医師相当衛生要員等】
捕虜及び衛生要員のうち、捕虜収容所長が外国において歯科医師に相当する資格を有する者と認めたもの(以下「歯科医師相当衛生要員等」という。)は、歯科医師法第17条の規定にかかわらず、自衛隊病院等において、被収容者に対し、歯科医業をすることができる。
歯科医師法第19条第20条及び第22条から第23条の2までの規定は、歯科医師相当衛生要員等について準用する。
第1項の規定により歯科医業をする場合における歯科医師相当衛生要員等は、歯科医師とみなして、保健師助産師看護師法第6条及び第37条歯科衛生士法第2条第1項第13条の2及び第13条の3診療放射線技師法第2条第2項第24条の2第26条及び第28条第1項歯科技工士法第2条第1項ただし書及び第18条ただし書、臨床検査技師等に関する法律第2条及び第20条の2並びに薬剤師法第19条及び第22条から第24条までの規定を適用する。
第35条
【薬剤師相当衛生要員等】
捕虜及び衛生要員のうち、捕虜収容所長が外国において薬剤師に相当する資格を有する者と認めたもの(以下「薬剤師相当衛生要員等」という。)は、薬剤師法第19条の規定にかかわらず、自衛隊病院等において、被収容者に対し、授与の目的で調剤することができる。
薬剤師法第21条から第26条までの規定は、薬剤師相当衛生要員等について準用する。この場合において、同法第22条ただし書中「医師若しくは歯科医師」とあるのは「医師、歯科医師、医師相当衛生要員等若しくは歯科医師相当衛生要員等」と、同法第23条及び第24条中「医師、歯科医師又は獣医師」とあるのは「医師、歯科医師、医師相当衛生要員等又は歯科医師相当衛生要員等」と読み替えるものとする。
第36条
【看護師相当衛生要員等】
捕虜及び衛生要員のうち、捕虜収容所長が外国において看護師に相当する資格を有する者と認めたもの(以下「看護師相当衛生要員等」という。)は、保健師助産師看護師法第31条第1項の規定にかかわらず、自衛隊病院等において、被収容者に対し、同法第5条に規定する業をすることができる。
保健師助産師看護師法第37条の規定は、看護師相当衛生要員等について準用する。この場合において、同条中「主治の医師又は歯科医師」とあるのは、「主治の医師、歯科医師、医師相当衛生要員等又は歯科医師相当衛生要員等」と読み替えるものとする。
第1項の規定により保健師助産師看護師法第5条に規定する業をする場合における看護師相当衛生要員等は、看護師とみなして、同法第6条の規定を適用する。
第37条
【准看護師相当衛生要員等】
捕虜及び衛生要員のうち、捕虜収容所長が外国において准看護師に相当する資格を有する者と認めたもの(以下「准看護師相当衛生要員等」という。)は、保健師助産師看護師法第32条の規定にかかわらず、自衛隊病院等において、被収容者に対し、医師、歯科医師、看護師、医師相当衛生要員等、歯科医師相当衛生要員等又は看護師相当衛生要員等の指示を受けて、同法第6条に規定する業をすることができる。
保健師助産師看護師法第37条の規定は、准看護師相当衛生要員等について準用する。この場合において、同条中「主治の医師又は歯科医師」とあるのは、「主治の医師、歯科医師、医師相当衛生要員等又は歯科医師相当衛生要員等」と読み替えるものとする。
第38条
【秘密を守る義務】
医師相当衛生要員等、歯科医師相当衛生要員等、薬剤師相当衛生要員等、看護師相当衛生要員等又は准看護師相当衛生要員等は、正当な理由がなく、その業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない。医師相当衛生要員等、歯科医師相当衛生要員等、薬剤師相当衛生要員等、看護師相当衛生要員等又は准看護師相当衛生要員等でなくなった後においても、同様とする。
第39条
【管理者の任務】
自衛隊病院等の管理者は、当該自衛隊病院等において医療に関する業務に従事する医師相当衛生要員等、歯科医師相当衛生要員等、薬剤師相当衛生要員等、看護師相当衛生要員等、准看護師相当衛生要員等その他の衛生要員及び第68条の規定により第64条第3号に掲げる業務に従事することを許された捕虜の業務遂行に欠けるところのないよう、必要な注意をしなければならない。
第4節
宗教
第40条
【自ら行う宗教上の行為】
捕虜収容所内において被収容者が自ら個別に行う礼拝その他の宗教上の行為は、これを禁止し、又は制限してはならない。ただし、捕虜収容所の規律及び秩序の維持その他管理運営上支障を生ずるおそれがある場合は、この限りでない。
第41条
【宗教上の儀式行事】
捕虜収容所長は、捕虜収容所内において被収容者が希望する場合には、宗教要員その他の宗教家の行う説教、礼拝その他の宗教上の儀式行事に参加することができる機会を設けるように努めなければならない。
捕虜収容所長は、捕虜収容所の規律及び秩序の維持その他管理運営上支障を生ずるおそれがある場合には、被収容者を前項に規定する宗教上の儀式行事に参加させないことができる。
参照条文
第42条
【宗教要員等の行為】
宗教要員等(宗教要員及び第69条の規定により第64条第4号に掲げる業務に従事することを許された捕虜をいう。第84条第3項において同じ。)は、捕虜収容所内において、被収容者の行う第40条に規定する宗教上の行為を補助し、又は前条第1項に規定する宗教上の儀式行事を行うことができる。
第5節
規律及び秩序の維持
第1款
通則
第43条
【捕虜収容所の規律及び秩序】
捕虜収容所の規律及び秩序は、厳正に維持されなければならない。
前項の目的を達成するためこの章の規定によりとる措置は、被収容者の収容を確保し、並びにその処遇のための適切な環境及びその安全かつ平穏な共同生活を維持するため必要な限度を超えてはならない。
第44条
【遵守事項等】
捕虜収容所長は、捕虜収容所内の規律及び秩序を維持するため必要な被収容者の遵守すべき事項(以下「遵守事項」という。)を定めるものとする。
前項の規定により定められるもののほか、捕虜収容所長又はその指定する職員は、捕虜収容所の規律及び秩序を維持するため必要があるときは、被収容者に対し、その生活及び行動について指示することができる。
参照条文
第2款
制止等の措置等
第45条
【身体の検査等】
捕虜収容所長の指定する自衛官は、捕虜収容所の規律及び秩序を維持するため必要があるときは、被収容者の身体、着衣、所持品及び居住区画を検査し、並びに被収容者の所持品を取り上げて一時保管することができる。ただし、女性の被収容者の身体及び着衣を検査する場合には、捕虜収容所長の指定する女性の自衛官が行わなければならない。
第46条
【制止等の措置】
捕虜収容所に勤務する自衛官は、被収容者が逃走し、自己若しくは他人に危害を与え、捕虜収容所の職員の職務の執行を妨げ、その他捕虜収容所の規律及び秩序を著しく害する行為をし、又はこれらの行為をしようとするときは、合理的に必要と判断される限度で、その行為を制止し、当該被収容者を拘束し、その他その行為を抑止するため必要な措置をとることができる。
参照条文
第47条
【用具の使用】
捕虜収容所に勤務する自衛官は、前条の規定による措置をとる場合又は被収容者を護送する場合には、防衛大臣の定めるところにより、手錠その他の防衛省令で定める用具を使用することができる。
第3款
懲戒
第48条
【懲戒処分】
懲戒権者(捕虜収容所長又は捕虜収容所に勤務する幹部自衛官(防衛省設置法第15条第1項に規定する幹部自衛官をいう。)であって政令で定める者をいう。以下同じ。)は、被収容者が次の各号のいずれかの行為をしたときは、当該被収容者に対し、懲戒処分を行うことができる。
逃走すること(第3条第91条第1項(1)から(3)までのいずれかに該当するものを除く。)又は逃走しようとすること。
自己又は他人に危害を与えること、捕虜収容所の職員の職務の執行を妨げること、遵守事項を遵守しないことその他の抑留業務の円滑な実施を妨げること。
信書の発信その他の方法により我が国の防衛上支障のある通信を試みることその他の武力攻撃に資する行為を行うこと。
前三号に掲げる行為を準備し、共謀し、あおり、唆し、又は援助すること。
第49条
【懲戒処分の種類】
懲戒処分の種類は、次のとおりとする。
第74条の規定により給付金計算高に加算すべき捕虜等抑留給付金の二分の一以内の削減
一日につき二時間以内の防衛省令で定める業務への従事
他の被収容者から分離して行う拘禁
懲戒処分を行う期間は、三十日以内とする。前条各号に掲げる行為(以下「反則行為」という。)に該当する二以上の行為に対して同時に懲戒処分を行うときも、同様とする。
懲戒処分は、同一の行為につき、二種類以上を併せて行ってはならない。
第1項第2号に掲げる懲戒処分は、被収容者(仮収容者を除く。)のうち、下士官又は兵として指定された者に対してのみこれを行うことができる。
第1項第2号に掲げる懲戒処分において従事した業務については、第74条の規定による業務従事報奨金の加算はしない。
第1項第3号に掲げる懲戒処分においては、防衛省令で定めるところにより、懲戒権者が指定する階級等及び性別ごとに分離した区画において拘禁する。この場合において、当該懲戒処分を受ける者から、次に掲げる行為の求めがあったときは、これを許さなければならない。
苦情の申出及び請願をすること。
利益保護国代表及び捕虜代表と連絡をとること。
一日につき二時間を下回らない防衛大臣が定める範囲内で希望する時間の戸外における運動をすること。
書籍等の閲覧をすること。
第10節第2款の規定により信書を発受すること。
女性の被収容者に対し第1項第3号に掲げる懲戒処分を行うときは、当該被収容者を男性の捕虜収容所の職員のみの監視の下に置いてはならない。
第50条
【懲戒処分の基準】
懲戒処分を行うに当たっては、反則行為をした被収容者の年齢、心身の状態及び行状、反則行為の性質、軽重、動機及び捕虜収容所の運営に及ぼした影響、反則行為後における当該被収容者の態度その他の事情を考慮しなければならない。
第51条
【懲戒処分を行う手続等】
懲戒権者は、被収容者が反則行為をした疑いがあると思料するときは、反則行為の有無及び前条の規定により考慮すべき事情について、できる限り速やかに調査を行わなければならない。
前項の調査のため必要があるときは、防衛省令で定めるところにより、反則行為をした疑いのある被収容者を他の被収容者から隔離することができる。この場合において、当該被収容者を隔離する期間は、十四日を超えてはならない。
懲戒処分を行うときは、あらかじめ、反則行為をした疑いのある被収容者に事実の要旨を告げた上、弁解の機会を与えなければならない。この場合において、当該被収容者は、通訳人による通訳を求めることができる。
前項の事実を告げられた被収容者は、必要な参考人の陳述を求めることができる。
懲戒権者は、被収容者に懲戒処分を行うことを決定したときは、防衛省令で定めるところにより、当該被収容者及び捕虜代表に対し、その旨及び当該懲戒処分の内容を通知しなければならない。
捕虜収容所長は、防衛省令で定めるところにより、懲戒処分に係る記録を作成し、及び保存しなければならない。
捕虜収容所長は、懲戒処分を受けた被収容者、利益保護国代表その他防衛省令で定める者から前項の記録の閲覧を求められたときは、これを許可しなければならない。
第52条
【懲戒処分の執行】
懲戒処分の執行は、捕虜収容所内において行わなければならない。
懲戒処分の執行は、前条第5項の規定による通知の時から一月を経過したときは、これを開始してはならない。
懲戒処分の執行は、直近の懲戒処分の執行が終了した後三日以内は、これをすることはできない。ただし、当該懲戒処分の期間及び当該直近の懲戒処分の期間がいずれも十日に満たないときは、この限りでない。
第53条
【懲戒処分の不執行等】
懲戒権者は、懲戒処分の通知を受けた被収容者について、その通知の後における当該被収容者の態度その他の事情を考慮し、相当の理由があると認めるときは、当該懲戒処分の全部又は一部の執行をしないことができる。
第54条
【懲戒処分執行後の監視】
捕虜収容所長は、第48条第1号に掲げる行為をしたことを理由に懲戒処分を受けた被収容者については、当該懲戒処分の執行が終了した後、これを防衛省令で定める監視の下に置くことができる。
第55条
【防衛省令への委任】
この款に定めるもののほか、懲戒処分に関する手続に関し必要な事項は、防衛省令で定める。
第6節
捕虜代表及び捕虜代表補助者
第56条
【捕虜代表及び捕虜代表補助者の指名】
捕虜収容所長は、防衛大臣の定めるところにより、捕虜代表及び捕虜代表を補佐する者(以下「捕虜代表補助者」という。)を指名するものとする。
第57条
【便益の提供】
捕虜収容所長は、抑留業務の円滑な実施を妨げない範囲内において、捕虜代表及び捕虜代表補助者に対し、これらの任務を遂行するために必要な便益を与えなければならない。
第7節
被収容者の処遇
第58条
【物品の貸与等の原則】
被収容者には、捕虜収容所における日常生活のために必要な衣類及び寝具を貸与し、並びに食事及び湯茶を支給する。
被収容者には、前項に定めるもののほか、日用品、筆記具その他の捕虜収容所における日常生活のために必要な物品を貸与し、又は支給することができる。
前二項の規定により貸与し、又は支給される物品は、被収容者の健康を保持するに足り、かつ、国民生活の実情等を勘案し、被収容者としての地位に照らして、適当と認められるものでなければならない。
第59条
【自弁の物品の使用等】
捕虜収容所長は、被収容者が、次に掲げる物品で防衛省令で定める品目のものについて、自弁のものを使用し、又は摂取することを申請した場合には、捕虜収容所の規律及び秩序の維持その他管理運営上支障がない限り、これを許すものとする。
衣類及び寝具
食料品及び飲料
日用品、文房具その他の捕虜収容所における日常生活に用いる物品
し好品
その他防衛省令で定める物品
第60条
【書籍の閲覧の機会及び時事の報道に接する機会】
捕虜収容所長は、捕虜収容所の規律及び秩序の維持その他管理運営上支障がない限り、被収容者に対し、書籍の閲覧の機会及び時事の報道に接する機会を与えるよう努めなければならない。
参照条文
第61条
【日課】
捕虜収容所長は、防衛省令で定める基準に従い、捕虜収容所における日課を定め、これを被収容者に告知するものとする。
第62条
【活動等への援助】
捕虜収容所長は、防衛省令で定めるところにより、被収容者に対し、知的、教育的及び娯楽的活動、運動競技その他の活動について、援助を与えるものとする。
捕虜収容所長は、防衛省令で定めるところにより、被収容者のうち、将校、准士官又は下士官として指定された者に対し、自己契約作業(これらの者が捕虜収容所の外部の者との請負契約により行う物品の製作その他の作業をいう。)について、援助を与えるものとする。
第63条
【防衛省令への委任】
この節に定めるもののほか、被収容者の処遇に関し必要な事項は、防衛省令で定める。
第8節
捕虜の業務
第64条
【業務の種類】
捕虜収容所長は、次に掲げる業務を捕虜に行わせることができる。
捕虜収容所の維持運営に関する業務
通訳又は翻訳の業務
被収容者に対する医療に関する業務
被収容者の宗教上の行為の補助その他の宗教活動に関する業務
第65条
【将校及び准士官の業務】
捕虜収容所長は、将校及び准士官として指定された捕虜に、その希望により、前条第1号又は第2号に掲げる業務に従事することを許すことができる。
第66条
【下士官の業務】
捕虜収容所長は、下士官として指定された捕虜に、第64条第1号に掲げる業務(監督者として行うものに限る。)に従事させることができる。
捕虜収容所長は、下士官として指定された捕虜に、その希望により、第64条第1号又は第2号に掲げる業務に従事することを許すことができる。
第67条
【兵の業務】
捕虜収容所長は、兵として指定された捕虜に、第64条第1号に掲げる業務に従事させることができる。
捕虜収容所長は、兵として指定された捕虜に、その希望により、第64条第2号に掲げる業務に従事することを許すことができる。
第68条
【医療に関する業務】
捕虜収容所長は、捕虜に、その希望により、第64条第3号に掲げる業務に従事することを許すことができる。
第69条
【宗教上の行為の補助等に関する業務】
捕虜収容所長は、捕虜のうち、宗教、祈とう又は祭祀の職にあった者に、その希望により、第64条第4号に掲げる業務に従事することを許すことができる。
参照条文
第70条
【業務の実施】
捕虜の業務は、できる限り、その年齢、性別、階級等、身体的適性及び健康状態その他の事情を考慮した上、実施するものとする。
第71条
【業務の条件】
捕虜収容所長は、業務を行う捕虜の安全及び衛生を確保するため必要な措置を講じなければならない。
捕虜は、捕虜収容所長が前項の規定に基づき講ずる措置に応じて、必要な事項を守らなければならない。
第1項の規定により捕虜収容所長が講ずべき措置及び前項の規定により捕虜が守らなければならない事項は、労働安全衛生法その他の法令に定める労働者の安全及び衛生を確保するため事業者が講ずべき措置及び労働者が守らなければならない事項の例により、防衛大臣が定める。
参照条文
第72条
【防衛省令への委任】
この節に定めるもののほか、業務の方法その他業務の実施に関し必要な事項は、防衛省令で定める。
第9節
捕虜等抑留給付金
第73条
【捕虜等抑留給付金】
捕虜収容所における捕虜、衛生要員及び宗教要員(以下この節において「給付対象捕虜等」という。)に対しては、捕虜等抑留給付金として、この節に定めるところにより、基礎的給付金(第3条第60条に規定する俸給の前払に相当するものをいう。以下同じ。)及び業務従事報奨金(前節の規定により従事した業務に対応する給付金をいう。以下同じ。)を支給するものとする。
捕虜収容所長は、防衛省令で定めるところにより、給付金台帳を作成し、給付対象捕虜等ごとに捕虜等抑留給付金の計算高(以下この節において「給付金計算高」という。)を記録して、これを管理しなければならない。
第74条
【捕虜等抑留給付金の額及び加算】
給付金計算高に加算すべき捕虜等抑留給付金の額は、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める額とする。
基礎的給付金 給付対象捕虜等の階級等ごとに防衛省令で定める月額
業務従事報奨金 防衛省令で定めるところにより、捕虜が業務を行った日の属する月ごとに、業務の種類及び内容、当該業務に要する知識及び技能の程度等を考慮して防衛大臣が定める基準に従い、その月の業務に対応するものとして算出した金額
捕虜等抑留給付金の額は、毎月一回の防衛大臣が定める日に、基礎的給付金にあってはその月の月額の全額、業務従事報奨金にあってはその月の前月における金額の全額を給付金計算高に加算するものとする。
第75条
【捕虜等抑留給付金の支給等】
捕虜収容所長は、給付対象捕虜等から、第59条の規定により使用し、又は摂取することを許された物品の購入(次項において「自弁物品の購入」という。)のため、捕虜等抑留給付金の支給を受けることを希望する旨の申出があったときは、基礎的給付金にあっては当該申出のあった日の属する月の月額及び業務従事報奨金にあっては当該申出のあった日の属する月の前月における金額の合計額の範囲内で支給するものとする。
捕虜収容所長は、給付対象捕虜等から、自弁物品の購入以外の目的で、又は前項に規定する合計額を超えて捕虜等抑留給付金の支給を受けることを希望する旨の申出があった場合において、その支給が抑留業務の効率的かつ円滑な運営に支障がないと認めるときは、当該給付対象捕虜等に係る給付金計算高の範囲内で、当該申出の額の全部又は一部を支給することができる。
前二項の規定により捕虜等抑留給付金を支給した場合には、その支給額を給付金計算高から減額する。
第76条
【捕虜等抑留給付金の加算の制限】
第58条第2項の規定により給付対象捕虜等に物品が貸与され、又は支給された場合には、その貸与又は支給の日の属する月の基礎的給付金の全部又は一部を給付金計算高に加算しないことができる。
第77条
【抑留終了時の捕虜等抑留給付金の支給等】
捕虜収容所長は、給付対象捕虜等が次の各号のいずれかに該当することとなった場合には、当該給付対象捕虜等に対し、基礎的給付金にあってはその給付金計算高を証する書面を交付し、業務従事報奨金にあってはその給付金計算高の全額を支給するものとする。
第144条の規定により送還されるとき。
第146条の規定により許可されて退去するとき。
第147条の規定により移出をされるとき。
第149条の規定により放免されるとき。
第78条
【給付金台帳の閲覧】
給付対象捕虜等、捕虜代表又は利益保護国代表は、防衛省令で定めるところにより、第73条第2項に規定する給付金台帳を閲覧することができる。
第79条
【防衛省令への委任】
この節に定めるもののほか、捕虜等抑留給付金の支給、給付金台帳の管理及び記録その他捕虜等抑留給付金の取扱いに関し必要な事項は、防衛省令で定める。
第10節
外部との交通
第1款
面会
附則
第1条
(施行期日)
この法律は、第一追加議定書が日本国について効力を生ずる日から施行する。
附則
平成17年5月2日
第1条
(施行期日)
この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
附則
平成18年12月22日
第1条
(施行期日)
この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、附則第三十二条第二項の規定は、公布の日から施行する。
附則
平成19年6月8日
第1条
(施行期日)
この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
附則
平成20年3月31日
第1条
(施行期日)
この法律は、平成二十年四月一日から施行する。
第7条
(検討)
政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、第二条の規定による改正後の関税法の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、同法の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
附則
平成22年4月27日
第1条
(施行期日)
この法律は、公布の日から施行する。ただし、第二条中刑事訴訟法第四百九十九条の改正規定並びに附則第四条及び第五条の規定は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

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