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  • 信託法

信託法

平成25年5月31日 改正
第1章
総則
第1条
【趣旨】
信託の要件、効力等については、他の法令に定めるもののほか、この法律の定めるところによる。
第2条
【定義】
この法律において「信託」とは、次条各号に掲げる方法のいずれかにより、特定の者が一定の目的(専らその者の利益を図る目的を除く。同条において同じ。)に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべきものとすることをいう。
この法律において「信託行為」とは、次の各号に掲げる信託の区分に応じ、当該各号に定めるものをいう。
次条第1号に掲げる方法による信託 同号の信託契約
次条第2号に掲げる方法による信託 同号の遺言
次条第3号に掲げる方法による信託 同号の書面又は電磁的記録(同号に規定する電磁的記録をいう。)によってする意思表示
この法律において「信託財産」とは、受託者に属する財産であって、信託により管理又は処分をすべき一切の財産をいう。
この法律において「委託者」とは、次条各号に掲げる方法により信託をする者をいう。
この法律において「受託者」とは、信託行為の定めに従い、信託財産に属する財産の管理又は処分及びその他の信託の目的の達成のために必要な行為をすべき義務を負う者をいう。
この法律において「受益者」とは、受益権を有する者をいう。
この法律において「受益権」とは、信託行為に基づいて受託者が受益者に対し負う債務であって信託財産に属する財産の引渡しその他の信託財産に係る給付をすべきものに係る債権(以下「受益債権」という。)及びこれを確保するためにこの法律の規定に基づいて受託者その他の者に対し一定の行為を求めることができる権利をいう。
この法律において「固有財産」とは、受託者に属する財産であって、信託財産に属する財産でない一切の財産をいう。
この法律において「信託財産責任負担債務」とは、受託者が信託財産に属する財産をもって履行する責任を負う債務をいう。
10
この法律において「信託の併合」とは、受託者を同一とする二以上の信託の信託財産の全部を一の新たな信託の信託財産とすることをいう。
11
この法律において「吸収信託分割」とは、ある信託の信託財産の一部を受託者を同一とする他の信託の信託財産として移転することをいい、「新規信託分割」とは、ある信託の信託財産の一部を受託者を同一とする新たな信託の信託財産として移転することをいい、「信託の分割」とは、吸収信託分割又は新規信託分割をいう。
12
この法律において「限定責任信託」とは、受託者が当該信託のすべての信託財産責任負担債務について信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負う信託をいう。
第3条
【信託の方法】
信託は、次に掲げる方法のいずれかによってする。
特定の者との間で、当該特定の者に対し財産の譲渡、担保権の設定その他の財産の処分をする旨並びに当該特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の契約(以下「信託契約」という。)を締結する方法
特定の者に対し財産の譲渡、担保権の設定その他の財産の処分をする旨並びに当該特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の遺言をする方法
特定の者が一定の目的に従い自己の有する一定の財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為を自らすべき旨の意思表示を公正証書その他の書面又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)で当該目的、当該財産の特定に必要な事項その他の法務省令で定める事項を記載し又は記録したものによってする方法
参照条文
第2条 第4条 第5条 第6条 第23条 第147条 第258条 第260条 第266条 回路配置利用権等の登録に関する政令第54条 株式会社国際協力銀行法第2条 株式会社商工組合中央金庫法第21条 株式会社日本政策金融公庫法第54条 企業再建整備法施行令第1条 金融機関再建整備法第25条の4 第25条の5 金融商品取引業等に関する内閣府令第84条 第295条 金融庁組織令第11条 漁業登録令第50条 銀行法第11条 公共施設等運営権登録令第49条 公共施設等運営権登録令施行規則第36条 鉱業登録令第67条 航空機登録令第50条 国債規則第40条の5 信託業法第2条 第30条 第50条の2 第91条 信託業法施行規則第43条 第51条の2 第51条の3 第51条の4 第51条の5 第51条の6 第51条の7 第51条の9 第51条の10 信託業法施行令第12条 第15条の2 第15条の3 信託計算規則第2条 信託法施行規則第2条 第3条 第25条 信託法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第3条 信用金庫法第53条 第54条 信用金庫法施行規則第17条 森林組合法第14条 自動車登録令第62条 水産業協同組合法第11条 第87条 第93条 第97条 相続税法施行令第1条の11 租税特別措置法施行令第4条の7の2 第25条の8 中小企業等協同組合法第9条の8 第9条の9 長期信用銀行法第6条 著作権法施行令第35条 投資信託及び投資法人に関する法律第7条 特許登録令第57条 特許法施行規則第26条 独立行政法人住宅金融支援機構法第13条 第23条 独立行政法人都市再生機構法第36条 第38条 農業協同組合法第10条 第11条の28 農業経営基盤強化促進法第31条 農業用動産抵当登記規則第40条 農林中央金庫法第54条 犯罪による収益の移転防止に関する法律施行令第6条 品種登録規則第45条 不動産登記規則第47条 不動産登記法第98条 不動産登記令第8条 保険業法施行規則第52条の14 労働金庫法第58条 第58条の2 労働金庫法施行規則第13条
第4条
【信託の効力の発生】
前条第1号に掲げる方法によってされる信託は、委託者となるべき者と受託者となるべき者との間の信託契約の締結によってその効力を生ずる。
前条第2号に掲げる方法によってされる信託は、当該遺言の効力の発生によってその効力を生ずる。
前条第3号に掲げる方法によってされる信託は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定めるものによってその効力を生ずる。
公正証書又は公証人の認証を受けた書面若しくは電磁的記録(以下この号及び次号において「公正証書等」と総称する。)によってされる場合 当該公正証書等の作成
公正証書等以外の書面又は電磁的記録によってされる場合 受益者となるべき者として指定された第三者(当該第三者が二人以上ある場合にあっては、その一人)に対する確定日付のある証書による当該信託がされた旨及びその内容の通知
前三項の規定にかかわらず、信託は、信託行為に停止条件又は始期が付されているときは、当該停止条件の成就又は当該始期の到来によってその効力を生ずる。
第5条
【遺言信託における信託の引受けの催告】
第3条第2号に掲げる方法によって信託がされた場合において、当該遺言に受託者となるべき者を指定する定めがあるときは、利害関係人は、受託者となるべき者として指定された者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に信託の引受けをするかどうかを確答すべき旨を催告することができる。ただし、当該定めに停止条件又は始期が付されているときは、当該停止条件が成就し、又は当該始期が到来した後に限る。
前項の規定による催告があった場合において、受託者となるべき者として指定された者は、同項の期間内に委託者の相続人に対し確答をしないときは、信託の引受けをしなかったものとみなす。
委託者の相続人が現に存しない場合における前項の規定の適用については、同項中「委託者の相続人」とあるのは、「受益者(二人以上の受益者が現に存する場合にあってはその一人、信託管理人が現に存する場合にあっては信託管理人)」とする。
第6条
【遺言信託における裁判所による受託者の選任】
第3条第2号に掲げる方法によって信託がされた場合において、当該遺言に受託者の指定に関する定めがないとき、又は受託者となるべき者として指定された者が信託の引受けをせず、若しくはこれをすることができないときは、裁判所は、利害関係人の申立てにより、受託者を選任することができる。
前項の申立てについての裁判には、理由を付さなければならない。
第1項の規定による受託者の選任の裁判に対しては、受益者又は既に存する受託者に限り、即時抗告をすることができる。
前項の即時抗告は、執行停止の効力を有する。
第7条
【受託者の資格】
信託は、未成年者又は成年被後見人若しくは被保佐人を受託者としてすることができない。
第8条
【受託者の利益享受の禁止】
受託者は、受益者として信託の利益を享受する場合を除き、何人の名義をもってするかを問わず、信託の利益を享受することができない。
第9条
【脱法信託の禁止】
法令によりある財産権を享有することができない者は、その権利を有するのと同一の利益を受益者として享受することができない。
第10条
【訴訟信託の禁止】
信託は、訴訟行為をさせることを主たる目的としてすることができない。
第11条
【詐害信託の取消し等】
委託者がその債権者を害することを知って信託をした場合には、受託者が債権者を害すべき事実を知っていたか否かにかかわらず、債権者は、受託者を被告として、民法第424条第1項の規定による取消しを裁判所に請求することができる。ただし、受益者が現に存する場合において、その受益者の全部又は一部が、受益者としての指定(信託行為の定めにより又は第89条第1項に規定する受益者指定権等の行使により受益者又は変更後の受益者として指定されることをいう。以下同じ。)を受けたことを知った時又は受益権を譲り受けた時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。
前項の規定による請求を認容する判決が確定した場合において、信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者(委託者であるものを除く。)が当該債権を取得した時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、委託者は、当該債権を有する債権者に対し、当該信託財産責任負担債務について弁済の責任を負う。ただし、同項の規定による取消しにより受託者から委託者に移転する財産の価額を限度とする。
前項の規定の適用については、第49条第1項第53条第2項及び第54条第4項において準用する場合を含む。)の規定により受託者が有する権利は、金銭債権とみなす。
委託者がその債権者を害することを知って信託をした場合において、受益者が受託者から信託財産に属する財産の給付を受けたときは、債権者は、受益者を被告として、民法第424条第1項の規定による取消しを裁判所に請求することができる。ただし、当該受益者が、受益者としての指定を受けたことを知った時又は受益権を譲り受けた時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。
委託者がその債権者を害することを知って信託をした場合には、債権者は、受益者を被告として、その受益権を委託者に譲り渡すことを訴えをもって請求することができる。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。
民法第426条の規定は、前項の規定による請求権について準用する。
受益者の指定又は受益権の譲渡に当たっては、第1項本文、第4項本文又は第5項前段の規定の適用を不当に免れる目的で、債権者を害すべき事実を知らない者(以下この項において「善意者」という。)を無償(無償と同視すべき有償を含む。以下この項において同じ。)で受益者として指定し、又は善意者に対し無償で受益権を譲り渡してはならない。
前項の規定に違反する受益者の指定又は受益権の譲渡により受益者となった者については、第1項ただし書及び第4項ただし書(第5項後段において準用する場合を含む。)の規定は、適用しない。
第12条
【詐害信託の否認等】
破産者が委託者としてした信託における破産法第160条第1項の規定の適用については、同項各号中「これによって利益を受けた者」とあるのは、「これによって利益を受けた受益者の全部又は一部」とする。
破産者が破産債権者を害することを知って委託者として信託をした場合には、破産管財人は、受益者を被告として、その受益権を破産財団に返還することを訴えをもって請求することができる。この場合においては、前条第4項ただし書の規定を準用する。
再生債務者が委託者としてした信託における民事再生法第127条第1項の規定の適用については、同項各号中「これによって利益を受けた者」とあるのは、「これによって利益を受けた受益者の全部又は一部」とする。
再生債務者が再生債権者を害することを知って委託者として信託をした場合には、否認権限を有する監督委員又は管財人は、受益者を被告として、その受益権を再生債務者財産(民事再生法第12条第1項第1号に規定する再生債務者財産をいう。第25条第4項において同じ。)に返還することを訴えをもって請求することができる。この場合においては、前条第4項ただし書の規定を準用する。
前二項の規定は、更生会社(会社更生法第2条第7項に規定する更生会社又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律第169条第7項に規定する更生会社をいう。)又は更生協同組織金融機関(同法第4条第7項に規定する更生協同組織金融機関をいう。)について準用する。この場合において、第3項中「民事再生法第127条第1項」とあるのは「会社更生法第86条第1項並びに金融機関等の更生手続の特例等に関する法律第57条第1項及び第223条第1項」と、「同項各号」とあるのは「これらの規定」と、前項中「再生債権者」とあるのは「更生債権者又は更生担保権者」と、「否認権限を有する監督委員又は管財人」とあるのは「管財人」と、「再生債務者財産(民事再生法第12条第1項第1号に規定する再生債務者財産をいう。第25条第4項において同じ。)」とあるのは「更生会社財産(会社更生法第2条第14項に規定する更生会社財産又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律第169条第14項に規定する更生会社財産をいう。)又は更生協同組織金融機関財産(同法第4条第14項に規定する更生協同組織金融機関財産をいう。)」と読み替えるものとする。
第13条
【会計の原則】
信託の会計は、一般に公正妥当と認められる会計の慣行に従うものとする。
第2章
信託財産等
第14条
【信託財産に属する財産の対抗要件】
登記又は登録をしなければ権利の得喪及び変更を第三者に対抗することができない財産については、信託の登記又は登録をしなければ、当該財産が信託財産に属することを第三者に対抗することができない。
第15条
【信託財産に属する財産の占有の瑕疵の承継】
受託者は、信託財産に属する財産の占有について、委託者の占有の瑕疵を承継する。
第16条
【信託財産の範囲】
信託行為において信託財産に属すべきものと定められた財産のほか、次に掲げる財産は、信託財産に属する。
信託財産に属する財産の管理、処分、滅失、損傷その他の事由により受託者が得た財産
次条第18条第19条第84条の規定により読み替えて適用する場合を含む。以下この号において同じ。)、第226条第3項第228条第3項及び第254条第2項の規定により信託財産に属することとなった財産(第18条第1項同条第3項において準用する場合を含む。)の規定により信託財産に属するものとみなされた共有持分及び第19条の規定による分割によって信託財産に属することとされた財産を含む。)
第17条
【信託財産に属する財産の付合等】
信託財産に属する財産と固有財産若しくは他の信託の信託財産に属する財産との付合若しくは混和又はこれらの財産を材料とする加工があった場合には、各信託の信託財産及び固有財産に属する財産は各別の所有者に属するものとみなして、民法第242条から第248条までの規定を適用する。
参照条文
第18条
信託財産に属する財産と固有財産に属する財産とを識別することができなくなった場合(前条に規定する場合を除く。)には、各財産の共有持分が信託財産と固有財産とに属するものとみなす。この場合において、その共有持分の割合は、その識別することができなくなった当時における各財産の価格の割合に応ずる。
前項の共有持分は、相等しいものと推定する。
前二項の規定は、ある信託の受託者が他の信託の受託者を兼ねる場合において、各信託の信託財産に属する財産を識別することができなくなったとき(前条に規定する場合を除く。)について準用する。この場合において、第1項中「信託財産と固有財産と」とあるのは、「各信託の信託財産」と読み替えるものとする。
参照条文
第19条
【信託財産と固有財産等とに属する共有物の分割】
受託者に属する特定の財産について、その共有持分が信託財産と固有財産とに属する場合には、次に掲げる方法により、当該財産の分割をすることができる。
信託行為において定めた方法
受託者と受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人)との協議による方法
分割をすることが信託の目的の達成のために合理的に必要と認められる場合であって、受益者の利益を害しないことが明らかであるとき、又は当該分割の信託財産に与える影響、当該分割の目的及び態様、受託者の受益者との実質的な利害関係の状況その他の事情に照らして正当な理由があるときは、受託者が決する方法
前項に規定する場合において、同項第2号の協議が調わないときその他同項各号に掲げる方法による分割をすることができないときは、受託者又は受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人)は、裁判所に対し、同項の共有物の分割を請求することができる。
受託者に属する特定の財産について、その共有持分が信託財産と他の信託の信託財産とに属する場合には、次に掲げる方法により、当該財産の分割をすることができる。
各信託の信託行為において定めた方法
各信託の受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人)の協議による方法
各信託について、分割をすることが信託の目的の達成のために合理的に必要と認められる場合であって、受益者の利益を害しないことが明らかであるとき、又は当該分割の信託財産に与える影響、当該分割の目的及び態様、受託者の受益者との実質的な利害関係の状況その他の事情に照らして正当な理由があるときは、各信託の受託者が決する方法
前項に規定する場合において、同項第2号の協議が調わないときその他同項各号に掲げる方法による分割をすることができないときは、各信託の受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人)は、裁判所に対し、同項の共有物の分割を請求することができる。
第20条
【信託財産に属する財産についての混同の特例】
同一物について所有権及び他の物権が信託財産と固有財産又は他の信託の信託財産とにそれぞれ帰属した場合には、民法第179条第1項本文の規定にかかわらず、当該他の物権は、消滅しない。
所有権以外の物権及びこれを目的とする他の権利が信託財産と固有財産又は他の信託の信託財産とにそれぞれ帰属した場合には、民法第179条第2項前段の規定にかかわらず、当該他の権利は、消滅しない。
次に掲げる場合には、民法第520条本文の規定にかかわらず、当該債権は、消滅しない。
信託財産に属する債権に係る債務が受託者に帰属した場合(信託財産責任負担債務となった場合を除く。)
信託財産責任負担債務に係る債権が受託者に帰属した場合(当該債権が信託財産に属することとなった場合を除く。)
固有財産又は他の信託の信託財産に属する債権に係る債務が受託者に帰属した場合(信託財産責任負担債務となった場合に限る。)
受託者の債務(信託財産責任負担債務を除く。)に係る債権が受託者に帰属した場合(当該債権が信託財産に属することとなった場合に限る。)
第21条
【信託財産責任負担債務の範囲】
次に掲げる権利に係る債務は、信託財産責任負担債務となる。
受益債権
信託財産に属する財産について信託前の原因によって生じた権利
信託前に生じた委託者に対する債権であって、当該債権に係る債務を信託財産責任負担債務とする旨の信託行為の定めがあるもの
第103条第1項又は第2項の規定による受益権取得請求権
信託財産のためにした行為であって受託者の権限に属するものによって生じた権利
信託財産のためにした行為であって受託者の権限に属しないもののうち、次に掲げるものによって生じた権利イ 第27条第1項又は第2項(これらの規定を第75条第4項において準用する場合を含む。ロにおいて同じ。)の規定により取り消すことができない行為(当該行為の相手方が、当該行為の当時、当該行為が信託財産のためにされたものであることを知らなかったもの(信託財産に属する財産について権利を設定し又は移転する行為を除く。)を除く。)ロ 第27条第1項又は第2項の規定により取り消すことができる行為であって取り消されていないもの
第31条第6項に規定する処分その他の行為又は同条第7項に規定する行為のうち、これらの規定により取り消すことができない行為又はこれらの規定により取り消すことができる行為であって取り消されていないものによって生じた権利
受託者が信託事務を処理するについてした不法行為によって生じた権利
第5号から前号までに掲げるもののほか、信託事務の処理について生じた権利
信託財産責任負担債務のうち次に掲げる権利に係る債務について、受託者は、信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負う。
受益債権
信託行為に第216条第1項の定めがあり、かつ、第232条の定めるところにより登記がされた場合における信託債権(信託財産責任負担債務に係る債権であって、受益債権でないものをいう。以下同じ。)
前二号に掲げる場合のほか、この法律の規定により信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負うものとされる場合における信託債権
信託債権を有する者(以下「信託債権者」という。)との間で信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負う旨の合意がある場合における信託債権
第22条
【信託財産に属する債権等についての相殺の制限】
受託者が固有財産又は他の信託の信託財産(第1号において「固有財産等」という。)に属する財産のみをもって履行する責任を負う債務(第1号及び第2号において「固有財産等責任負担債務」という。)に係る債権を有する者は、当該債権をもって信託財産に属する債権に係る債務と相殺をすることができない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。
当該固有財産等責任負担債務に係る債権を有する者が、当該債権を取得した時又は当該信託財産に属する債権に係る債務を負担した時のいずれか遅い時において、当該信託財産に属する債権が固有財産等に属するものでないことを知らず、かつ、知らなかったことにつき過失がなかった場合
当該固有財産等責任負担債務に係る債権を有する者が、当該債権を取得した時又は当該信託財産に属する債権に係る債務を負担した時のいずれか遅い時において、当該固有財産等責任負担債務が信託財産責任負担債務でないことを知らず、かつ、知らなかったことにつき過失がなかった場合
前項本文の規定は、第31条第2項各号に掲げる場合において、受託者が前項の相殺を承認したときは、適用しない。
信託財産責任負担債務(信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負うものに限る。)に係る債権を有する者は、当該債権をもって固有財産に属する債権に係る債務と相殺をすることができない。ただし、当該信託財産責任負担債務に係る債権を有する者が、当該債権を取得した時又は当該固有財産に属する債権に係る債務を負担した時のいずれか遅い時において、当該固有財産に属する債権が信託財産に属するものでないことを知らず、かつ、知らなかったことにつき過失がなかった場合は、この限りでない。
前項本文の規定は、受託者が同項の相殺を承認したときは、適用しない。
参照条文
第23条
【信託財産に属する財産に対する強制執行等の制限等】
信託財産責任負担債務に係る債権(信託財産に属する財産について生じた権利を含む。次項において同じ。)に基づく場合を除き、信託財産に属する財産に対しては、強制執行、仮差押え、仮処分若しくは担保権の実行若しくは競売(担保権の実行としてのものを除く。以下同じ。)又は国税滞納処分(その例による処分を含む。以下同じ。)をすることができない。
第3条第3号に掲げる方法によって信託がされた場合において、委託者がその債権者を害することを知って当該信託をしたときは、前項の規定にかかわらず、信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者のほか、当該委託者(受託者であるものに限る。)に対する債権で信託前に生じたものを有する者は、信託財産に属する財産に対し、強制執行、仮差押え、仮処分若しくは担保権の実行若しくは競売又は国税滞納処分をすることができる。ただし、受益者が現に存する場合において、その受益者の全部又は一部が、受益者としての指定を受けたことを知った時又は受益権を譲り受けた時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。
第11条第7項及び第8項の規定は、前項の規定の適用について準用する。
前二項の規定は、第2項の信託がされた時から二年間を経過したときは、適用しない。
第1項又は第2項の規定に違反してされた強制執行、仮差押え、仮処分又は担保権の実行若しくは競売に対しては、受託者又は受益者は、異議を主張することができる。この場合においては、民事執行法第38条及び民事保全法(平成元年法律第91号第45条の規定を準用する。
第1項又は第2項の規定に違反してされた国税滞納処分に対しては、受託者又は受益者は、異議を主張することができる。この場合においては、当該異議の主張は、当該国税滞納処分について不服の申立てをする方法でする。
第24条
【費用又は報酬の支弁等】
前条第5項又は第6項の規定による異議に係る訴えを提起した受益者が勝訴(一部勝訴を含む。)した場合において、当該訴えに係る訴訟に関し、必要な費用(訴訟費用を除く。)を支出したとき又は弁護士、弁護士法人、司法書士若しくは司法書士法人に報酬を支払うべきときは、その費用又は報酬は、その額の範囲内で相当と認められる額を限度として、信託財産から支弁する。
前項の訴えを提起した受益者が敗訴した場合であっても、悪意があったときを除き、当該受益者は、受託者に対し、これによって生じた損害を賠償する義務を負わない。
参照条文
第25条
【信託財産と受託者の破産手続等との関係等】
受託者が破産手続開始の決定を受けた場合であっても、信託財産に属する財産は、破産財団に属しない。
前項の場合には、受益債権は、破産債権とならない。信託債権であって受託者が信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負うものも、同様とする。
第1項の場合には、破産法第252条第1項の免責許可の決定による信託債権(前項に規定する信託債権を除く。)に係る債務の免責は、信託財産との関係においては、その効力を主張することができない。
受託者が再生手続開始の決定を受けた場合であっても、信託財産に属する財産は、再生債務者財産に属しない。
前項の場合には、受益債権は、再生債権とならない。信託債権であって受託者が信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負うものも、同様とする。
第4項の場合には、再生計画、再生計画認可の決定又は民事再生法第235条第1項の免責の決定による信託債権(前項に規定する信託債権を除く。)に係る債務の免責又は変更は、信託財産との関係においては、その効力を主張することができない。
前三項の規定は、受託者が更生手続開始の決定を受けた場合について準用する。この場合において、第4項中「再生債務者財産」とあるのは「更生会社財産(会社更生法第2条第14項に規定する更生会社財産又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律第169条第14項に規定する更生会社財産をいう。)又は更生協同組織金融機関財産(同法第4条第14項に規定する更生協同組織金融機関財産をいう。)」と、第5項中「再生債権」とあるのは「更生債権又は更生担保権」と、前項中「再生計画、再生計画認可の決定又は民事再生法第235条第1項の免責の決定」とあるのは「更生計画又は更生計画認可の決定」と読み替えるものとする。
参照条文
第3章
受託者等
第1節
受託者の権限
第26条
【受託者の権限の範囲】
受託者は、信託財産に属する財産の管理又は処分及びその他の信託の目的の達成のために必要な行為をする権限を有する。ただし、信託行為によりその権限に制限を加えることを妨げない。
第27条
【受託者の権限違反行為の取消し】
受託者が信託財産のためにした行為がその権限に属しない場合において、次のいずれにも該当するときは、受益者は、当該行為を取り消すことができる。
当該行為の相手方が、当該行為の当時、当該行為が信託財産のためにされたものであることを知っていたこと。
当該行為の相手方が、当該行為の当時、当該行為が受託者の権限に属しないことを知っていたこと又は知らなかったことにつき重大な過失があったこと。
前項の規定にかかわらず、受託者が信託財産に属する財産(第14条の信託の登記又は登録をすることができるものに限る。)について権利を設定し又は移転した行為がその権限に属しない場合には、次のいずれにも該当するときに限り、受益者は、当該行為を取り消すことができる。
当該行為の当時、当該信託財産に属する財産について第14条の信託の登記又は登録がされていたこと。
当該行為の相手方が、当該行為の当時、当該行為が受託者の権限に属しないことを知っていたこと又は知らなかったことにつき重大な過失があったこと。
二人以上の受益者のうちの一人が前二項の規定による取消権を行使したときは、その取消しは、他の受益者のためにも、その効力を生ずる。
第1項又は第2項の規定による取消権は、受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人)が取消しの原因があることを知った時から三箇月間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から一年を経過したときも、同様とする。
第28条
【信託事務の処理の第三者への委託】
受託者は、次に掲げる場合には、信託事務の処理を第三者に委託することができる。
信託行為に信託事務の処理を第三者に委託する旨又は委託することができる旨の定めがあるとき。
信託行為に信託事務の処理の第三者への委託に関する定めがない場合において、信託事務の処理を第三者に委託することが信託の目的に照らして相当であると認められるとき。
信託行為に信託事務の処理を第三者に委託してはならない旨の定めがある場合において、信託事務の処理を第三者に委託することにつき信託の目的に照らしてやむを得ない事由があると認められるとき。
第2節
受託者の義務等
第29条
【受託者の注意義務】
受託者は、信託の本旨に従い、信託事務を処理しなければならない。
受託者は、信託事務を処理するに当たっては、善良な管理者の注意をもって、これをしなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる注意をもって、これをするものとする。
第30条
【忠実義務】
受託者は、受益者のため忠実に信託事務の処理その他の行為をしなければならない。
第31条
【利益相反行為の制限】
受託者は、次に掲げる行為をしてはならない。
信託財産に属する財産(当該財産に係る権利を含む。)を固有財産に帰属させ、又は固有財産に属する財産(当該財産に係る権利を含む。)を信託財産に帰属させること。
信託財産に属する財産(当該財産に係る権利を含む。)を他の信託の信託財産に帰属させること。
第三者との間において信託財産のためにする行為であって、自己が当該第三者の代理人となって行うもの
信託財産に属する財産につき固有財産に属する財産のみをもって履行する責任を負う債務に係る債権を被担保債権とする担保権を設定することその他第三者との間において信託財産のためにする行為であって受託者又はその利害関係人と受益者との利益が相反することとなるもの
前項の規定にかかわらず、次のいずれかに該当するときは、同項各号に掲げる行為をすることができる。ただし、第2号に掲げる事由にあっては、同号に該当する場合でも当該行為をすることができない旨の信託行為の定めがあるときは、この限りでない。
信託行為に当該行為をすることを許容する旨の定めがあるとき。
受託者が当該行為について重要な事実を開示して受益者の承認を得たとき。
相続その他の包括承継により信託財産に属する財産に係る権利が固有財産に帰属したとき。
受託者が当該行為をすることが信託の目的の達成のために合理的に必要と認められる場合であって、受益者の利益を害しないことが明らかであるとき、又は当該行為の信託財産に与える影響、当該行為の目的及び態様、受託者の受益者との実質的な利害関係の状況その他の事情に照らして正当な理由があるとき。
受託者は、第1項各号に掲げる行為をしたときは、受益者に対し、当該行為についての重要な事実を通知しなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
第1項及び第2項の規定に違反して第1項第1号又は第2号に掲げる行為がされた場合には、これらの行為は、無効とする。
前項の行為は、受益者の追認により、当該行為の時にさかのぼってその効力を生ずる。
第4項に規定する場合において、受託者が第三者との間において第1項第1号又は第2号の財産について処分その他の行為をしたときは、当該第三者が同項及び第2項の規定に違反して第1項第1号又は第2号に掲げる行為がされたことを知っていたとき又は知らなかったことにつき重大な過失があったときに限り、受益者は、当該処分その他の行為を取り消すことができる。この場合においては、第27条第3項及び第4項の規定を準用する。
第1項及び第2項の規定に違反して第1項第3号又は第4号に掲げる行為がされた場合には、当該第三者がこれを知っていたとき又は知らなかったことにつき重大な過失があったときに限り、受益者は、当該行為を取り消すことができる。この場合においては、第27条第3項及び第4項の規定を準用する。
第32条
受託者は、受託者として有する権限に基づいて信託事務の処理としてすることができる行為であってこれをしないことが受益者の利益に反するものについては、これを固有財産又は受託者の利害関係人の計算でしてはならない。
前項の規定にかかわらず、次のいずれかに該当するときは、同項に規定する行為を固有財産又は受託者の利害関係人の計算ですることができる。ただし、第2号に掲げる事由にあっては、同号に該当する場合でも当該行為を固有財産又は受託者の利害関係人の計算ですることができない旨の信託行為の定めがあるときは、この限りでない。
信託行為に当該行為を固有財産又は受託者の利害関係人の計算ですることを許容する旨の定めがあるとき。
受託者が当該行為を固有財産又は受託者の利害関係人の計算ですることについて重要な事実を開示して受益者の承認を得たとき。
受託者は、第1項に規定する行為を固有財産又は受託者の利害関係人の計算でした場合には、受益者に対し、当該行為についての重要な事実を通知しなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
第1項及び第2項の規定に違反して受託者が第1項に規定する行為をした場合には、受益者は、当該行為は信託財産のためにされたものとみなすことができる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
前項の規定による権利は、当該行為の時から一年を経過したときは、消滅する。
第33条
【公平義務】
受益者が二人以上ある信託においては、受託者は、受益者のために公平にその職務を行わなければならない。
第34条
【分別管理義務】
受託者は、信託財産に属する財産と固有財産及び他の信託の信託財産に属する財産とを、次の各号に掲げる財産の区分に応じ、当該各号に定める方法により、分別して管理しなければならない。ただし、分別して管理する方法について、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
第14条の信託の登記又は登録をすることができる財産(第3号に掲げるものを除く。) 当該信託の登記又は登録
第14条の信託の登記又は登録をすることができない財産(次号に掲げるものを除く。) 次のイ又はロに掲げる財産の区分に応じ、当該イ又はロに定める方法イ 動産(金銭を除く。) 信託財産に属する財産と固有財産及び他の信託の信託財産に属する財産とを外形上区別することができる状態で保管する方法ロ 金銭その他のイに掲げる財産以外の財産 その計算を明らかにする方法
法務省令で定める財産 当該財産を適切に分別して管理する方法として法務省令で定めるもの
前項ただし書の規定にかかわらず、同項第1号に掲げる財産について第14条の信託の登記又は登録をする義務は、これを免除することができない。
第35条
【信託事務の処理の委託における第三者の選任及び監督に関する義務】
第28条の規定により信託事務の処理を第三者に委託するときは、受託者は、信託の目的に照らして適切な者に委託しなければならない。
第28条の規定により信託事務の処理を第三者に委託したときは、受託者は、当該第三者に対し、信託の目的の達成のために必要かつ適切な監督を行わなければならない。
受託者が信託事務の処理を次に掲げる第三者に委託したときは、前二項の規定は、適用しない。ただし、受託者は、当該第三者が不適任若しくは不誠実であること又は当該第三者による事務の処理が不適切であることを知ったときは、その旨の受益者に対する通知、当該第三者への委託の解除その他の必要な措置をとらなければならない。
信託行為において指名された第三者
信託行為において受託者が委託者又は受益者の指名に従い信託事務の処理を第三者に委託する旨の定めがある場合において、当該定めに従い指名された第三者
前項ただし書の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
第36条
【信託事務の処理の状況についての報告義務】
委託者又は受益者は、受託者に対し、信託事務の処理の状況並びに信託財産に属する財産及び信託財産責任負担債務の状況について報告を求めることができる。
第37条
【帳簿等の作成等、報告及び保存の義務】
受託者は、信託事務に関する計算並びに信託財産に属する財産及び信託財産責任負担債務の状況を明らかにするため、法務省令で定めるところにより、信託財産に係る帳簿その他の書類又は電磁的記録を作成しなければならない。
受託者は、毎年一回、一定の時期に、法務省令で定めるところにより、貸借対照表、損益計算書その他の法務省令で定める書類又は電磁的記録を作成しなければならない。
受託者は、前項の書類又は電磁的記録を作成したときは、その内容について受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人)に報告しなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
受託者は、第1項の書類又は電磁的記録を作成した場合には、その作成の日から十年間(当該期間内に信託の清算の結了があったときは、その日までの間。次項において同じ。)、当該書類(当該書類に代えて電磁的記録を法務省令で定める方法により作成した場合にあっては、当該電磁的記録)又は電磁的記録(当該電磁的記録に代えて書面を作成した場合にあっては、当該書面)を保存しなければならない。ただし、受益者(二人以上の受益者が現に存する場合にあってはそのすべての受益者、信託管理人が現に存する場合にあっては信託管理人。第6項ただし書において同じ。)に対し、当該書類若しくはその写しを交付し、又は当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により提供したときは、この限りでない。
受託者は、信託財産に属する財産の処分に係る契約書その他の信託事務の処理に関する書類又は電磁的記録を作成し、又は取得した場合には、その作成又は取得の日から十年間、当該書類(当該書類に代えて電磁的記録を法務省令で定める方法により作成した場合にあっては、当該電磁的記録)又は電磁的記録(当該電磁的記録に代えて書面を作成した場合にあっては、当該書面)を保存しなければならない。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。
受託者は、第2項の書類又は電磁的記録を作成した場合には、信託の清算の結了の日までの間、当該書類(当該書類に代えて電磁的記録を法務省令で定める方法により作成した場合にあっては、当該電磁的記録)又は電磁的記録(当該電磁的記録に代えて書面を作成した場合にあっては、当該書面)を保存しなければならない。ただし、その作成の日から十年間を経過した後において、受益者に対し、当該書類若しくはその写しを交付し、又は当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により提供したときは、この限りでない。
第38条
【帳簿等の閲覧等の請求】
受益者は、受託者に対し、次に掲げる請求をすることができる。この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。
前条第1項又は第5項の書類の閲覧又は謄写の請求
前条第1項又は第5項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
前項の請求があったときは、受託者は、次のいずれかに該当すると認められる場合を除き、これを拒むことができない。
当該請求を行う者(以下この項において「請求者」という。)がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき。
請求者が不適当な時に請求を行ったとき。
請求者が信託事務の処理を妨げ、又は受益者の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき。
請求者が当該信託に係る業務と実質的に競争関係にある事業を営み、又はこれに従事するものであるとき。
請求者が前項の規定による閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求したとき。
請求者が、過去二年以内において、前項の規定による閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものであるとき。
前項第1号及び第2号を除く。)の規定は、受益者が二人以上ある信託のすべての受益者から第1項の請求があったとき、又は受益者が一人である信託の当該受益者から同項の請求があったときは、適用しない。
信託行為において、次に掲げる情報以外の情報について、受益者が同意をしたときは第1項の規定による閲覧又は謄写の請求をすることができない旨の定めがある場合には、当該同意をした受益者(その承継人を含む。以下この条において同じ。)は、その同意を撤回することができない。
前条第2項の書類又は電磁的記録の作成に欠くことのできない情報その他の信託に関する重要な情報
当該受益者以外の者の利益を害するおそれのない情報
受託者は、前項の同意をした受益者から第1項の規定による閲覧又は謄写の請求があったときは、前項各号に掲げる情報に該当する部分を除き、これを拒むことができる。
利害関係人は、受託者に対し、次に掲げる請求をすることができる。
前条第2項の書類の閲覧又は謄写の請求
前条第2項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
第39条
【他の受益者の氏名等の開示の請求】
受益者が二人以上ある信託においては、受益者は、受託者に対し、次に掲げる事項を相当な方法により開示することを請求することができる。この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。
他の受益者の氏名又は名称及び住所
他の受益者が有する受益権の内容
前項の請求があったときは、受託者は、次のいずれかに該当すると認められる場合を除き、これを拒むことができない。
当該請求を行う者(以下この項において「請求者」という。)がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき。
請求者が不適当な時に請求を行ったとき。
請求者が信託事務の処理を妨げ、又は受益者の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき。
請求者が当該信託に係る業務と実質的に競争関係にある事業を営み、又はこれに従事するものであるとき。
請求者が前項の規定による開示によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求を行ったとき。
請求者が、過去二年以内において、前項の規定による開示によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものであるとき。
前二項の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
第3節
受託者の責任等
第40条
【受託者の損失てん補責任等】
受託者がその任務を怠ったことによって次の各号に掲げる場合に該当するに至ったときは、受益者は、当該受託者に対し、当該各号に定める措置を請求することができる。ただし、第2号に定める措置にあっては、原状の回復が著しく困難であるとき、原状の回復をするのに過分の費用を要するとき、その他受託者に原状の回復をさせることを不適当とする特別の事情があるときは、この限りでない。
信託財産に損失が生じた場合 当該損失のてん補
信託財産に変更が生じた場合 原状の回復
受託者が第28条の規定に違反して信託事務の処理を第三者に委託した場合において、信託財産に損失又は変更を生じたときは、受託者は、第三者に委託をしなかったとしても損失又は変更が生じたことを証明しなければ、前項の責任を免れることができない。
受託者が第30条第31条第1項及び第2項又は第32条第1項及び第2項の規定に違反する行為をした場合には、受託者は、当該行為によって受託者又はその利害関係人が得た利益の額と同額の損失を信託財産に生じさせたものと推定する。
受託者が第34条の規定に違反して信託財産に属する財産を管理した場合において、信託財産に損失又は変更を生じたときは、受託者は、同条の規定に従い分別して管理をしたとしても損失又は変更が生じたことを証明しなければ、第1項の責任を免れることができない。
第41条
【法人である受託者の役員の連帯責任】
法人である受託者の理事、取締役若しくは執行役又はこれらに準ずる者は、当該法人が前条の規定による責任を負う場合において、当該法人が行った法令又は信託行為の定めに違反する行為につき悪意又は重大な過失があるときは、受益者に対し、当該法人と連帯して、損失のてん補又は原状の回復をする責任を負う。
第42条
【損失てん補責任等の免除】
受益者は、次に掲げる責任を免除することができる。
第40条の規定による責任
前条の規定による責任
第43条
【損失てん補責任等に係る債権の期間の制限】
第40条の規定による責任に係る債権の消滅時効は、債務の不履行によって生じた責任に係る債権の消滅時効の例による。
第41条の規定による責任に係る債権は、十年間行使しないときは、時効によって消滅する。
第40条又は第41条の規定による責任に係る受益者の債権の消滅時効は、受益者が受益者としての指定を受けたことを知るに至るまでの間(受益者が現に存しない場合にあっては、信託管理人が選任されるまでの間)は、進行しない。
前項に規定する債権は、受託者がその任務を怠ったことによって信託財産に損失又は変更が生じた時から二十年を経過したときは、消滅する。
参照条文
第44条
【受益者による受託者の行為の差止め】
受託者が法令若しくは信託行為の定めに違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって信託財産に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、受益者は、当該受託者に対し、当該行為をやめることを請求することができる。
受託者が第33条の規定に違反する行為をし、又はこれをするおそれがある場合において、当該行為によって一部の受益者に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該受益者は、当該受託者に対し、当該行為をやめることを請求することができる。
第45条
【費用又は報酬の支弁等】
第40条第41条又は前条の規定による請求に係る訴えを提起した受益者が勝訴(一部勝訴を含む。)した場合において、当該訴えに係る訴訟に関し、必要な費用(訴訟費用を除く。)を支出したとき又は弁護士、弁護士法人、司法書士若しくは司法書士法人に報酬を支払うべきときは、その費用又は報酬は、その額の範囲内で相当と認められる額を限度として、信託財産から支弁する。
前項の訴えを提起した受益者が敗訴した場合であっても、悪意があったときを除き、当該受益者は、受託者に対し、これによって生じた損害を賠償する義務を負わない。
第46条
【検査役の選任】
受託者の信託事務の処理に関し、不正の行為又は法令若しくは信託行為の定めに違反する重大な事実があることを疑うに足りる事由があるときは、受益者は、信託事務の処理の状況並びに信託財産に属する財産及び信託財産責任負担債務の状況を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをすることができる。
前項の申立てがあった場合には、裁判所は、これを不適法として却下する場合を除き、検査役を選任しなければならない。
第1項の申立てを却下する裁判には、理由を付さなければならない。
第1項の規定による検査役の選任の裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
第2項の検査役は、信託財産から裁判所が定める報酬を受けることができる。
前項の規定による検査役の報酬を定める裁判をする場合には、受託者及び第2項の検査役の陳述を聴かなければならない。
第5項の規定による検査役の報酬を定める裁判に対しては、受託者及び第2項の検査役に限り、即時抗告をすることができる。
第47条
前条第2項の検査役は、その職務を行うため必要があるときは、受託者に対し、信託事務の処理の状況並びに信託財産に属する財産及び信託財産責任負担債務の状況について報告を求め、又は当該信託に係る帳簿、書類その他の物件を調査することができる。
前条第2項の検査役は、必要な調査を行い、当該調査の結果を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録(法務省令で定めるものに限る。)を裁判所に提供して報告をしなければならない。
裁判所は、前項の報告について、その内容を明瞭にし、又はその根拠を確認するため必要があると認めるときは、前条第2項の検査役に対し、更に前項の報告を求めることができる。
前条第2項の検査役は、第2項の報告をしたときは、受託者及び同条第1項の申立てをした受益者に対し、第2項の書面の写しを交付し、又は同項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により提供しなければならない。
受託者は、前項の規定による書面の写しの交付又は電磁的記録に記録された事項の法務省令で定める方法による提供があったときは、直ちに、その旨を受益者(前条第1項の申立てをしたものを除く。次項において同じ。)に通知しなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
裁判所は、第2項の報告があった場合において、必要があると認めるときは、受託者に対し、同項の調査の結果を受益者に通知することその他の当該報告の内容を周知するための適切な措置をとるべきことを命じなければならない。
第4節
受託者の費用等及び信託報酬等
第48条
【信託財産からの費用等の償還等】
受託者は、信託事務を処理するのに必要と認められる費用を固有財産から支出した場合には、信託財産から当該費用及び支出の日以後におけるその利息(以下「費用等」という。)の償還を受けることができる。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
受託者は、信託事務を処理するについて費用を要するときは、信託財産からその前払を受けることができる。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
受託者は、前項本文の規定により信託財産から費用の前払を受けるには、受益者に対し、前払を受ける額及びその算定根拠を通知しなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
第1項又は第2項の規定にかかわらず、費用等の償還又は費用の前払は、受託者が第40条の規定による責任を負う場合には、これを履行した後でなければ、受けることができない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
第1項又は第2項の場合には、受託者が受益者との間の合意に基づいて当該受益者から費用等の償還又は費用の前払を受けることを妨げない。
第49条
【費用等の償還等の方法】
受託者は、前条第1項又は第2項の規定により信託財産から費用等の償還又は費用の前払を受けることができる場合には、その額の限度で、信託財産に属する金銭を固有財産に帰属させることができる。
前項に規定する場合において、必要があるときは、受託者は、信託財産に属する財産(当該財産を処分することにより信託の目的を達成することができないこととなるものを除く。)を処分することができる。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
第1項に規定する場合において、第31条第2項各号のいずれかに該当するときは、受託者は、第1項の規定により有する権利の行使に代えて、信託財産に属する財産で金銭以外のものを固有財産に帰属させることができる。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
第1項の規定により受託者が有する権利は、信託財産に属する財産に対し強制執行又は担保権の実行の手続が開始したときは、これらの手続との関係においては、金銭債権とみなす。
前項の場合には、同項に規定する権利の存在を証する文書により当該権利を有することを証明した受託者も、同項の強制執行又は担保権の実行の手続において、配当要求をすることができる。
各債権者(信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者に限る。以下この項及び次項において同じ。)の共同の利益のためにされた信託財産に属する財産の保存、清算又は配当に関する費用等について第1項の規定により受託者が有する権利は、第4項の強制執行又は担保権の実行の手続において、他の債権者(当該費用等がすべての債権者に有益でなかった場合にあっては、当該費用等によって利益を受けていないものを除く。)の権利に優先する。この場合においては、その順位は、民法第307条第1項に規定する先取特権と同順位とする。
次の各号に該当する費用等について第1項の規定により受託者が有する権利は、当該各号に掲げる区分に応じ、当該各号の財産に係る第4項の強制執行又は担保権の実行の手続において、当該各号に定める金額について、他の債権者の権利に優先する。
信託財産に属する財産の保存のために支出した金額その他の当該財産の価値の維持のために必要であると認められるもの その金額
信託財産に属する財産の改良のために支出した金額その他の当該財産の価値の増加に有益であると認められるもの その金額又は現に存する増価額のいずれか低い金額
第50条
【信託財産責任負担債務の弁済による受託者の代位】
受託者は、信託財産責任負担債務を固有財産をもって弁済した場合において、これにより前条第1項の規定による権利を有することとなったときは、当該信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者に代位する。この場合においては、同項の規定により受託者が有する権利は、その代位との関係においては、金銭債権とみなす。
前項の規定により受託者が同項の債権者に代位するときは、受託者は、遅滞なく、当該債権者の有する債権が信託財産責任負担債務に係る債権である旨及びこれを固有財産をもって弁済した旨を当該債権者に通知しなければならない。
第51条
【費用等の償還等と同時履行】
受託者は、第49条第1項の規定により受託者が有する権利が消滅するまでは、受益者又は第182条第1項第2号に規定する帰属権利者に対する信託財産に係る給付をすべき債務の履行を拒むことができる。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
参照条文
第52条
【信託財産が費用等の償還等に不足している場合の措置】
受託者は、第48条第1項又は第2項の規定により信託財産から費用等の償還又は費用の前払を受けるのに信託財産(第49条第2項の規定により処分することができないものを除く。第1号及び第4項において同じ。)が不足している場合において、委託者及び受益者に対し次に掲げる事項を通知し、第2号の相当の期間を経過しても委託者又は受益者から費用等の償還又は費用の前払を受けなかったときは、信託を終了させることができる。
信託財産が不足しているため費用等の償還又は費用の前払を受けることができない旨
受託者の定める相当の期間内に委託者又は受益者から費用等の償還又は費用の前払を受けないときは、信託を終了させる旨
委託者が現に存しない場合における前項の規定の適用については、同項中「委託者及び受益者」とあり、及び「委託者又は受益者」とあるのは、「受益者」とする。
受益者が現に存しない場合における第1項の規定の適用については、同項中「委託者及び受益者」とあり、及び「委託者又は受益者」とあるのは、「委託者」とする。
第48条第1項又は第2項の規定により信託財産から費用等の償還又は費用の前払を受けるのに信託財産が不足している場合において、委託者及び受益者が現に存しないときは、受託者は、信託を終了させることができる。
参照条文
第53条
【信託財産からの損害の賠償】
受託者は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める損害の額について、信託財産からその賠償を受けることができる。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
受託者が信託事務を処理するため自己に過失なく損害を受けた場合 当該損害の額
受託者が信託事務を処理するため第三者の故意又は過失によって損害を受けた場合(前号に掲げる場合を除く。) 当該第三者に対し賠償を請求することができる額
第48条第4項及び第5項第49条第6項及び第7項を除く。)並びに前二条の規定は、前項の規定による信託財産からの損害の賠償について準用する。
第54条
【受託者の信託報酬】
受託者は、信託の引受けについて商法第512条の規定の適用がある場合のほか、信託行為に受託者が信託財産から信託報酬(信託事務の処理の対価として受託者の受ける財産上の利益をいう。以下同じ。)を受ける旨の定めがある場合に限り、信託財産から信託報酬を受けることができる。
前項の場合には、信託報酬の額は、信託行為に信託報酬の額又は算定方法に関する定めがあるときはその定めるところにより、その定めがないときは相当の額とする。
前項の定めがないときは、受託者は、信託財産から信託報酬を受けるには、受益者に対し、信託報酬の額及びその算定の根拠を通知しなければならない。
第48条第4項及び第5項第49条第6項及び第7項を除く。)、第51条並びに第52条並びに民法第648条第2項及び第3項の規定は、受託者の信託報酬について準用する。
第55条
【受託者による担保権の実行】
担保権が信託財産である信託において、信託行為において受益者が当該担保権によって担保される債権に係る債権者とされている場合には、担保権者である受託者は、信託事務として、当該担保権の実行の申立てをし、売却代金の配当又は弁済金の交付を受けることができる。
第5節
受託者の変更等
第1款
受託者の任務の終了
第56条
【受託者の任務の終了事由】
受託者の任務は、信託の清算が結了した場合のほか、次に掲げる事由によって終了する。ただし、第3号に掲げる事由による場合にあっては、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
受託者である個人の死亡
受託者である個人が後見開始又は保佐開始の審判を受けたこと。
受託者(破産手続開始の決定により解散するものを除く。)が破産手続開始の決定を受けたこと。
受託者である法人が合併以外の理由により解散したこと。
次条の規定による受託者の辞任
第58条の規定による受託者の解任
信託行為において定めた事由
受託者である法人が合併をした場合における合併後存続する法人又は合併により設立する法人は、受託者の任務を引き継ぐものとする。受託者である法人が分割をした場合における分割により受託者としての権利義務を承継する法人も、同様とする。
前項の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
第1項第3号に掲げる事由が生じた場合において、同項ただし書の定めにより受託者の任務が終了しないときは、受託者の職務は、破産者が行う。
受託者の任務は、受託者が再生手続開始の決定を受けたことによっては、終了しない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
前項本文に規定する場合において、管財人があるときは、受託者の職務の遂行並びに信託財産に属する財産の管理及び処分をする権利は、管財人に専属する。保全管理人があるときも、同様とする。
前二項の規定は、受託者が更生手続開始の決定を受けた場合について準用する。この場合において、前項中「管財人があるとき」とあるのは、「管財人があるとき(会社更生法第74条第2項金融機関等の更生手続の特例等に関する法律第47条及び第213条において準用する場合を含む。)の期間を除く。)」と読み替えるものとする。
第57条
【受託者の辞任】
受託者は、委託者及び受益者の同意を得て、辞任することができる。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
受託者は、やむを得ない事由があるときは、裁判所の許可を得て、辞任することができる。
受託者は、前項の許可の申立てをする場合には、その原因となる事実を疎明しなければならない。
第2項の許可の申立てを却下する裁判には、理由を付さなければならない。
第2項の規定による辞任の許可の裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
委託者が現に存しない場合には、第1項本文の規定は、適用しない。
参照条文
第56条 第59条 第70条 第75条 第128条 第134条 第141条 第251条 第261条 加入者保護信託に関する命令第25条 第27条 第30条 第36条 環境大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する省令第19条 第23条 外務大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する省令第17条 第21条 経済産業大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する規則第2条 厚生労働大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する規則第18条 第22条 国土交通大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する規則第19条 第23条 財務大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する省令第18条 第22条 資産の流動化に関する法律第257条 総務大臣の所管に属する公益信託に係る許可及び監督に関する省令第18条 第22条 担保付社債信託法第50条 担保付社債信託法施行規則第19条 内閣総理大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する内閣府令第17条 第21条 農水産業協同組合貯金保険法第115条 農林水産大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する規則第19条 第23条 法務大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する規則第18条 第22条 防衛大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する省令第18条 第22条 文部科学大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する規則第19条 第23条 預金保険法第132条
第58条
【受託者の解任】
委託者及び受益者は、いつでも、その合意により、受託者を解任することができる。
委託者及び受益者が受託者に不利な時期に受託者を解任したときは、委託者及び受益者は、受託者の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。
前二項の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
受託者がその任務に違反して信託財産に著しい損害を与えたことその他重要な事由があるときは、裁判所は、委託者又は受益者の申立てにより、受託者を解任することができる。
裁判所は、前項の規定により受託者を解任する場合には、受託者の陳述を聴かなければならない。
第4項の申立てについての裁判には、理由を付さなければならない。
第4項の規定による解任の裁判に対しては、委託者、受託者又は受益者に限り、即時抗告をすることができる。
委託者が現に存しない場合には、第1項及び第2項の規定は、適用しない。
参照条文
第56条 第70条 第128条 第134条 第141条 第215条 第246条 第251条 第261条 加入者保護信託に関する命令第21条 第26条 第28条 第31条 環境大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する省令第15条 第20条 第24条 外務大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する省令第13条 第18条 第22条 経済産業大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する規則第2条 公益信託ニ関スル法律第8条 厚生労働大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する規則第14条 第19条 第23条 国土交通大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する規則第15条 第20条 第24条 財務大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する省令第13条 第19条 第23条 信託業法第49条 信託業法施行令第20条 総務大臣の所管に属する公益信託に係る許可及び監督に関する省令第14条 第19条 第23条 担保付社債信託法第51条 第52条 担保付社債信託法施行規則第19条 内閣総理大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する内閣府令第13条 第18条 第22条 農林水産大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する規則第15条 第20条 第24条 法務大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する規則第14条 第19条 第23条 防衛大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する省令第14条 第19条 第23条 文部科学大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する規則第15条 第20条 第24条
第2款
前受託者の義務等
第59条
【前受託者の通知及び保管の義務等】
第56条第1項第3号から第7号までに掲げる事由により受託者の任務が終了した場合には、受託者であった者(以下「前受託者」という。)は、受益者に対し、その旨を通知しなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
第56条第1項第3号に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合には、前受託者は、破産管財人に対し、信託財産に属する財産の内容及び所在、信託財産責任負担債務の内容その他の法務省令で定める事項を通知しなければならない。
第56条第1項第4号から第7号までに掲げる事由により受託者の任務が終了した場合には、前受託者は、新たな受託者(第64条第1項の規定により信託財産管理者が選任された場合にあっては、信託財産管理者。以下この節において「新受託者等」という。)が信託事務の処理をすることができるに至るまで、引き続き信託財産に属する財産の保管をし、かつ、信託事務の引継ぎに必要な行為をしなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その義務を加重することができる。
前項の規定にかかわらず、第56条第1項第5号に掲げる事由(第57条第1項の規定によるものに限る。)により受託者の任務が終了した場合には、前受託者は、新受託者等が信託事務の処理をすることができるに至るまで、引き続き受託者としての権利義務を有する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。
第3項の場合(前項本文に規定する場合を除く。)において、前受託者が信託財産に属する財産の処分をしようとするときは、受益者は、前受託者に対し、当該財産の処分をやめることを請求することができる。ただし、新受託者等が信託事務の処理をすることができるに至った後は、この限りでない。
第60条
【前受託者の相続人等の通知及び保管の義務等】
第56条第1項第1号又は第2号に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合において、前受託者の相続人(法定代理人が現に存する場合にあっては、その法定代理人)又は成年後見人若しくは保佐人(以下この節において「前受託者の相続人等」と総称する。)がその事実を知っているときは、前受託者の相続人等は、知れている受益者に対し、これを通知しなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
第56条第1項第1号又は第2号に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合には、前受託者の相続人等は、新受託者等又は信託財産法人管理人が信託事務の処理をすることができるに至るまで、信託財産に属する財産の保管をし、かつ、信託事務の引継ぎに必要な行為をしなければならない。
前項の場合において、前受託者の相続人等が信託財産に属する財産の処分をしようとするときは、受益者は、これらの者に対し、当該財産の処分をやめることを請求することができる。ただし、新受託者等又は信託財産法人管理人が信託事務の処理をすることができるに至った後は、この限りでない。
第56条第1項第3号に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合には、破産管財人は、新受託者等が信託事務を処理することができるに至るまで、信託財産に属する財産の保管をし、かつ、信託事務の引継ぎに必要な行為をしなければならない。
前項の場合において、破産管財人が信託財産に属する財産の処分をしようとするときは、受益者は、破産管財人に対し、当該財産の処分をやめることを請求することができる。ただし、新受託者等が信託事務の処理をすることができるに至った後は、この限りでない。
前受託者の相続人等又は破産管財人は、新受託者等又は信託財産法人管理人に対し、第1項第2項又は第4項の規定による行為をするために支出した費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。
第49条第6項及び第7項の規定は、前項の規定により前受託者の相続人等又は破産管財人が有する権利について準用する。
第61条
【費用又は報酬の支弁等】
第59条第5項又は前条第3項若しくは第5項の規定による請求に係る訴えを提起した受益者が勝訴(一部勝訴を含む。)した場合において、当該訴えに係る訴訟に関し、必要な費用(訴訟費用を除く。)を支出したとき又は弁護士、弁護士法人、司法書士若しくは司法書士法人に報酬を支払うべきときは、その費用又は報酬は、その額の範囲内で相当と認められる額を限度として、信託財産から支弁する。
前項の訴えを提起した受益者が敗訴した場合であっても、悪意があったときを除き、当該受益者は、受託者に対し、これによって生じた損害を賠償する義務を負わない。
参照条文
第3款
新受託者の選任
第62条
第56条第1項各号に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合において、信託行為に新たな受託者(以下「新受託者」という。)に関する定めがないとき、又は信託行為の定めにより新受託者となるべき者として指定された者が信託の引受けをせず、若しくはこれをすることができないときは、委託者及び受益者は、その合意により、新受託者を選任することができる。
第56条第1項各号に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合において、信託行為に新受託者となるべき者を指定する定めがあるときは、利害関係人は、新受託者となるべき者として指定された者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に就任の承諾をするかどうかを確答すべき旨を催告することができる。ただし、当該定めに停止条件又は始期が付されているときは、当該停止条件が成就し、又は当該始期が到来した後に限る。
前項の規定による催告があった場合において、新受託者となるべき者として指定された者は、同項の期間内に委託者及び受益者(二人以上の受益者が現に存する場合にあってはその一人、信託管理人が現に存する場合にあっては信託管理人)に対し確答をしないときは、就任の承諾をしなかったものとみなす。
第1項の場合において、同項の合意に係る協議の状況その他の事情に照らして必要があると認めるときは、裁判所は、利害関係人の申立てにより、新受託者を選任することができる。
前項の申立てについての裁判には、理由を付さなければならない。
第4項の規定による新受託者の選任の裁判に対しては、委託者若しくは受益者又は現に存する受託者に限り、即時抗告をすることができる。
前項の即時抗告は、執行停止の効力を有する。
委託者が現に存しない場合における前各項の規定の適用については、第1項中「委託者及び受益者は、その合意により」とあるのは「受益者は」と、第3項中「委託者及び受益者」とあるのは「受益者」と、第4項中「同項の合意に係る協議の状況」とあるのは「受益者の状況」とする。
参照条文
第92条 第129条 第135条 第142条 第215条 第236条 第243条 第261条 加入者保護信託に関する命令第22条 第29条 第32条 環境大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する省令第16条 第25条 外務大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する省令第14条 第23条 経済産業大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する規則第2条 厚生労働大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する規則第15条 第24条 国土交通大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する規則第16条 第25条 財務大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する省令第15条 第24条 社債、株式等の振替に関する法律施行令第8条 信託業法第49条 信託業法施行令第20条 総務大臣の所管に属する公益信託に係る許可及び監督に関する省令第15条 第24条 担保付社債信託法第52条 地球温暖化対策の推進に関する法律施行令第9条 内閣総理大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する内閣府令第14条 第23条 農林水産大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する規則第16条 第25条 法務大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する規則第15条 第24条 防衛大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する省令第15条 第24条 文部科学大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する規則第16条 第25条
第4款
信託財産管理者等
第63条
【信託財産管理命令】
第56条第1項各号に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合において、新受託者が選任されておらず、かつ、必要があると認めるときは、新受託者が選任されるまでの間、裁判所は、利害関係人の申立てにより、信託財産管理者による管理を命ずる処分(以下この款において「信託財産管理命令」という。)をすることができる。
前項の申立てを却下する裁判には、理由を付さなければならない。
裁判所は、信託財産管理命令を変更し、又は取り消すことができる。
信託財産管理命令及び前項の規定による決定に対しては、利害関係人に限り、即時抗告をすることができる。
参照条文
第74条 第215条 加入者保護信託に関する命令第23条 環境大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する省令第17条 外務大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する省令第15条 経済産業大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する規則第2条 厚生労働大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する規則第16条 国土交通大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する規則第17条 財務大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する省令第16条 信託業法第49条 信託業法施行令第20条 信託法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第5条 第6条 総務大臣の所管に属する公益信託に係る許可及び監督に関する省令第16条 担保付社債信託法第52条 内閣総理大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する内閣府令第15条 農林水産大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する規則第17条 法務大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する規則第16条 防衛大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する省令第16条 文部科学大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する規則第17条
第64条
【信託財産管理者の選任等】
裁判所は、信託財産管理命令をする場合には、当該信託財産管理命令において、信託財産管理者を選任しなければならない。
前項の規定による信託財産管理者の選任の裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
裁判所は、第1項の規定による信託財産管理者の選任の裁判をしたときは、直ちに、次に掲げる事項を公告しなければならない。
信託財産管理者を選任した旨
信託財産管理者の氏名又は名称
前項第2号の規定は、同号に掲げる事項に変更を生じた場合について準用する。
信託財産管理命令があった場合において、信託財産に属する権利で登記又は登録がされたものがあることを知ったときは、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、信託財産管理命令の登記又は登録を嘱託しなければならない。
信託財産管理命令を取り消す裁判があったとき、又は信託財産管理命令があった後に新受託者が選任された場合において当該新受託者が信託財産管理命令の登記若しくは登録の抹消の嘱託の申立てをしたときは、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、信託財産管理命令の登記又は登録の抹消を嘱託しなければならない。
第65条
【前受託者がした法律行為の効力】
前受託者が前条第1項の規定による信託財産管理者の選任の裁判があった後に信託財産に属する財産に関してした法律行為は、信託財産との関係においては、その効力を主張することができない。
前受託者が前条第1項の規定による信託財産管理者の選任の裁判があった日にした法律行為は、当該裁判があった後にしたものと推定する。
参照条文
第66条
【信託財産管理者の権限】
第64条第1項の規定により信託財産管理者が選任された場合には、受託者の職務の遂行並びに信託財産に属する財産の管理及び処分をする権利は、信託財産管理者に専属する。
二人以上の信託財産管理者があるときは、これらの者が共同してその権限に属する行為をしなければならない。ただし、裁判所の許可を得て、それぞれ単独にその職務を行い、又は職務を分掌することができる。
二人以上の信託財産管理者があるときは、第三者の意思表示は、その一人に対してすれば足りる。
信託財産管理者が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。
保存行為
信託財産に属する財産の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為
前項の規定に違反して行った信託財産管理者の行為は、無効とする。ただし、信託財産管理者は、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
信託財産管理者は、第2項ただし書又は第4項の許可の申立てをする場合には、その原因となる事実を疎明しなければならない。
第2項ただし書又は第4項の許可の申立てを却下する裁判には、理由を付さなければならない。
第2項ただし書又は第4項の規定による許可の裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
第67条
【信託財産に属する財産の管理】
信託財産管理者は、就職の後直ちに信託財産に属する財産の管理に着手しなければならない。
第68条
【当事者適格】
信託財産に関する訴えについては、信託財産管理者を原告又は被告とする。
第69条
【信託財産管理者の義務等】
信託財産管理者は、その職務を行うに当たっては、受託者と同一の義務及び責任を負う。
第70条
【信託財産管理者の辞任及び解任】
第57条第2項から第5項までの規定は信託財産管理者の辞任について、第58条第4項から第7項までの規定は信託財産管理者の解任について、それぞれ準用する。この場合において、第57条第2項中「やむを得ない事由」とあるのは、「正当な事由」と読み替えるものとする。
参照条文
第246条 加入者保護信託に関する命令第25条 第26条 第36条 環境大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する省令第19条 第20条 外務大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する省令第17条 第18条 経済産業大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する規則第2条 公益信託ニ関スル法律第8条 厚生労働大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する規則第18条 第19条 国土交通大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する規則第19条 第20条 財務大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する省令第18条 第19条 信託業法第49条 信託業法施行令第20条 総務大臣の所管に属する公益信託に係る許可及び監督に関する省令第18条 第19条 内閣総理大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する内閣府令第17条 第18条 農林水産大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する規則第19条 第20条 法務大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する規則第18条 第19条 防衛大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する省令第18条 第19条 文部科学大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する規則第19条 第20条
第71条
【信託財産管理者の報酬等】
信託財産管理者は、信託財産から裁判所が定める額の費用の前払及び報酬を受けることができる。
前項の規定による費用又は報酬の額を定める裁判をする場合には、信託財産管理者の陳述を聴かなければならない。
第1項の規定による費用又は報酬の額を定める裁判に対しては、信託財産管理者に限り、即時抗告をすることができる。
参照条文
第72条
【信託財産管理者による新受託者への信託事務の引継ぎ等】
第77条の規定は、信託財産管理者の選任後に新受託者が就任した場合について準用する。この場合において、同条第1項中「受益者(二人以上の受益者が現に存する場合にあってはそのすべての受益者、信託管理人が現に存する場合にあっては信託管理人)」とあり、同条第2項中「受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人。次項において同じ。)」とあり、及び同条第3項中「受益者」とあるのは「新受託者」と、同条第2項中「当該受益者」とあるのは「当該新受託者」と読み替えるものとする。
参照条文
第73条
【受託者の職務を代行する者の権限】
第66条の規定は、受託者の職務を代行する者を選任する仮処分命令により選任された受託者の職務を代行する者について準用する。
第74条
【受託者の死亡により任務が終了した場合の信託財産の帰属等】
第56条第1項第1号に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合には、信託財産は、法人とする。
前項に規定する場合において、必要があると認めるときは、裁判所は、利害関係人の申立てにより、信託財産法人管理人による管理を命ずる処分(第6項において「信託財産法人管理命令」という。)をすることができる。
第63条第2項から第4項までの規定は、前項の申立てに係る事件について準用する。
新受託者が就任したときは、第1項の法人は、成立しなかったものとみなす。ただし、信託財産法人管理人がその権限内でした行為の効力を妨げない。
信託財産法人管理人の代理権は、新受託者が信託事務の処理をすることができるに至った時に消滅する。
第64条の規定は信託財産法人管理命令をする場合について、第66条から第72条までの規定は信託財産法人管理人について、それぞれ準用する。
参照条文
第86条 第215条 第232条 第246条 環境大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する省令第18条 第19条 第20条 第21条 外務大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する省令第16条 第17条 第18条 第19条 経済産業大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する規則第2条 公益信託ニ関スル法律第8条 厚生労働大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する規則第17条 第18条 第19条 第20条 国税通則法第7条の2 国土交通大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する規則第18条 第19条 第20条 第21条 財務大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する省令第17条 第18条 第19条 第20条 総務大臣の所管に属する公益信託に係る許可及び監督に関する省令第17条 第18条 第19条 第20条 地方税法第9条の4 内閣総理大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する内閣府令第16条 第17条 第18条 第19条 農林水産大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する規則第18条 第19条 第20条 第21条 法務大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する規則第17条 第18条 第19条 第20条 防衛大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する省令第17条 第18条 第19条 第20条 文部科学大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する規則第18条 第19条 第20条 第21条 会社非訟事件等手続規則第42条
第5款
受託者の変更に伴う権利義務の承継等
第75条
【信託に関する権利義務の承継等】
第56条第1項各号に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合において、新受託者が就任したときは、新受託者は、前受託者の任務が終了した時に、その時に存する信託に関する権利義務を前受託者から承継したものとみなす。
前項の規定にかかわらず、第56条第1項第5号に掲げる事由(第57条第1項の規定によるものに限る。)により受託者の任務が終了した場合(第59条第4項ただし書の場合を除く。)には、新受託者は、新受託者等が就任した時に、その時に存する信託に関する権利義務を前受託者から承継したものとみなす。
前二項の規定は、新受託者が就任するに至るまでの間に前受託者、信託財産管理者又は信託財産法人管理人がその権限内でした行為の効力を妨げない。
第27条の規定は、新受託者等が就任するに至るまでの間に前受託者がその権限に属しない行為をした場合について準用する。
前受託者(その相続人を含む。以下この条において同じ。)が第40条の規定による責任を負う場合又は法人である前受託者の理事、取締役若しくは執行役若しくはこれらに準ずる者(以下この項において「理事等」と総称する。)が第41条の規定による責任を負う場合には、新受託者等又は信託財産法人管理人は、前受託者又は理事等に対し、第40条又は第41条の規定による請求をすることができる。
前受託者が信託財産から費用等の償還若しくは損害の賠償を受けることができ、又は信託報酬を受けることができる場合には、前受託者は、新受託者等又は信託財産法人管理人に対し、費用等の償還若しくは損害の賠償又は信託報酬の支払を請求することができる。ただし、新受託者等又は信託財産法人管理人は、信託財産に属する財産のみをもってこれを履行する責任を負う。
第48条第4項並びに第49条第6項及び第7項の規定は、前項の規定により前受託者が有する権利について準用する。
新受託者が就任するに至るまでの間に信託財産に属する財産に対し既にされている強制執行、仮差押え若しくは仮処分の執行又は担保権の実行若しくは競売の手続は、新受託者に対し続行することができる。
前受託者は、第6項の規定による請求に係る債権の弁済を受けるまで、信託財産に属する財産を留置することができる。
第76条
【承継された債務に関する前受託者及び新受託者の責任】
前条第1項又は第2項の規定により信託債権に係る債務が新受託者に承継された場合にも、前受託者は、自己の固有財産をもって、その承継された債務を履行する責任を負う。ただし、信託財産に属する財産のみをもって当該債務を履行する責任を負うときは、この限りでない。
新受託者は、前項本文に規定する債務を承継した場合には、信託財産に属する財産のみをもってこれを履行する責任を負う。
第77条
【前受託者による新受託者等への信託事務の引継ぎ等】
新受託者等が就任した場合には、前受託者は、遅滞なく、信託事務に関する計算を行い、受益者(二人以上の受益者が現に存する場合にあってはそのすべての受益者、信託管理人が現に存する場合にあっては信託管理人)に対しその承認を求めるとともに、新受託者等が信託事務の処理を行うのに必要な信託事務の引継ぎをしなければならない。
受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人。次項において同じ。)が前項の計算を承認した場合には、同項の規定による当該受益者に対する信託事務の引継ぎに関する責任は、免除されたものとみなす。ただし、前受託者の職務の執行に不正の行為があったときは、この限りでない。
受益者が前受託者から第1項の計算の承認を求められた時から一箇月以内に異議を述べなかった場合には、当該受益者は、同項の計算を承認したものとみなす。
第78条
【前受託者の相続人等又は破産管財人による新受託者等への信託事務の引継ぎ等】
前条の規定は、第56条第1項第1号又は第2号に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合における前受託者の相続人等及び同項第3号に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合における破産管財人について準用する。
第6節
受託者が二人以上ある信託の特例
第79条
【信託財産の合有】
受託者が二人以上ある信託においては、信託財産は、その合有とする。
第80条
【信託事務の処理の方法】
受託者が二人以上ある信託においては、信託事務の処理については、受託者の過半数をもって決する。
前項の規定にかかわらず、保存行為については、各受託者が単独で決することができる。
前二項の規定により信託事務の処理について決定がされた場合には、各受託者は、当該決定に基づいて信託事務を執行することができる。
前三項の規定にかかわらず、信託行為に受託者の職務の分掌に関する定めがある場合には、各受託者は、その定めに従い、信託事務の処理について決し、これを執行する。
前二項の規定による信託事務の処理についての決定に基づく信託財産のためにする行為については、各受託者は、他の受託者を代理する権限を有する。
前各項の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
受託者が二人以上ある信託においては、第三者の意思表示は、その一人に対してすれば足りる。ただし、受益者の意思表示については、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
参照条文
第81条
【職務分掌者の当事者適格】
前条第4項に規定する場合には、信託財産に関する訴えについて、各受託者は、自己の分掌する職務に関し、他の受託者のために原告又は被告となる。
第82条
【信託事務の処理についての決定の他の受託者への委託】
受託者が二人以上ある信託においては、各受託者は、信託行為に別段の定めがある場合又はやむを得ない事由がある場合を除き、他の受託者に対し、信託事務(常務に属するものを除く。)の処理についての決定を委託することができない。
第83条
【信託事務の処理に係る債務の負担関係】
受託者が二人以上ある信託において、信託事務を処理するに当たって各受託者が第三者に対し債務を負担した場合には、各受託者は、連帯債務者とする。
前項の規定にかかわらず、信託行為に受託者の職務の分掌に関する定めがある場合において、ある受託者がその定めに従い信託事務を処理するに当たって第三者に対し債務を負担したときは、他の受託者は、信託財産に属する財産のみをもってこれを履行する責任を負う。ただし、当該第三者が、その債務の負担の原因である行為の当時、当該行為が信託事務の処理としてされたこと及び受託者が二人以上ある信託であることを知っていた場合であって、信託行為に受託者の職務の分掌に関する定めがあることを知らず、かつ、知らなかったことにつき過失がなかったときは、当該他の受託者は、これをもって当該第三者に対抗することができない。
第84条
【信託財産と固有財産等とに属する共有物の分割の特例】
受託者が二人以上ある信託における第19条の規定の適用については、同条第1項中「場合には」とあるのは「場合において、当該信託財産に係る信託に受託者が二人以上あるときは」と、同項第2号中「受託者」とあるのは「固有財産に共有持分が属する受託者」と、同項第3号中「受託者の」とあるのは「固有財産に共有持分が属する受託者の」と、同条第2項中「受託者」とあるのは「固有財産に共有持分が属する受託者」と、同条第3項中「場合には」とあるのは「場合において、当該信託財産に係る信託又は他の信託財産に係る信託に受託者が二人以上あるときは」と、同項第3号中「受託者の」とあるのは「各信託財産の共有持分が属する受託者の」と、「受託者が決する」とあるのは「受託者の協議による」と、同条第4項中「第2号」とあるのは「第2号又は第3号」とする。
参照条文
第85条
【受託者の責任等の特例】
受託者が二人以上ある信託において、二人以上の受託者がその任務に違反する行為をしたことにより第40条の規定による責任を負う場合には、当該行為をした各受託者は、連帯債務者とする。
受託者が二人以上ある信託における第40条第1項及び第41条の規定の適用については、これらの規定中「受益者」とあるのは、「受益者又は他の受託者」とする。
受託者が二人以上ある信託において第42条の規定により第40条又は第41条の規定による責任が免除されたときは、他の受託者は、これらの規定によれば当該責任を負うべき者に対し、当該責任の追及に係る請求をすることができない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
受託者が二人以上ある信託における第44条の規定の適用については、同条第1項中「受益者」とあるのは「受益者又は他の受託者」と、同条第2項中「当該受益者」とあるのは「当該受益者又は他の受託者」とする。
第86条
【受託者の変更等の特例】
受託者が二人以上ある信託における第59条の規定の適用については、同条第1項中「受益者」とあるのは「受益者及び他の受託者」と、同条第3項及び第4項中「受託者の任務」とあるのは「すべての受託者の任務」とする。
受託者が二人以上ある信託における第60条の規定の適用については、同条第1項中「受益者」とあるのは「受益者及び他の受託者」と、同条第2項及び第4項中「受託者の任務」とあるのは「すべての受託者の任務」とする。
受託者が二人以上ある信託における第74条第1項の規定の適用については、同項中「受託者の任務」とあるのは、「すべての受託者の任務」とする。
受託者が二人以上ある信託においては、第75条第1項及び第2項の規定にかかわらず、その一人の任務が第56条第1項各号に掲げる事由により終了した場合には、その任務が終了した時に存する信託に関する権利義務は他の受託者が当然に承継し、その任務は他の受託者が行う。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
附則
この法律は、公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
第三条第三号の規定は、この法律の施行の日から起算して一年を経過する日までの間は、適用しない。
受益者の定めのない信託(学術、技芸、慈善、祭祀、宗教その他公益を目的とするものを除く。)は、別に法律で定める日までの間、当該信託に関する信託事務を適正に処理するに足りる財産的基礎及び人的構成を有する者として政令で定める法人以外の者を受託者としてすることができない。
前項の別に法律で定める日については、受益者の定めのない信託のうち学術、技芸、慈善、祭祀、宗教その他公益を目的とする信託に係る見直しの状況その他の事情を踏まえて検討するものとし、その結果に基づいて定めるものとする。
附則
平成23年5月25日
この法律は、新非訟事件手続法の施行の日から施行する。
附則
平成25年5月31日
この法律は、番号利用法の施行の日から施行する。

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